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令和5年土地家屋調査士試験 択一過去問全20問解説付き

令和5年土地家屋調査士試験 択一問題 第1問(民法)

無効及び取消しに関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア 買主が売買契約を締結した当時に意思能力を有しなかったために当該契約が無効とされる場合には、売主は、買主に対し、当該契約に基づく目的物の引渡義務を負わない。

イ 売買契約が虚偽表示により無効である場合において、売主及び買主がそれぞれ無効であることを知って追認したときは、当該契約は、初めから有効であったものとみなされる。

ウ 買主が強迫を理由として売買契約を取り消したときは、当該契約は、初めから無効であったものとみなされる。

エ 未成年者が法定代理人の同意を得なければすることができない契約をその同意を得ることなく締結した場合において、当該法定代理人が当該契約を追認したときであっても、当該未成年者本人は、法定の期間内に相手方に対して意思表示をすることにより、当該契約を取り消すことができる。

オ 取消権は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権者が取消権を有することを知った後でなければ、時効によって消滅することはない。

1 アイ   2 アウ   3 イエ   4 ウオ   5 エオ 
 


正解 2

ア 〇
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効となる。したがって、売主は、買主に対し、売買契約に基づく目的物の引渡義務を負わない。

イ ×
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効であり、無効な行為は、追認によっても、その効力は生じないとされている。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなされる。この場合は、追認の時に有効になるのであって、行為の時から有効となるわけではない。

ウ 〇
強迫による意思表示は取り消すことができる。また、取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる。

エ ×
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる。しかし、未成年者の法定代理人が追認したときは、以後取り消すことができず、確定的に有効となる。その後は、未成年者本人でも取り消すことができない。

オ ×
取り消すことのできる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権者が取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
また、取消権は、この追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅するほか、行為の時から20年を経過したときも、時効によって消滅する。取消権は、取消権者が取消権を有することを知らなくても消滅する。




令和5年土地家屋調査士試験 択一問題 第2問(民法)

物権的請求権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、AB間の売買契約上、甲土地の所有権の移転時期に関する特約がないときは、Aは、当該契約締結後直ちに、Bに対して所有権に基づき甲土地の引渡しを請求することができる。

イ Aが甲土地の所有者Bから甲土地を買った場合において、甲土地について、BからAへの所有権の移転の登記がされていないときは、Aは、甲土地を占有する無権利者Cに対して甲土地の明渡しを請求することができない。

ウ Aが甲土地を所有し、その旨の登記がされている場合において、無権利者Bが甲土地上に乙建物を建て、占有補助者であるCと共に居住しているときは、Cを建物から退去させるためには、Aは、Cに対し、乙建物から退去して甲土地を明け渡すことを請求しなければならない。

エ A及びBが甲土地を共有している場合において、無権利者Cが甲土地に産業廃棄物を不法投棄したときは、Aは、単独で、Cに対して当該産業廃棄物を撤去するよう請求することができる。

オ 所有権が時効によって消滅することはないが、所有権に基づく返還請求権は時効によって消滅する。

1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イエ   5 ウオ



正解 1

ア 〇
判例及び通説では、所有権の移転時期について、売買契約をしたときは、原則として、その時に所有権移転の効果を生じ、もし、その時に所有権移転の効果を生ずるのに支障があるときは、その支障が無くなった時に所有権移転の効果を生ずるとしている。ただ、当事者がこれと異なる意思表示をしたことが明らかな場合は、その時に所有権移転の効果を生ずるとしている。
本肢の場合は、移転時期に関する特約がないので、売買契約の時に所有権はBからAへ移転することになる。したがって、Aは当該契約締結後直ちに、Bに対して所有権に基づき甲土地の引渡しを請求することができる。

イ ×
物権的請求権を行使するためには、原則として、対抗要件を備えることを要する。不動産物権であれば、原則として、登記を必要とする。しかし、不法占拠者等不法行為者に対しては、登記なくしても対抗することができる第三者であるため、このような者に対しては、登記をしなくても物権的請求権を行使することができる。

ウ ×
返還請求権は、その占有者に対して目的物を返還することを請求することができる権利であり、相手方は占有者である。
占有補助者とは、占有を補助する者のことをいい、独立した占有が認められていない。したがって、返還請求権の相手方とはならない。本肢の場合の相手方はBである。

エ 〇
共有物に対する妨害があるときは、各共有者は、単独で、共有物全部に対する第三者の妨害の除去を請求することができる。
これは、持分権が共有物全部に及ぶものであり、その円満な状態を回復するためには、共有物の全体に対する妨害を除去しなければならないからである。

オ ×
所有権に基づく物権的請求権は、所有権と同じく、時効によって消滅することはないとしている。



令和5年土地家屋調査士試験 択一問題 第3問(民法)

遺言に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア 遺言の全文、日付及び氏名がカーボン紙を用いて複写の方法で記載された自筆証書遺言は、無効である。

イ 遺言者の推定相続人は、公正証書遺言の証人となることができない。

ウ 夫婦は、同一の証書により共同で遺言をすることができる。

エ 遺言執行者の指定は、第三者に委託することができない。

オ 遺言者が前の遺言と抵触する遺言をしたときは、前の遺言のうち抵触する部分は、後の遺言によって撤回されたものとみなされる。

1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ



正解 4

ア ×
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
カーボン紙による複写であっても、本人の筆跡が残り筆跡鑑定によって真筆かどうかを判定することは可能であり、偽造の危険性はそれほど大きくないからである。

イ 〇
公正証書によって遺言をするには、証人2人以上の立会いが必要である。未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人は、遺言の証人又は立会人となることができない。

ウ ×
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。2人以上の者が同一の証書でした遺言は、無効である。

エ ×
遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

オ 〇
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。


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