都庁環境局幹部と都議の”リアル”やり取り記録公開、ツッコミどころ満載です

 6月13日、太陽光パネルの義務化に関して上田都議と環境局の部長・課長との間で交わされたやり取りが実際の会話に近い形で公開されました。
  #太陽光パネル義務化反対  知事への質問状の口頭答弁一挙公開!
  http://blog.livedoor.jp/edomam/archives/52527991.html

 これがまた笑える内容で(失礼!)、元役人目線から見ても小池知事ウォッチャーとしても興味津々、小池都政の実態をのぞき見ている気分にさせられます。さっそく深掘りしていきましょう。

環境局幹部の「悪手」
 冒頭、環境局幹部は都議から手痛いジャブの洗礼を受けます。
 文書で回答を求められたにも拘わらず、手ぶらで都議の所に行き口頭で済ませようとしたため、都議の不信感が一気に高まります。おそらく、文書で出すと後々面倒だから、初めは口頭で対応しておけばいいとの局判断があったのでしょう。都庁幹部が使いそうな手です。
 おまけに部長は自分が4月に異動してきたばかりだと告げ、暗に「お目こぼし」を求めるような低姿勢をとりますが、これは役人として「悪手」でしょ。やり取りが行われたのは5月31日、異動後すでに2か月が経過しています。2か月あれば自分の所管する業務ぐらいマスターしておけよ、と都庁OBとしては言いたくなります。(実際、その後のやり取りは課長中心に行われます。部長はお飾り?)

はじめは防災目的だった!?
 さて、ここからが本題です。まず、小池知事が太陽光パネル義務化に突っ込んでいった経緯が明らかになります。
 2021年1月27日 世界国際会議「ダボスジェンダー」において、小池知事が「2030年カーボンハーフ」を表明
 同年3月19日 小池知事が環境局に都内住宅の太陽光ポテンシャルを調べるように指示。具体的には「防災も切り口に、家庭での太陽光パネル設置が当たり前になる仕組みを検討」と指示しました。
 同年3月31日 知事が「新築対策が重要、太陽光パネル・蓄電池・EVセットで推進する」と対外的に公表

 なるほどなるほど、つまり1年前の指示はあくまで防災目的であったわけです。現在、小池知事が声高に言っている今夏の電力不足とは全く関係なかった。そうですよね、義務化条例は今年度成立を目指しているわけで、この夏に間に合うわけがない。危機を煽って義務化を正当化しようとする意図がアリアリです。それはそれとして・・・・。

結論ありきの義務化
 3月の小池知事から環境局への指示の中には「パネルの義務化も幅広く検討」との項目もあったことが、今回の公表記録で明らかになっています。
 通常、「太陽光パネル義務化」級の重大な政策は年単位でその有効性・整合性等が所管局において鋭意検討され、知事に最終判断を仰ぐものです。ところが、今回は2021年3月の段階で、「新築住宅に義務化」は既定路線だったようですね。小池知事の腹は最初から固まっていた。環境局としては、小池知事の”ご意向”を大前提に、結論ありきで物事を進めざるを得なかった裏事情が垣間見えます。

目的の追加は防御のため
 2021年5月14日、小池知事から追加の指示が発せられます。住宅太陽光だけでなく省エネ節電、さらには健康とか経済性も合わせて検討せよ。この指示は、正確には環境局に対してではなく、局が所管する環境審議会に対して検討するようにという意味だったようです。
 いずれにしても、これもまた、小池都政ではお馴染みの「目くらまし戦法」の一つです。義務化一本槍だと強制的なイメージが強すぎるので、こんないいこともあります・あんないいこともありますと後付けの理由をベタベタとくっつけはじめる。そうすると、所期の目的が見えにくくなる反面、外野からの批判に対して、複数の理由を楯に防御することが可能になります。
 「小池知事、またやったか」というのが筆者の偽らざる感想です。

