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令和4年土地家屋調査士試験 択一過去問全20問解説付き

令和4年土地家屋調査士午後試験  第1問(民法)

制限行為能力者に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

ア 制限行為能力者が行為能力者であることを信じせしめるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

イ 時効の期間満了前6か月以内の間に成年被後見人に成年後見人がない場合には、その成年被後見人が行為能力者となった時又は成年後見人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その成年被後見人に対して、時効は完成しない。

ウ 被保佐人が第三者のために保証人となる場合には、保佐人の同意を得る必要はない。

エ 本人以外の者の請求により保佐開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

オ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始の審判を取り消さなければならない。

1 アイ   2 アオ   3 イウ   4 ウエ   5 エオ



正解 4

ア 〇
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができないとされている。詐術を用いるとは、相手方を制限行為能力者の能力について錯誤に陥れるために欺罔的な手段をとることをいう。

イ 〇
時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しないものとされている。「未成年者又は成年被後見人に対して、時効は完成しない」とは、未成年者又は成年被後見人に対して不利益には時効は完成しないという意味である。その有する権利が時効消滅する場合だけでなく、他人によって時効取得される場合を含む。

ウ ×
被保佐人が借財又は保証をするには、その保佐人の同意を得なければならないとされている。

エ ×
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検査官の請求により、保佐開始の審判をすることができるとされているが、本人以外の者の請求により、この審判をするには、本人の同意がなければならないとはされていない。

オ 〇
後見開始の審判をする場合、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならないとされている。



令和4年土地家屋調査士午後試験  第2問(民法)

意思表示に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、Bから甲土地を買い受けたCが、AB間の売却が仮装のものであることにいつて善意であった場合には、Cは、BからCへの甲土地の所有権の移転の登記がされていなくても、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

イ AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、Bが死亡し、AB間の売却が仮装のものであることについて善意のCがBを単独で相続した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

ウ AがBと通謀してAの所有する甲土地をBに売却したように仮装し、AからBへの所有権の移転の登記がされた。その後、甲土地が、BからAB間の売却が仮装のものであることについて善意のCに売却され、さらにCから、AB間の売却が仮装のものであることについて悪意のDに売却された場合には、Dは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

エ AがBの詐欺により甲土地をBに売却した後、Bは、詐欺の事実について善意であるが、そのことについて過失があるCに甲土地を売却した。その後、Aが詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

オ AがBの強迫により甲土地をBに売却した後、Bは、強迫の事実について善意で、そのことについて過失がないCに甲土地を売却した。その後、Aが強迫を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消した場合には、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イエ   5 ウオ



正解 1

ア 〇
虚偽表示について規定をした民法94条2項の善意の第三者として保護を受けるためには、対抗要件を備えることは必要ではない。表意者が自ら虚偽の外形を作出している以上、対抗要件まで要求すべきではないからである。したがって、Cは、BからCへの甲土地の所有権の移転の登記がされていなくても、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

イ ×
虚偽表示について規定をした民法94条2項にいう「第三者」とは、虚偽の意思表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき新たに法律上利害関係を有するに至った者をいう。したがって、Bを相続したCは、善意であっても保護を受けることができず、CはAに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

ウ ×
本肢の場合については、「民法94条2項により善意の第三者Cが絶対的・確定的に所有権を取得するから、Dはその地位を承継し、Dが悪意であっても、Aは虚偽表示の無効をもってDに対抗することができない。」とする説が妥当である。したがって、Dは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

エ 〇
詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないとされている。詐欺による意思表示をした者は不当な行為の被害者という面があり、真意と異なる意思表示をしたことについて帰責性が小さいことから、第三者が保護されるためには、その信頼が正当なものであること、すなわち、その第三者が詐欺の事実を知らなかっただけでなく、知らなかったことについて過失がないことを要件とするのが相当だからである。したがって、過失があるCは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。

オ ×
強迫による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができる。したがって、Cは、Aに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができない。



令和4年土地家屋調査士午後試験  第3問(民法)

Aについて相続が開始し、その親族が妻B及び子Cのみである場合の相続に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア BがAを強迫してAに相続に関する遺言をさせ、その後、Aについて相続が開始したときは、Bは、Aの相続人となることができない。

イ Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から法定の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかった場合には、Bは、単純承認をしたものとみなされる。

ウ B及びCが相続人となる場合には、Bのみが単独で、限定承認をすることができる。

エ Bが相続の放棄をした場合には、Bは、Aの相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。

オ Cが相続の放棄をした場合には、それがBの強迫によるものであっても、Cは、強迫を理由として相続の放棄を取り消すことができない。

1 アイ   2 アウ   3 イエ   4 ウオ   5 エオ



正解 4

ア 〇
詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者は、相続人となることができないとされている。

イ 〇
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないとされているが、相続人がこの期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときは単純承認をしたものとみなされる。

ウ ×
相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができるとされている。これは、相続人が数人ある場合に、各別に限定承認を認めると1人1人の相続分についての清算手続が複雑・煩瑣になるからである。

エ 〇
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる。

オ ×
民法919条1項は、「相続の承認及び放棄は、915条1項の期間内でも、撤回することができない。」と規定するが、同条2項において、「前項の規定は、第1編(総則)及び前編(第4編、親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。」と規定している。

これは、制限行為能力者や詐欺・強迫によって承認や放棄をした者を保護する必要があるからである。したがって、Cは、強迫を理由として相続の放棄を取り消すことができる。なお、この場合における取消権は、追認をすることができる時から6箇月間行使しないときは、時効によって消滅し、相続の承認又は放棄の時から10年を経過したときも消滅するとされている点と、限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならないとされている点に注意が必要である。


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