会社員をしながら夢を追う二人組

私たちは一度、ゲストハウスで一緒になった。私が街へやってくる前のことだった。一人は、古着やアンティークが好き、もう一人はカメラが趣味、ともに24歳の男の子だった。旅が好きで、旅先での出会いに好奇心がある彼らは、春からこの街に暮らすことになる私に、ふたたび遊びに来ますと、再会を約束してくれた。

私たちは、すぐに再会する。彼らのフットワークはとても軽く、平日は仕事に打ち込み、週末になるとそれぞの趣味や夢のために、どこへ行くにも時間やお金、労力を惜しまないのだった。街へ越してきたことを喜び、すぐに遊びにきてくれた。

彼らとの出会いは、私にとって、はじめてのタイプの友情を感じさせた。故郷も育った場所も、年齢や仕事も全くちがう。それなのに私たちは、目には見えない共通のなにかを見つけたような気がして、私は、そんな彼らの夢に耳をかたむけるのがとても心地よかった。私たちはときどき仕事の話もした。彼らの抱える仕事の悩みすらも、私にはほほえましく、上手なアドバイスはできないけれど、私なりに相づちをうち、なにかを答えていたように記憶している。

二人が趣味に傾ける愛情はホンモノだった。もしかしたら、それで食べて行けるのでは?と思うほどのセンスや実力、真摯な気持ちを感じた。仕事をはじめて三年目だった彼らは、仕事のプレッシャーや将来の不安を抱えながらも、週末になると、自分たちの趣味のために、足を動かし、お金をつかい、腕を磨き、心を養うのだった。

あれから三年。彼らはどんな今を過ごしているだろう。仕事をつづけているだろうか。夢を追いつづけているだろうか。夢を叶えただろうか。

私が街を離れることを決めたときも、彼らは遠い街からそれぞれ、会いにきてくれた。私たちは、こんな風に会うのは難しくなるかもしれないなと予感しながらもそれは口にださず、ただただいつものように、夢を語り、今を語った。彼らのホンモノに触れた私は、あの街をはなれて、少しは近づけただろうか、ホンモノに。いや、ホンモノになんか、いつまで経ってもなれやしない。だから、いつの日か、また会うその日まで、近況を伝えたりはしないんだ。私もただ、夢を追い、今を生きるだけ。それが、私たちが知った新しい友情のカタチ。


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