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心臓バクバク、針生検直前

超音波検査を終えて診察室に戻ると、先生は結果の画像を見ながら話してくれた。私はどきどきしていた。超音波検査でリンパへの転移があるかもしれないと思ったからだ。

「画像を見る限り90%がんと思われますが、画像だけでは確定ではないんです。あと、リンパもちょっと腫れていますね。ちょっと触診していいですか?」

先生はリンパの腫れについて、転移という言葉は使わなかった。私が診察台に横たわると先生が触診し、次に「私もいいですか?」と私に許可を求めてから看護師さんが触さった。
「はい、起きていいですよ」
私はカーテン越しに服を整えながら病理検査をして欲しいと、こちらから行った方がいいのだろうか?」そんなことを考えていた。
「今日この後、時間ありますか?」
先生は私の予定を確認した。私は一日空けてきたことを伝えた。

「今、画像検査をしてきていただいたんですが、がんと確定するためには腫瘍の細胞を少し取って検査をして、はじめてがんと確定できるんです。今日、お胸の細胞を少し取ってもいいですか? 局所麻酔をかけて、1センチくらいメスで傷をつけます。そこからホチキスのような道具で細胞をパチン、パチンと取って、しこりの細胞を取ります。注射をする時、チクリとすると思いますが、取っている時は痛みはありません。麻酔が切れたらしばらく痛みが残りますし、内出血もします。」

後日でもいいですよ。先生はそう付け加えたが、私は待ってましたとばかりに「今日お願いします」と答えた。

私はそのまま麻酔に入るのだと思ったが、身体を傷つける検査には様々手続きが必要らしい。
看護師さんとお話しするために別室に呼ばれて、そこで「乳房針生検」についての細かい説明を受ける。
飲んでいる薬の確認、翌日までシャワーを浴びられないこと、胸に巻くベルトを明日の朝まで外してはいけないこと、などなど。そして、簡単に胸囲を測るとLと用紙に記入した。
「売店でバストバンドというのが売っていますから、Lサイズを買ってきてください。今日、胸の細胞をとったらそのバンドを巻いたまま帰っていただきます。売店で買ってきたら受付に一言かけて、待合室でお待ちください。その間に注意事項を読んでおいてくださいね」

売店でバストバンドをくださいと言うと、レジの後ろから白い小さい箱を出してくれた。支払いは現金のみで2,000円くらいだったと記憶している。急な出費としては高い。初診でいくつも検査をしている。今日の精算がいくらになるかわからない中、ちょっとドキドキしながら払った。箱の中を覗くと、ビニールの中、白いものが丸められている。衛生用品のようなものなら、出さない方がいいかもしれない。そう思って、そのまま看護師さんに渡すことにした。

待合室で呼ばれるまでの間、看護師さんに言われた通り注意事項を読んでいた。だが、読めば読むほど怖くなってきた。痛みや出血が多い時のことなどが書いてあるからだ。大きな怪我や病気をしたことがない私は、身体を傷つけたり、細胞を取ったことによるダメージをほとんど理解していなかった。このバストバントにしたって、一体どのように使うのだろう? 
これから始まる未知の体験について、ぼんやり考えていた。
そして、診察室から呼ばれた。いよいよだ。

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