朝日新聞「声」投稿;テーマ「賃金格差」 2024/5/22掲載

朝日新聞「声」投稿;テーマ「賃金格差」 2024/5/22掲載


【同じ職場で賃金格差は必要か】
  元生協理事 栃倉幸一(新潟県 74)
 私は1970年暮れに大学を中退、翌年中小企業に就職した。当時「非正規雇用」というのは聞かなかった。仕事は経理・総務。入社数年時には決算業務を担当しながら、労働組合三役のひとりとして賃上げ交渉にもあたったが、役職・経験年数などでの給与格差に驚いた。けれど高度成長期でこの疑問は棚上げした。
 90年代、バブル崩壊で就職氷河期に入った。自治体や銀行の窓口などで非正規職員を目にするようになった。私の勤め先は資金困難に直面して親会社の系列下となり、再建計画の立案と実行で、賃金格差と向き合うことになった。
 退職した95年前後、「協同労働」に出会った。高齢者生活協同組合の設立準備活動に関わり、06年設立後、組合の事業として介護保険小規模デイサービスを始めた。正規・非正規・専門資格の有無を問わず、同一時間給千円で運営した。共通の理念の下で働き、夢を語り合えた。生活基盤を支えるほどではなかったとはいえ、民間会社勤務時の疑問を解消できた経験だった。7年間のこの事業経験から、同じ事業所での職位・職務による賃金差はいらないと思った。

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