一級建築士製図試験過去問研究 ~過去問を知らずして合格なし!~

こんにちは。
私事ですが今年度も前年に引き続きチューターを行う予定です。
昨年に引き続き、一級建築士製図試験の勉強の仕方や攻略法などを共有できる範囲で発信していきたいと思いますので、興味を持っていただけましたらTwitterのフォローの方お願いします。

今回は「過去問研究」になります。
他の資格試験はもちろん、学科試験でも過去問研究はとても重要な試験対策の1つです。
学科試験では実に75%以上が過去問あるいは類似の問題で構成されているため、過去10年分の問題を丸暗記できれば合格できるともいわれています。

では製図試験はどうでしょうか。
確かに製図試験は毎年テーマである建物用途が変わるため、過去問研究は不可能であると思い込んでしまう方も多いかもしれません。

確かに、毎年採点基準は若干ずつ異なるものの、延焼ラインや防火設備は毎年即失格級の基準であることは変わりませんし、記述の問題も毎年似たような問題が多く出題されます。

今回は各年の試験で、受験性がどこで読み間違え、どこで不合格になっていったかをお伝えします。

今年は同じようなひっかけを使ってこないかもしれませんし、採点基準が異なる可能性もありますが、少しでも合格する確率を上げるために、「過去の手法には引っかからない」というのは最低限必須となります。

※お詫びと注意
この記事では実際の課題文や合格基準を基に解説を行いますが、試験元の性質上課題文をそのまま転載することができません。
該当箇所を部分的に転記する形で解説を行いますので、ご了承ください。
過去問は建築技術教育普及センターのホームページよりダウンロードできます。ダウンロードいただき、問題文と見比べて本記事をご覧ください。


R4年度のポイント 「事務所ビル」

①事務所面積の解釈ミス

R4年度 製図試験 問題文より

この年ではまず確実に不合格とされたのがこの部分。普通に読めた人は読めたのかと思いますが、「基準階の合計が3,000㎡」と記載されているので、共用部を含めた基準階の床面積が3,000㎡と誤解をしてしまったパターンです。

この課題文の正しい読み方としては、「貸事務室Aと貸事務室Bの(基準階での)合計面積が3,000㎡」であり、この3,000㎡に廊下やトイレ等の共用部は含みません。

意外とこの読み間違えで一発KOとなってしまっていた受験生の方が多かった印象です。

この要求室欄の読み方はR2年の「高齢者介護施設」の際にも引っかかったポイントの1つでした。クセのある表記の仕方なので読み方を意識していないと引っかかってしまいます。詳しくはR2年度のところで解説をします。

②階段の表記

試験元は毎年、合格発表と同時に「合格基準」を発表しており、その年にどのような合格基準だったかというものを公表しています。
この試験の嫌らしいところは、この合格基準が年によって違う点です。
R4年度の合格基準を去年と見比べてみると、「階段の不成立」というものが今まで記載のなかったものとして記載されています。

標準解答例①の基準階平面図、西側階段の注釈をご覧ください。
わざわざ、各階の段数を書いています。
これは恐らく、毎年所定の寸法の階段を書くのみで、段数を適当に書いている受験生が多いことから、「段数まで数えて採点をしています」というメッセージかと思われます。

階段は、基準法で最低踏面寸法と最高蹴上寸法が定められています。
受験生が作図する階段は、階高、階段室の寸法によっては、正確に計算すると基準法で定められた階段にならないというケースも往々にしてあるのだと思われます。
特に今回の試験文では、基準階の天井高さが2.8mと指定されていたため、妥当な階高がわからず安全側として階高を4.5mに設定した受験生も多かったようです。この場合、階段の必要段数も変わってきますので、設定した階高に沿ってきちんと階段が設計できるかが、採点のポイントになったということです。

更に、標準解答例を見ると、2つの直通階段のうち1つは屋上まで行ける表記になっています。
日頃の癖で最上階の階段を屋上に行けない表記にしてしまうと、断面図に塔屋を書いているのに階段は屋上まで行けるようになっていない平面と断面の不整合としてみなされたり、「メンテナンスに配慮」という文にも背くことになり、計画として望ましくありません。

今回このような基準を設けられたことを考えると、来年以降も階段については厳しく見られる可能性が高いため、今まで適当に作図していた方は、作図方法の再確認と、基準法で各種寸法を再確認しましょう。

③シェアオフィス部分のゾーニング


R4年度 製図試験 問題文より

これも間違えた受験生が多かったものの1つです。
上記は、問題文のⅡ.要求図書に書かれている事項です。
要求室の箇所ではなく、要求図書に書かれているのが嫌らしいところです。
要求図書の部分には、往々にしてヒントが隠されていることが多いです。

標準解答例を見ると、2つとも、最上階のエレベーターからシェアオフィスへの経路に開き戸で出入口が書かれています。
シェアオフィスのセキュリティの問題は、受験生を悩ます部分だったかと思いますが、出入口を書く、すなわちその出入口でセキュリティを確保することが可能という解釈なのでしょう。
多くの受験生が、エレベーターを降りたら即シェアオフィスにいるような計画をしていましたが、試験元が要求していたことは、エレベーターホールを設け、そこからシェアオフィスにアプローチする、という動線計画だった、ということがわかります。

シェアオフィスのイメージ図


④基礎の設計

受けた方は多少なりとの衝撃を受けたかと思われますが、今回の基礎は杭基礎での出題でした。
今まで各種予備校ではベタ基礎しか行ってこなかった穴をつくような問題でした。
こればっかりは初出題のため、完璧に対応できた受験生は少なかったのではと思います。
ただ、1度出題された問題は翌年以降も出題される可能性が高いので、去年できなかった方はよく復習しておきましょう。

余談ですが、事務所ビルの出題は前年度の前の出題が平成21年度です。
この時の過去問が手に入る方は是非見てみてください。
この時も、実は要求面積のみ与えられ、階数は自由だったのです。
設計者の自主性に委ねるような、自由度の高い問題が令和版として蘇ったような課題でした。
次回以降、課題が発表されたら、類似の用途が出題された過去問をチェックすると、何かヒントが得られるかもしれません。

※R3年度とR2年度の振り返りは有料とさせて頂きます。
目次でピンと来た方は読む必要はないと思います。ピンと来なかった方は拝読をおススメします。

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