ナカミチの考察(VOL.18) RX-505 - ヘッドが廻らない録再オートリバース
以前にNAACメカ搭載のオートリバース機であるDRAGONを取りあげましたが、今回は録再オートリバース機のRX-505を取りあげます。
はじめに
タイトルでも触れていますし、DRAGON掲載回でも紹介しましたが、DRAGONはオートリバース機なのですが再生のみオートリバースで録音時はワンウェイ機であり、オートリバースで録音再生できるモデルはRX-505になるのです。
コロンブスの卵
他社のオートリバース機は録再ヘッドの2ヘッド又はコンビネーション3ヘッドともにヘッドを回転させることでオートリバースに対応してました。何度も紹介していますが、ナカミチのカセットデッキで拘っているのが、アジマスです。そのため、ナカミチはヘッドを廻すことをしたくなかったのです。
DRAGONは4トラック2チャンネルのヘッド(Rchは1トラックを2分割)で、テープ走行を逆転させましたが、録音ヘッドを2個収納できないという物理的な理由で録音リバースが出来なかったのですが、RX-505ではテープ自体をひっくり返すことでワンウェイ機でありながら、オートリバースに対応することにしたのです。恐らく他社でもアイディアとしては浮かんだと思いますが、エンジニアとしてのプライドとして採用とはならなかった。それに対しては、ナカミチは性能を担保するための1手法として採用したのだと想像しています。手でカセットテープを裏返す部分をメカで実現させれば、カセットコンパートメント内のメカは従来のメカが使えます。そして、アジマスに関してはワンウェイ機と同じ性能が担保出来るという、つまり一石二鳥なアイディアだったわけです。
※カセット全盛期以前にはヘッドを廻さないオートリバース機は存在してます。
では、個別の特徴について紹介します。
ユニディレクショナル・オートリバースメカニズム
ユニディレクショナルオートリバースメカニズムは部品点数が非常に少なく、シンプルな構造です。そのため、トラブルも少なく信頼性の向上に寄与しています。万が一、モノが挟まった場合は自動的に障害を回避するフールプルーフ設計が採用されています。また、モータードライブであることのメリットを生かして、テープ操作ボタンを押下するとカセットが自動でローディングされるようになっています。他社はモーターによる電動カセットローディング機能を有することが多いですが、ナカミチでは唯一RXシリーズのみです。この電動ローディング機能も、テープを反転させるために副次的に有したもので、利便性の点から電動ローディングになってなったものではないところがナカミチらしいと云えると思います。
ディスクリート3ヘッドシステム
他社のヘッド回転式オートリバース機は3ヘッドでもコンビネーションヘッドになります。それはヘッドを回転させる都合上の物理的制約があるためです。その点、ナカミチの場合はヘッドが回転しないので、ナカミチの3ヘッド機の特徴であるディスクリート3ヘッドシステムを用いることが出来るのです。録音ヘッド、再生ヘッドを個別に調整出来ること、磁気的セパレーションできる点からも物理的に分離されていることは重要なのです。
会社の規模、開発費などから、モデル毎に新規開発するのではなく、じっくりと時間を掛けて、ある程度長期に使用が可能な技術、デバイスを開発し、多くのモデルで流用することで製造コスト、信頼性を高めるという点でも非常に理にかなった開発思想であると思っています。
クローズドループ・ダブルキャプスタン
ナカミチのサイレントメカはすべて、2ヘッド機を含めてクローズドループ・ダブルキャプスタンを採用しています。テープの安定走行という点でシングルキャプスタンよりも有利であることは間違いないですが、下手な設計のダブルキャプスタンは逆に性能がシングルキャプスタンよりも悪くなりえます。その一つにテープパットがあります。オープンリールテープを見てもらえばわかりますが、テープパットはありません。2つのキャプスタンによって得られるテンション・ループにテープパットというものが介在されます。シングルキャプスタンの場合はこのテープパットによりテープテンションが得られるので必要ですが、ダブルキャプスタンの場合はこのテープパットが逆に悪くなる原因となるのです。そのためにナカミチではテープパットリフターという再生ヘッドに袴的なガイドを設けてテープパットをテープから浮かせる様に工夫しています。テープ走行に影響を及ぼすだけでなく、不要なヘッドへの押し付けがヘッドの摩耗を増やすことになるのです。後年、他社もこれに気が付いて、採用するところがありました。
ローディストーション・DCアンプ
ナカミチのカセットデッキでは、再生・録音アンプにも力を入れています。上位モデルから廉価モデルまでフロントエンドの回路はコストに合わせて方式が異なりますが、基本的なコンセプトはローノイズ、ローディストーション特性です。全段±2電源方式DCアンプを採用し、高級プリアンプなみの特性を得ています。
それ証明するかのように、一部の方はカセットデッキに入力端子にソース信号を入れ、出力からアンプに接続するというプリアンプ的に使用し、「ナカミチサウンド」を楽しまれている方も居られるようです。
兄弟機(RX-303/RX-202)
RX-505には下位モデルに兄弟機として2機種がラインナップされています。
RX-303とRX-202です。RX-303はナカミチのオリジナルサイレントメカ搭載で2ヘッド、クローズドループダブルキャプスタンでRX-202は三協メカの2ヘッド、シングルキャプスタンです。
RX-202は当時新品で入手しました。予算的に上位モデルのRX-303、RX-505は届かなかったのです。。。
その他
元ナカミチの関係者の方から得た情報では、当時展示会でこのユニディレクショナル・オートリバースのメカを壁一面にずらっと並べてデモンストレーションをしたそうです。
また、ショップでこのオートリバースの動作をデモンストレーションするための機能デモ機がありました。
スペック
トラック型式 :4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド :3(消去x1、録音x1、再生x1)
モーター :PLLサーボモーター(キャプスタン用)x1、DCモーター(リール用)x1、DCモーター(メカコントロール用)x1、DCモーター(カセット反転用)x1
電源 :100V、50/60Hz
消費電力 :最大28W
テープ速度 :4.8cm/s
ワウフラッター :0.04%以下(Wrms)
周波数特性 :20Hz~20kHz ±3dB(ZX、SX、EXⅡテープ)
総合SN比 :70dB以上(3%THD、WTDrms、ドルビーCタイプNRin、ZXテープ、70μs)
総合ひずみ率 :0.9%以下(400Hz、0dB、ZXテープ)
消去率 :60dB以上(飽和レベル、1kHz)
チャンネル・セパレーション :36dB以上(1kHz、0dB)
クロストーク :60dB以上(1kHz、0dB)
外形寸法 :幅450x高さ144x奥行300mm
重量 :約10kg
最後に
ナカミチならではのコロンブスの卵的発想のRXシリーズですが、個人的には最上位モデルであるRX-505でも録音機としては機能的に不足を感じています。ZX-9/ZX-7の手動録音調整機能を搭載したRX-909/RX-707なんてモデルがあったらベストだと思っています。オートリバースのプレイバック最高峰はDRAGONでオートリバースの録音再生はRX-909なんて空想を抱いています。
2024.2.24
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?