メロンソーダを考える
夢アドさんの「メロンソーダ」
HKTに「メロンジュース」という曲がある。デビュー間もない時期の楽曲で、甘ったるいイメージのあるメロンジュースらしい、バリバリの48ソング。
対してこちらは「メロンソーダ」。炭酸が入り、「単なる愛」だけでは片付けられない若い男女の爽やかさと酸っぱさが入り混じった恋愛ソングとなる、はず。。
主人公は恋をしているアイドル。とても珍しい設定の曲である。そして主人公の恋は曲中では成就しない。甘酸っぱいという言葉が似合う爽やかな曲。
ここまではタイトルのイメージとピッタリ合致しているが…
例えば1番サビの歌詞。
「わたしがいちばん可愛いのに どうしてあの子ばっかり見るの？
あなたから「好き」と言われたなら アイドルだって辞めちゃうかも
おねがい名前で呼ばないで これ以上夢中にさせないで
間接キスが恥ずかしくて 一口も分けてあげられなかったメロンソーダ」
甘い！甘ったるい！
至ってまっすぐな恋。めちゃくちゃ48っぽいし（良い意味でね）、成就していない感はあるものの主人公は結局幸せそうだし。
そしてその直後の2番Aメロ。
「ねえ カメラの前なら キメ顔すぐに作れるのに
あなたとふたりきりだとじょうずに出来ない」
好きな子と一緒にいるとアイドルという面を忘れ、思わず気が抜けて素の自分を出してしまっている主人公。
まるで炭酸の抜けたメロンソーダ。
メロンソーダに果汁なんか入っていないんだから、炭酸が抜けたらもはや砂糖水である。先ほどの甘ったるいイメージと完璧に一致する。
また、上記の歌詞に違和感を覚えなかっただろうか。「あなたとふたりきりだとじょうずに」ここまで全てひらがな。「ふたり」がひらがななのはまだ分かるが、「じょうず」は普通漢字だろう。
もしかしたら、ひらがなで子供っぽさを出したかったのではないだろうか。炭酸の抜けてしまった「メロンジュース」を表現するために。
「あなたから『好き』と言われたなら アイドルだって辞めちゃうかも」と言っているが、あくまで「辞めちゃうかも」だから本当に辞めるか分からないし、自分から告白することは決してないのだろう。先に触れたが、本人からしたらただ一方的に愛を送るだけである程度幸せで、結ばれることの必要性をそこまで感じていない。
告白して、フラれて、でもやっぱり好きで…
そんな甘酸っぱい、少し刺激的な「メロンソーダ」のような恋は必要ない。「メロンジュース」で十分なのだとヒロインは悟る。
その子のことがずっと好きなのに、アイドルだから隠さねばならず、好きだと言えない。「10代の甘酸っぱい爽やかな恋＝メロンソーダ」は内に秘められ続けたことで炭酸が抜け、「（成就することのない）単なる愛＝メロンジュース」へと変化してしまう。そんな、甘くもちょっと悲しい曲。
ちなみに…。「一方的に愛を送るだけである程度幸せ」って、どこかで感じたことがないだろうか。そう、オタクである。成就しなくてもいい！この愛自体が幸せ！というのがテーマだとするとアイドルから一般人への愛にも当てはまるし、オタクからアイドルへの愛にも当てはまる。
メタ的な考察になってしまうが、「アイドルの恋は成就できない」は「アイドル＝恋愛禁止」という一種の暗黙の了解によるもの。そんな暗黙の了解は、「オタクからアイドルの恋」という、疑似恋愛、ニアリーイコール、アイドルの数式が作られてしまったから。HKTとは言わないが、HKTの属する48グループが作っていつの間にか世界共通になってしまったそんな数式がただの恋愛を「アイドルだから」という理由でタブーにしてしまい、結果、「メロンソーダ」から炭酸が抜ける原因となってしまった。
さらにメタ的な考察をすると、「メロンソーダ」から炭酸が抜ける過程を表現した＝「『普通の女の子→アイドル（≠普通の女の子）』」夢アドさんと、最初から炭酸が抜けた「メロンジュース」を表現した＝「普通の女の子→『アイドル（≠普通の女の子）』」HKTさん。
伝わるかな。「アイドルだから恋愛ができない」とプロ意識が芽生えるにつれて炭酸が抜け、自分自身を規律していく夢アドさん（恋愛禁止じゃない）に対し、「恋愛禁止だから」と大人に言われ、最初に炭酸を抜かれた状態で人前に出される48グループ（恋愛禁止）。
どちらが闇だと思いますか？
実際、夢アドさんは恋愛をしてもいいんです。でも、恋愛しちゃダメという風潮がそれを縛っている（かもしれない）。普通の女の子からしたら当たり前の行動である恋愛が、アイドルだから勇気ある行動になってしまっている。そんな悲しい現実を表現したのが「メロンソーダ」かもしれません。
信じるか信じないかはあなた次第です。
余談ですが、「夢アド 恋愛禁止」で検索すると廣田さんの動画に関する記事が出てきます。
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