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医者や看護師さんが優しい声の時は、痛くて厳しい


乳房の細胞を取るために再び診察室に入った私は、ちょっとビビっていた。ビビっていたが、やらない訳にはいかない。今日のメインイベントだ。診察台に寝て、私は見ないようにした。自分の体がメスで切られるのも、そこから機械を入れられるのも見たくない。怖すぎる。

「ちょっとチクっとしますね〜」

注射をする時、先生も看護師さんも妙に優しい声を出す。いや、優しい声を出す時は、痛い時なのかもしれない。麻酔はすぐに効いてきた。
「痛いですか?」
「いいえ」。
こちょこちょ触っているのは分かるが、何をしているかまでは痺れた胸の感覚ではわからなかった。それは幸いだった。
バッチン、バッチン音が何度か響いている。衝撃は乳房に伝わってくる。だが痛くない。

「もう一本取りますからね。もうちょっと我慢してくださいね」

で、バッチン、バッチン。その後もモゾモゾ・・。看護師さんが
「バストバンドありますか?」
「あ、カバンの横に」
「お借りしますね」
ぎゅぎゅっと力技で背中をひと回りして、乳房を潰しながら二股に分かれたマジックテープで止めた。バストバンドは硬くて分厚く、全く伸びない。胸に息が入る場所がなくて軽くパニックになる。
ひえ〜。バストバンドって、こうやって使うんだ〜。
聞いてないよ〜!と叫びたい気分だ。
狭いところと閉じ込められるのが大の苦手。恐怖症と言ってもいい。だから胸の部分だけとはいえぎゅぎゅっと締め付けられると発狂しそうになる。

「息できますか? 苦しいですか? 苦しかったら、寝る時に少し緩めてもいいですからね。今日はこのまま帰ってくださいね。明日の朝まではしっかり巻いておいてくださいね」

優しい声で厳しいことを言う看護師さんに、うなずくしかできなかった。
この状態で明日まで? うう、息が苦しい。。

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