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知るは一時の恥、知らぬは豚コマの恥

世の中には、知らなければいけないことがある。
授業じゃ教えてくれないことも、自ら学ばなくてはいけない。
ドラゴン桜の桜木も叫ぶ、
「お前ら、バカなままでいいのか?」


小学生の頃、我が家はグループ生協をしていた。今みたいに商品が個別に分けてなくて、グループ分の商品がドカッと届く。
なので、グループを組んだ近所のおばちゃんたちが、我が家の玄関に集まって、毎週、商品の仕分けをしていた。

ちなみに、このグループ名は、班長が好きにつけて良いことになっていて、まぁ大体は「山田班」とか「加藤班」とかそういった班名にするんだけど、我が家が命名したのは「オスカル班」
「ベルサイユのバラ』の、あの、男装の麗人、オスカル。アンドレとどっちにするか、母と真剣に悩んだ。なぜその二択。

田んぼが広がるのどかな平家に突如として、ベルサイユを思わせるその命名。
「パンが無ければ生協を頼めばいいじゃない」
アントワネットさながらに、大量の商品を仕分けるおばちゃんたち。「あらやだこれ、先週も頼んだわオホホホホ」
贅沢三昧の高笑いが聞こえる。

さて。この仕分の際、小学生だった私はよく、商品の読み上げ係になった。
「牛乳〜山田さん2本、小島さん3本〜」と言った具合だ。
その日も、読み上げ係を買って出た。「とき子ちゃんは読むのが上手いからねぇ」とおだてられるのが好きだった。

「豚挽肉〜加藤さん2つー、山田さん1つー」
「豚ロース〜小島さん1つー」
「豚コカン切れ〜……は?股間…?」

痛そうだ。

なんだかすごく痛そうな肉が来たぞ、これはなんの料理に使うのだ、こてっちゃんとかそういう類のアレですか?
そのような表情でおばちゃんたちを見た。

おばちゃんたちも、「コカンを買ったのは誰?」「え、私じゃ無いわよ」という空気を、ほんの一瞬醸し出した。
がすぐに、母が、「あんたもう!!モノを知らなくて恥ずかしいんだから!」とゲラゲラ笑いながら訂正に入った。
「豚小間切れよ、豚のコマギレ!!」

いや、漢字で書くなや!!知らんがな!!
というような応戦をしてみたが、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
小学校の教科書に「豚小間切」は出てこなかった。豚コマのイメージで言ったら「細切れ」じゃないのか!
これは大人の罠だ!!
ついでに「出汁」や「灰汁」も全部大人の罠。

茨城のベルサイユ宮殿に、貴族なおばちゃんたちの笑い声が響きわたった。
くそう。革命の準備はこうした経緯で始まる、かも知れない。

そして私は知った。
学校で教えてくれない常識が、大人の世界では数多く存在する。
習った、習ってないは関係ないのだ。
「知ろうとしたか、しなかったか」が問題なのだ。豚小間を知らずして大人にはなれない。


ところで前年度、我が家は医療費控除の申請をした。
そしたら、「ふるさと納税ワンストップ特例制度は確定申告した人は無効だから、更正の請求してちょうだいね」という書類が届いた。

更正の請求…だと…?

ごめんなにそれ。全然知らない。
でも、「知らなかった、分からなかった」で放置したら、確実に損をするやつだ。

豚小間切れが背中を押す。
「大丈夫、知らないってことを知るのは、君が知ることのきっかけさ!」

今は指先一本で何でも調べられる。
面倒だったけど、なんとか更正の請求とやらにたどり着き、書類を書き終えた。


大人の世の中は、豚小間切で溢れている。
知ってて当たり前でしょー、って言われちゃうと恥ずかしい。

でも大丈夫!そんな時は、豚小間切れを3回唱えてみたらいい。
最初から何でも知ってる人は存在しない。
豚小間切れから考えたら、かなり色々知ってきたじゃないか!安心しなよ、もう君は、豚小間切れで笑われたあの時の君じゃない。
気高く生きるんだオスカル!

何が言いたいかって、本当に、更正の請求が面倒くさかったんだよ…
豚小間切れを不意に思い出して、なんとなくそのテンションで乗り切ったっていうお話しでした。あ、オスカルは大好きです。

※フランス革命と、山田さん加藤さん小島さんはこのお話になんの関係もございません。あったらびっくりしちゃうね!



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