世界の薬局インド産の咳止めシロップで子どもの死亡例が多発
「世界の薬局」と言われるインド
インドの製薬業界の成長は著しく、医薬品の輸出にも大きく力を入れている。2019年の世界のファーマ売上高トップ100にはインド企業は8社がランクインし、売上高は1.7%を占めた。
特にジェネリック医薬品(後発薬)分野が産業の大部分を締め、2019年のインド国内のジェネリック医薬品の普及率は73%である。日本で処方されるジェネリック医薬品の原薬もインドで作られていることが多い。
ジェネリック医薬品の世界輸出の5分の1がインド製であり、アメリカで使用されているジェネリック医薬品のうち、約40%がインドから供給されている。
ガンビアで子どもの死亡例が多発
2022年の7月下旬、ガンビアの医療当局は5歳以下の子どもに急性腎臓障害の症例が増加していることを検出。
その後、政府はこれが原因で約69人の子どもが死亡したと発表した。
2022年10月、WHOはこれらがインドのMaiden Pharmaceuticals社が製造した4種の咳止めシロップに関連している可能性があると発表した。
WHOは、これらのサンプルを検査し、許容できない量のジエチレングリコールとエチレングリコールが含有されていることが分かったと説明した。
これらの成分は人体には毒性で、摂取すると命に係わる可能性がある。
その後、インドはこれらの製品を調査中とし、Maiden Pharmaceuticals社に対し北部ハリヤナ州の工場での生産停止を命じた。
2022年12月13日、インドの医薬品監督官であるVG Somani博士は政府の研究所で検査したサンプルは「汚染されていないことが分かった」とWHOに書簡を送付。因果関係を立証するための更なる情報を求め、「世界のメディアにインドの製薬業界の評判を傷つけられた」と述べた。
対するWHOは、ガーナとスイスのWHO委託研究所が検査し汚染物質の過剰値を確認したと回答。
双方が説明を求めている。
ウズベキスタンでも同じケース
ウズベキスタン保健省も、インドの製薬会社Marion Biotechの咳止めシロップを飲んだ子ども18人が死亡したと発表した。
検査の結果、このシロップにはエチレングリコールが含まれていたとのことである。
ウズベキスタンからの申し立ては、ガンビアでのケースの数週間後に起こった。
Marion Biotech社はインドの首都デリー近郊のノイダに本社を置く。同社の製品は「中央アジア諸国、中央・中南米、東南アジア、アフリカの家庭用品」であるとLinkedInのページに記されている。
WHOは世界的な警戒を呼び掛けているが、インド政府は依然として疑惑を否定。
インドの法律ではすべての製造者が厳格な品質管理と製造方法を遵守することが義務付けられている。
専門家によれば、輸出用の医薬品も国内消費用の医薬品と同じ基準が適用されるとのことだが、その基準がどのように施行されているかは不明である。
世界の薬局、インドの信頼性に激震が走っている。