練馬区長選にみる「首長はせいぜい3期」の法則は、小池知事にも当てはまるのか

 4月17日(日)に投開票された練馬区長選は、戦前の予想に反して大接戦の結果となりました。当選した前川氏(自・公・国民・都ファ推薦)と敗れた吉田氏(立民・共・社民・生ネ推薦)の票差は、わずか2千票あまり。これは前川氏の得票9万5千票の2%に過ぎません。ギリギリ滑り込んだ感じです。

 ちなみに、前川区長は元都庁職員、といっても福祉保健局長や知事本局長(現・政策企画局)を歴任した人物です。私は現役時代、2年間でしたが直属の部下として働いた経験があります。「厳しい」の前に「超」が3つ付くぐらい、仕事には厳しい上司でした。そりゃ鍛えられましたよ、胃に穴が開くくらい。。。区長になってから何度かお会いしましたが、かなり丸くなった印象を持ちました。

 それはさておき、首長の任期は3期がちょうどいい、とはよく言われることです。1期目で新しい政策の種を植えて、2期目で育て、3期目で収穫する。前川区長もそんな思いで3期目に臨むのではないでしょうか。しかし、人間という生き物はいったん権力を握るとおいそれとは手放さない習性のようで、23区の区長さんの中には多選批判もなんのその、長期在職を続ける(続けた)方も散見されます。
 
 この「首長3期説」は都知事にもほぼ当てはまります。
 美濃部亮吉3期、鈴木俊一4期、青島幸男1期、石原慎太郎4期(途中)
 猪瀬直樹1期(途中)、舛添要一1期(途中)、小池百合子2期(現在)
 美濃部さんの最後は「惨々たる幕引き」でしたし、鈴木さんの4期目は都庁を有楽町から西新宿に移転するためだけにあったようなもの。石原氏も4期目は余分で3期目できっぱり辞めておけばよかったと、今になって思わざるをえません。長くて3期が妥当な線なのです。
 
 では現役都知事の小池氏はどうなのか。話はやっぱりここに行き着きます。現在、2期目の2年目、通算6年の実績を持つ小池知事は、この夏で2期目の折り返し地点に達します。3期目を目指すかどうかを判断するにはまだ早いと思われるかもしれませんが、夏の参院選の動向も絡めて考えると、小池知事にとって政治家としての身の振り方を左右する分岐点に差し掛かっているといっても過言ではありません。
 
 今のところ、参院選は都ファが立ち上げた国政政党「ファーストの会」から荒木代表が東京選挙区から立候補することになっています。小池知事はあくまで都ファの特別顧問として(そして荒木氏の後継人として)バックアップするだけという建前です。もしこれが本当だとすれば、小池知事はこのまま2期目を全うするしか選択肢がない。

 でも、2期目が終了する2年後の2024年に国政選挙はおそらくないでしょう。したがって、小池知事は2期で都知事を辞めて「ただの人」になるか、そのまま都知事3期目を目指すかの二者択一を迫られる。普通に考えて、辞めた後の展望がないのに都知事の座をあっさり投げ出すとは思えない。都知事であり続ければ、少なくともメディアからの注目度は保たれる。ポピュリストとして、そこは外せないポイントのはずです。

 しかし、3回目の都知事選は、過去の事例からも一筋縄ではいきません。それは練馬区長選を見ても言えることです。求心力の低下、長期政権への批判、それに年齢の問題もあります。2年後の都知事選に対抗馬として清新な候補者が現れれば、いかに選挙巧者の小池知事といえども苦戦は必至でしょう。下手をすれば、新聞の見出しに「現職知事敗れる」の文字が躍りかねない。「惨々たる幕引き」を小池知事自ら演じることになってしまいます。

 世の中的には、小池知事は夏の参院選で荒木代表を国会に送り込むにとどめ、都知事の座を確保したまま、陰から国政を操ることを考えているのではないかと噂されています。いわゆる「院政」です。しかし、都知事3期の長期戦略には、前述したとおり3度目の都知事選のリスクが潜んでいます。それにです、そもそも論として、目立ちたがりで派手好きの小池知事が黒幕のポジションに満足できるのか。小池知事は今ごろ、自身の身の振り方に思案投げ首なのでは? いえいえ、選挙を目前にうずうずしているに違いありません。

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