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ドラマレビュー:愛の不時着(2019)〜ロミオとジュリエット以来の、障壁があるからこそ燃え上がる愛だけど、むしろ北朝鮮に親近感を持ってしまう

 年の瀬も迫ってきたので、2023年に見たドラマを振り返って、レビューを記しておこうと思う。流行やブームにまったく疎い人間なので、今年のドラマではなく時期を外しまくっているが、そこは生暖かく見ておいてほしい。

 昨年からNetflixに加入して、何か面白いものは?というので見始めたドラマである。韓流ドラマを見るのは初めてで、その特有のノリに最初は少々違和感もあったが、たちまちストーリーに引き込まれてしまった。

 韓国の財閥令嬢の主人公、ユン・セリは親の力によらず自力でビジネスを展開し大成功を収めている実業家である。実は財閥一家の3人きょうだいの中で彼女だけが、母親の違う異母妹だったのだ。そんなこともあり、継母から疎まれていた彼女は、自殺を図るためスイスを訪れたこともある、暗い過去を持っていた。
 そんな彼女がある日、新作ウェアを試着してパラグライダーで飛行した際、突如竜巻に巻き込まれ、こともあろうに軍事境界線を超えて、北朝鮮側に不時着してしまう。
 彼女を発見したのは朝鮮人民軍のリ・ジョンヒョクだった。彼の姿を見て、自分が北朝鮮に来てしまったことを悟ったセリは逃走するが、保衛司令部少佐のチョ・チョルガンというチョー悪い奴に見つかりそうになったところ、ジョンヒョクに助けられ、彼の婚約者と偽って、救出のチャンスが訪れるまで匿われることになるのだが‥‥。

 最初はシリアスなドラマなのかと思って見始めたのだが、ジョンヒョクの4人の部下たちや、セリの兄から金を騙し取って北朝鮮に潜伏している詐欺師のク・スンジュン、ジョンヒョクの真の婚約者ソ・ダンら北朝鮮側のキャラが出揃ってくると、彼らの織りなす、私たちの社会とはどこかズレていて、でもなぜかノスタルジックな人間関係が、実にいい感じのコメディになっていて、どちらもそれぞれの社会でセレブなセリとジョンヒョクはさておき、その周辺の人々の素朴になんともいえない共感と愛着を感じてしまうのが、実に面白いのである。ある意味では、財閥令嬢と北の将軍様側近の子息という、どちらも自分たちの境遇とは程遠い人たちとのギャップを、彼らが私たちの側に立って埋めてくれているともいえそうである。

 ストーリーは、ジェットコースターのように激しく上下左右に人々を揺さぶりながら展開していき、目が離せないのであるが、セリとジョンヒョク、それぞれ「実家が超太い」カップルだけに、最後は親の財力と権力でなんとかなってしまうだろうという妙な安心感に支えられながら見ることができた。七夕伝説になぞらえたラストはある意味新鮮だが、一方で二人の主人公のような強い後ろ盾のない人々は、善人であれ悪人であれ悲惨な最期を迎えるというのは、韓国ドラマならではのテイストなのかもしれない。

 ちなみに私はというと、並行して描かれるク・スンジュンとソ・ダンの二人がどうなるかの方に心惹かれた。決して笑顔を見せない、感情を露わにしないソ・ダンの、それでいて笑いが取れるコメディエンヌっぷりが見事だと思う。

 翻訳も、北朝鮮の日常語、独特の言い回しなども伝わるように工夫されていて、素晴らしかった。ジョンヒョクの指揮する小隊の面々には、なんだかまた会いたくなる。そんな余韻がいつまでも楽しめる。

 最後に一つだけ突っ込んでおくと、北朝鮮の「電車」で移動中、停電で列車が止まって野宿を余儀なくされるセリとジョンヒョクだが、その停電になった「電車」、線路上に送電設備がなく、どう見てもディーゼル機関車にしか見えなかった。そこはもう少し、うまい嘘をつけなかったのか‥‥

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