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「宇宙戦士バルディオス」全話レビュー(4)亜空間突入の日

あらすじ

 アルデバロン軍を相手に苦戦するバルディ・プライズとキャタレンジャー。クインシュタイン博士はマリンのメカ、パルサバーンを改造し、巨大ロボバルディオスを完成させる。

Aパート:未確認飛行物体出現、罠にかかる雷太とオリバー、新兵器披露
Bパート:2機、限界まで40分、マリンへの依頼、バルディオス合体

コメント

 第3話まででようやく合体する3機が出揃い、ようやく主役ロボット登場となる第4話。敵将アフロディアの放った秘密兵器「ビッグオクト」が地球上空に出現し、オリバーと雷太がそれぞれバルディプライズとキャタレンジャーで発進する。マリンもそれに続こうとするが、パルサ・バーンは地下工場で改造されていたのだった。
 このピンチに、月影長官は早速マリンを出撃させようとする。しかし、クインシュタイン博士はそれを止めた。またテストもしていない機体に、彼を乗せるわけにはいかない、というのだが、それは「研究のためにあなたが必要」という、非情にも聞こえる理由からだった。

 第2話では徹頭徹尾マリンを捕虜扱いしていた月影が、いざピンチとなると、すぐマリンを出撃させようとするあたり、やはり思慮の足りない短絡的な性格と改めて感じざるを得ない。一方のクインシュタイン博士は、マリンを乗せない理由も筋が通って明快である。ガットラーと戦いたい、という思いの強いマリンも、引き下がらざるを得なかった。

 一方アフロディアは、ビッグオクトによる都市への無差別攻撃を見て基地から出てきたバルディプライス、キャタレンジャーを確認すると、ほくそ笑む。地球の持つあの二つの兵器さえ倒せば勝負は決まる、というガットラー。わずか4話目にして、敵側は勝利も目前という雰囲気である。そのために開発した新兵器である。私にお任せください、と自信満々のアフロディアだが、彼女も月影に負けず劣らずのポンコツ指揮官であることは、第3話で聞いた彼女の作戦からもわかっているので、不安になるよりむしろワクワクしてしまう。

 ビッグオクトの狙いは、2機を捉えて深海へ沈め、深度1万3000メートルの海底に封じ込めて水圧で破壊することだった。なんとも迂遠な方法かと思うが、敵将の名がアフロディア、ギリシア神話の美の女神で海の泡から生まれたアフロディーテを意識したものだけに、メカも「オクト」=オクトパス、と海の生物のイメージで、何かと海へのこだわりが感じられる。

作戦通り、オリバーと雷太の乗機はピンチに陥る。放送開始からわずか7分。ここから、主役機バルディオスへの合体までの流れを阻むのは、敵よりもむしろ地球側の人間関係であろうことは想像に難くない。第2、3話で描きこまれた人間模様が生きてくる展開である。
 ここで再度、ピンチに弱い月影は言う。
「博士、彼らを救う道は、もうあの新兵器しかありません!」


 しかし、「成功の可能性が不明なものに、人間は乗せられません」と、クインシュタイン博士もまた、信念を曲げない。人間は、という言葉に、きっと月影は、いや、奴は異星人だと思ったに違いない。そんな月影の外道っぷりを見透かしたかのように、クインシュタイン博士は畳み掛ける。「マリンも、人間です!」と。彼女は単に冷徹なだけでなく、彼をブルーフィクサー基地の中で誰よりも、一人の人格ある人間として見ている人物でもあったのだ。

 そうはいっても手を打たなければならない彼らは、次の手を打つ。ニュー・パルサ・バーンをマリンに見せるとともに、まんまと敵の計略にはまって生命の危機にさらされている雷太とオリバーの状況を伝え、情に訴える作戦に出たのだ。命令するのではなく自分から乗るというのなら、万が一の責任は免れるという官僚的発想にも思えるが、さすがにこれにはマリンも「勝手だな」と言うしかない。
 そこへ出てくるのが、やはりクインシュタイン博士である。彼女の一言で、マリンはニュー・パルサ・バーンでの出撃を決意。海底1万メートルに沈む二人の機体を救い出し、見事初合体、そして初の亜空間突入を決めるのだった。

 かように、乗るか乗らないかで繰り広げられる心理劇に重きが置かれた展開で、初登場、初合体のバルディオスの活躍ぶりはあまり印象に残らない。戦いに戻ったマリンは、握手を求める雷太を拒否した一方、無言で出迎えたクインシュタイン博士にはサムズアップで応えてみせた。彼らがチームとして結束するには、まだまだ時間がかかりそうである。

メカ紹介

バルディオス

 第4話にしてようやく初登場となる、本作の主役ロボット。マリンがSー1星から乗ってきたパルサ・バーンを改造したニュー・パルサバーンとバルディプライズ、キャタレンジャーがそれぞれ変形・合体する。マリンの「バルデイォス・ゴー」という声で作動する。亜空間に突入する機能を持つほか、多様な武器を装備している。第4話では、胸部から取り出される主要武器「バルサーベル」を使用した。

ビッグ・オクト

 アフロディアが地球侵攻のために開発した新兵器。第一段階で卵型の兵器内部から触手を伸ばして敵機を捕獲。第二段階で海底に沈め、第三段階でフラッシングビームによる攻撃を加えることにより、深度1万3000メートルの海水圧で敵機を潰すという兵器であった。ちなみに兵器と言っていたが実際にはメカで、アフロディアはこの卵型のメカに搭乗していたようである。最高指揮官でありながら、常に最前線に飛び出していく姿勢が、今後いろいろと波紋を呼びそうである。

今回のスポットライト:クインシュタイン博士


マリン・レイガン、私たちは地球人として、
あなたにパルサ・バーンの操縦を依頼します。
断るのも、引き受けるのも、あなたの自由です。
危険な仕事です。ニューパルサ・バーンは
まだ一度もテスト飛行をしていません。
それに、あなたは地球を救う義理もない。
信じるよりありません。賭けたのです、地球のために。

 レビューを〆るこのコーナーだが、ポンコツ指揮官という見出しだと毎回月影長官を取り上げることになってしまいそうなので、時には別の視点から、響く一言にスポットを当てていきたい。
 第2話ではマリンの聞いているところでSー1星への敵意をあらわにしながら訓練中の隊員たちを鼓舞し、そのハラスメント気質ぶりを見せつけた月影長官だが、今回は手のひらを返して、ピンチに陥ったオリバーと雷太を見せ、情に訴える作戦に出た。
 一方、クインシュタイン博士は、新兵器ニュー・パルサ・バーンは一度もテスト飛行をしていないという事実を明らかにした上で、操縦を依頼する。やるかやらないか、彼自身の自由な意志に任せたのである。信じるよりほかにない、と。
 彼女は、のちにその心情を月影長官に明かしている。「私が信じたもの、それはガットラーに父親を殺された、マリンの復讐に燃える心です」と。それは弟ミランを殺された、という怒りに燃えるアフロディアを最高戦闘指揮官に命じたガットラーと、同じ動機ではなかったか。月影長官をその怜悧な頭脳で支える博士は、月影をはるかに上回る策略家でもあったのである。

評点

★★★★★
マリンを自軍で戦わせるための心理戦が見事。初登場のバルディオスもカッコイイ。


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