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『AC6』のプラモデル展開について思うこと

 『ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF RUBICON』(以下『AC6』)のプラモデル、それも主役級の機体「ナイトフォール」と「スティールヘイズ」が、バンダイのレーベル『30 MINUTES MISSIONS』(以下『30MM』)から発売されるとの発表があり、一部では相当の反発(及びその反発に対する反発)を招いている。
 これについて、以下に感想を述べたいと思う。
 なお、口汚く罵ったりはしないが、最終的にはバンダイに対して否定的な感想であるから、それに了承いただける方のみ、この先をお読みいただきたい。

 『AC6』のプラモデル展開の時系列は、概ね以下のとおりである。

・2023年5月10日 コトブキヤが『AC6』のプラモデル発売を告知(公式Xによる告知
・2023年8月25日 『AC6』発売
・2023年10月28日 バンダイが『AC6』のプラモデルを『30MM』レーベルで発売することを告知(公式Xによる告知
・2024年3月20日 バンダイが公式配信で詳細を発表(YouTubeのアーカイブ

 そして、2024年3月31日現在、コトブキヤから続報は発表されていない。

 これまで、『AC』シリーズのプラモデルはコトブキヤが展開していた。ゲームの海外販売をバンダイ(正確にはバンダイナムコゲームス)が担っていた『ACV』シリーズでさえ、バンダイはプラモデルを発売していない(なお、『ACV』シリーズのコトブキヤプラモデルのパッケージには、バンダイもクレジットされている。)。
 また、『AC6』に関しても、上記のとおり、コトブキヤは『AC6』発売の3か月以上前に、プラモデルの発売を告知している。
 当時、『AC6』への期待は高まっていたとはいえ、発売されていないのであるから、『AC6』がヒットするかコケるかは当然不明である。しかし、「『AC6』の売り上げがどうあっても、発売するんだ!」という姿勢が(真偽はともかく)見受けられる。
 翻って、バンダイは『AC6』発売から2か月経過した後に、プラモデルの発売を告知しており、『AC6』のヒットを確認し、一定以上の利益が見込まれることを試算した上で、発売を決定したように見えてしまう(実際には、バンダイほどの大企業の意思決定がそんなに早いとは思えないことから、ある程度見切りで企画されていたものと思われるが。)。
 加えて、バンダイは主役級の機体を発売すると発表したのに対し、コトブキヤは発売出来るのかすら発表がない。
 こうした事情から、バンダイに対する反発が生じたと考えられる。
 すなわち、バンダイは、『AC』シリーズに思い入れもないのに、利益が生じると分かった途端、『AC』シリーズと長く苦楽を共にしたコトブキヤに筋を通すこともなく、主役級の機体をかっさらった悪辣企業、と受け取られてしまったのである(コトブキヤからプラモデルが発売されるか分からないという不安が、バンダイに対する攻撃に転じている側面もあるだろう。)。
 無論、コトブキヤの従業員が全員『AC』に愛着を抱いているはずもなく、売り上げが見込めなければ商品化しないのはコトブキヤも同じであるし(事実、ゲームとしての評価が芳しくなかった『ACV』シリーズについては、コトブキヤもあまり商品展開を行っていない。限定品とはいえ「オーバード・ウェポンセット」のような狂気じみた商品はあるが。)、バンダイの担当者に『AC』に対する思い入れがないとも言い切れない。
 ただ、外観上そのように見えてしまうのである。

 仕方がない、とは思う。
 バンダイは資本金100億円、従業員数876名の大企業であり、中小企業であるコトブキヤ(資本金4億5,899万円、従業員数243名)とは経営判断が異なるだろう。プラモデル業界のトップとして、多少悪辣に見えたとしても、会社や従業員を守るためには、売れるものを販売する必要がある。
 ただ、「それは『AC』でなくとも良いのでは?」とも思う。人気のコンテンツはいくらでもあるわけで、コトブキヤを狙い撃つような行動は、感傷だが、好きにはなれそうもない。そもそも『30MM』は量産機をテーマにしたレーベルだったはずなのだから、ネームドACは譲っても良かったのではないか。

 また、今回の件で、『AC6』開発元のフロム・ソフトウェアを責める声も散見された。曰く、「何故バンダイに許可したのか。」と。

 気持ちは分かるが、これも仕方ないと思う。
 『AC6』の海外販売はバンダイ(正確にはバンダイナムコエンターテインメント)が担っていることに加え、フロム・ソフトウェアは角川の子会社であり、その角川の株の2%強を、バンダイ(正確にはバンダイナムコホールディングス)が有している以上、バンダイの意向を無視することは出来なかっただろう。フロム・ソフトウェア側に、広く流通するのならそれが良いという打算があっても不思議ではない。

 コトブキヤは広報があまり上手ではなく、「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」の精神の職人企業という印象であるが、今回の件は、そうした職人たちが資本と政治に負けた(少なくとも先手を取られた)ように見える。
 無論、以上はあくまでも想像(むしろ妄想の類)である。ただ、そのような醜い現実を伺わせる展開は、出来れば見たくなかったというのが、子供じみているが、正直な感想である。
 コトブキヤの発表が既に行われている状況であれば、もしくは『30MM』がネームドACを扱うのでなければ感想もまた変わっただろうし、想像を基として怒り・悲しみを抱いているに過ぎないことから全く論理的ではないが、感情的に、しばらくバンダイのプラモデルを購入することはないだろう。

 なお、『30MM』の「ナイトフォール」及び「スティールヘイズ」については、既に転売が横行しているらしい。
 転売価格で購入するくらいなら、コトブキヤが正規の値段で過去の『AC』シリーズのプラモデルを精力的に再販しているから、そちらを購入することをおススメしたい。

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