今朝の『天声人語』賃上げも社会に必要な価格転嫁の一種❣️
コーヒーチェーンのスターバックス、インターネット通販のアマゾン、そしてiPhoneなどを扱うアップルストア。この三つの共通点は何か。それはここ1年、労働組合を結成する動きが米国で現れたことだ▼アップルストアの場合、メリーランド州の店で先月中旬、労組結成を問う投票が行われ、従業員の多数が賛成した。全米270以上ある店舗で初めての出来事となり、他の店にも広がる可能性があるという▼結成ドミノを食い止めたい会社側は、最低時給の20ドルを22ドル(2980円)に引き上げるなどの懐柔策に出た。しかし米メディアによると、同じく結成をめざしているニューヨーク中心部の店の従業員たちは、時給30ドル(4060円)の要求を掲げているという▼日本と同じく労組の組織率が下がり続けてきた米国だが、ここにきて労組結成ブームとも呼ばれるほどの潮流になっている。背中を押しているのが急激なインフレで、消費者物価指数の伸びは40年ぶりの水準に達しているという▼米国ほどでないにしろ、日本の物価上昇もなかなか止まらない。参院選でも争点になっているが、最大の処方箋(せん)はやはり賃上げだ。原材料から商品への価格転嫁が進むなか、それを支える購買力がなければ経済は回らない。賃上げもまた、社会に必要な価格転嫁の一種であろう▼だからこそ労組の果たす役割は極めて大きい。忘れかけていたことを改めて教えてくれるのが、米国のスタバ、アマゾン、アップルで働く人たちだ。