唐突の制度化表明
 同年7月27日 パネル設置義務化のコスト及び効果について検証するように指示、技術動向等についても状況把握するよう指示あり。
 注意すべきは、7月の段階では(小池知事の腹づもりは別として)、環境局はあくまで、検討・検証・状況把握を知事から求められていたに過ぎないということです。そりゃそうです、3月に検討指示から4か月しか経っていません。ところが、9月、事態は急変します。
 同年9月13日 小池知事、突如として「トライアルではなく制度化を実行」と環境局に通告
 同年9月28日 令和3年第3回都議会定例会の所信表明で設置義務化の検討を明言

 では、7月から9月の間、環境局は小池知事からの様々な宿題に対してどう答えたのでしょうか。その回答を根拠に都議会で表明したはずですから。
 ところが、この間の議事録が残っていない(少なくとも、5月31日のやり取りにおいて実務を担当する課長は把握していませんでしたし、6月13日の記録公表時点においても詳らかにされていません)というから驚きです。

ブラックボックス化した小池都政
 小池都政の意思決定過程がブラックボックス化している証左ですね。事実やデータ分析は後回しにされて、小池知事サイドが義務化を既成事実化していった可能性があるということです。
 記録が残っていなければ、都民は事実を知ることができません。密室政治の最たるものです。小池都政のダークな実態を見せつけられた思いです。小池さんはまた、「それはAIです」などと、市場移転問題の時のように妄言を吐いて逃げるつもりなのでしょうか。

口が裂けても言えない言葉
 
ここからは少し技術的な話になりますが、お付き合いください。
 都議から都民にパネル設置の拒否権があるのかないのかと質された環境局の課長はこう発言しています。「(資料に)拒否権とは書いていないが、(パネルを設置しなくても良い)『設置不可』の中には建築主の意向も含まれる」
 ああ言っちゃった。。。役人としては拒否権という刺激的な言葉は口が裂けても使えないけど、実質的に建築主は「つけない」と言えるっていうことですよ、これは完全に。ところが一方では、義務化される事業者には数値目標(設置義務該当住宅数)が課せられていて、指導勧告や氏名公表のペナルティがあるとも言っています。

杜撰で穴だらけの制度
 建築主には実質的な拒否権があり、義務を負う事業者にはペナルティがある。どう整合性を担保するのか。環境局はこれから検討するみたいですが、例えば、建築主が拒否した個数を数値目標から除外するルールにしたとしましょう。事業者はペナルティ逃れのために建築主にこっそり囁くかも知れません。「設置しなくても大丈夫ですよ、お客様のご意向と言うことにしますから。お安くなりますしね。。。」そうなれば、義務化そのものが何だったのかという話に戻ってしまう。
 義務化の是非の前に、制度設計があまりに杜撰で穴だらけで泣けてきます。知事が都議会で表明してから1年が経とうというのに、この体たらくです。大丈夫か、環境局!? 現役時代、課長として8か月、次長として2か月在籍したOBとして嘆かざるを得ません。

 なお、この拒否権問題に関しては、筆者もYouTube動画で指摘させていただいています。
  小池都知事の太陽光パネル義務化問題はグダグダ【解説】

 このあとも、上田都議と環境局幹部とのやり取りは続きます。
 例えば、都民への説明も含めて詳細な部分の検討は今後立ち上げる技術検討会で行うとしています。ところが、会の名称が決まっているだけで中身はまだないのです。これにはさすがの上田都議も呆れ果てて、(←まだないんか~い!)とツッコミを入れています。
 採算性の問題、故障・破損・廃棄の問題、パネル火災問題など、重要な案件についても、両者の間で意見交換がされていますので、是非実際の記録をご覧になってください。

 以上、かなり長文になりましたが、都議によって実際のやり取りが明らかになったことで、小池都政の暗部がまたひとつ白日の下にさらされた意義は非常に大きいと思います。結論ありきで突っ込んでいった小池知事でしたが、余りにいい加減な仕組みゆえに、疑念と批判、反対のウエーブが巻き起こっています。小池知事にとって、神宮外苑の伐採問題とともにアキレス腱になりかねませんね。
 
 

 

 
 



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