やさしい妖怪。

おはなしのなかでときどき登場する「私たち」というときの、私ともうひとり。それは、とんがりハウスの同居人であり、仕事の同僚であり、私をいろいろなところに連れて行ったり、いろいろな人に出会わせてくれた、相方のような存在。私より年下だけども、私よりしっかりしていて、心がとてもやさしくて、尊敬できる彼女。とにかく、いつも、いろんなとき、いろんなところを一緒に過ごした。

彼女はどこか古風なところがあり、それがまた、私の知らない世界を教えてくれるようで魅力的だった。着物が好きで、歴史が好きで、職人に憧れていて。そして、何を隠そう、彼女は、「妖怪」が好きで「妖怪」についてとても詳しい知識を持っていた。そして実は私も、「妖怪」の存在は嫌いではなかった。

私なりの「妖怪」の解釈はこうである。眼には見えないけれど、その気配を感じたり想像することで、誰かに優しくできたり、自らを戒めることが出来たり、自らを省みたりできる、そんな見えない存在。彼らは私たちよりはずいぶん長く生きていて、いろんな人生をみてきていて、きっと辛い思いもたくさんしている。だからきっと誰かにやさしく寄り添うことが出来る。見えないけれど、なにかを気づかせてくれる存在。それが、私の「妖怪」のイメージ。

そして、私があの街で出会いともに過ごした相方はまさに、妖怪のような、心やさしい存在だった。言葉がなくとも、相手の思いを察し、そっと手を差し伸べる、そんな心やさしい相方。仕事終わりに「おすそわけ〜」と言って野菜やお米持ってきてくれたり、仕事より遊び優先の私にとことんつきあってくれたり。そんなやさしい存在を、「相方」と紹介するのは、とても贅沢な気がしている。きっと、私だけじゃなく、みんなの「相方」なのだと思う。彼女は、みんなにとって、そんな印象で、そんな存在なのだ。そんなところがやっぱり「妖怪」っぽい。

彼女のことは、ときや、ところ関係なく、いつでも、また会えるような、そんな気配を感じていて、とても離れた気がしない。うん。やっぱり「妖怪」だ。(離れた気がしないから、なんだかうまく書くことができない)






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