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未完成交響曲

今日はコバルトブルーだったりする

神経が刺激に耐えられなくなり
文字を読めなくなり
TVを見れなくなり
音楽を聞けなくなり……

つまり言葉に触れられなくなり
書く体力そのものもなくなった
体重はどんどん減り
筋線維が細くなり
姿勢や考える力を保持できなくなった

(もういいや もういい)

行動を連続させることができなくなり
私を道化者ととらえる医者や看護師もいた

(もういいや もういい)

自分抜きで世の中はどんどん進んでいる
ニュース画面を見ているのは
かつて自分だった人ではなかった
疲れる
五秒でアナウンサーの顔は消された

おかしい
消えているのは 消えつつあるのは
自分の方ではないのか

毎日 毎年 毎時代
沈んでは現れる太陽
彼は何度生まれ変わったのだろう

その直前 
私は太陽をまともに見ていた
無意識に 何度も

あの日 あの場所で倒れ
あの人が救急車を呼んでくれなかったら
奇跡は起こらなかったかもしれない

入院したのはいつもの病院ではなかった
しかし消化器系から徐々に回復していった
脳がやっと休息し
最後の一塊までとろけていくように思えた

だが今も何をひょろひょろ書いているのかわからない
ああ わからないひょろ
言わば しばらくは完成図不明の
ジグソーパズルの一片……そんなうた

だからこの先も未完成であることは続き
刺激に耐えられない己が
ピースの海で溺れているのかもしれない

今日は群青色です
……コバルトブルー?
そんなこと言ったっけ?


(詩誌『everclear』第17号、『北極星』第56号 収録)

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