食道扁平上皮がんに対する強度変調放射線治療による化学放射線療法に伴う食道の瘻孔形成

Pao TH et al. PLoS One. 2021. PMID: 33989365
・食道扁平上皮がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)による化学放射線療法に伴う食道の瘻孔形成
・後ろ向き研究(台湾)
・リスク因子:T4腫瘍、治療前の食道狭窄

<背景>
・食道扁平上皮がん(ESCC)に対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた同時化学放射線療法(CCRT)に伴う食道の瘻孔形成に関する文献はまだ不足している。
・今回の研究の目的は強度変調放射線治療(IMRT)を用いた化学放射線療法(CCRT)により治療が行われた食道扁平上皮がん(ESCC)患者における食道の瘻孔形成のリスク因子を調査することである。

<対象と方法>
・2008年から2018年に強度変調放射線治療(IMRT)により根治的な同時化学放射線療法(CCRT)が行われた129例を検討した。
・カプランマイヤー法を用いて食道の瘻孔形成の発生率と生存成績を推計し、long-rank検定で群間比較を行った。
・多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いて、食道の瘻孔形成のリスク因子を同定した。

<結果>
・経過観察期間の中央値:14.9ヶ月(IQR 7.0-28.8)。
・食道穿孔が20例(15.5%)に認められた。
・食道-胸膜瘻 9例、食道-気管瘻 7例、気管支-食道瘻 2例、大動脈-食道瘻 2例。
・強度変調放射線治療(IMRT)から食道の瘻孔形成の発生までの期間の中央値は4.4ヶ月(IQR 3.3-10.1)。
・食道の瘻孔形成が認められた患者群では全生存が不良であった(中央値:10.0ヶ月 vs. 17.2ヶ月, p=0.0096)。
・T4の腫瘍(HR 3.78, p=0.010)、治療前の食道狭窄(HR 2.60, p=0.038)が食道の瘻孔形成のリスク因子であった。
・食道の瘻孔形成がみられた患者群において、保存的治療のみが行われた患者と比較して、修復術またはステント留置術が行われた患者で生存成績が良好な傾向がみられた(生存期間の中央値:5.9ヶ月 vs. 0.9ヶ月, p=0.058)。

<結論>
・食道扁平上皮がん(ESCC)に対し強度変調放射線治療(IMRT)を用いた根治目的の同時化学放射線療法(CCRT)が施行された患者において、T4腫瘍および治療前の食道狭窄が食道の瘻孔形成のリスク因子であった。
・食道穿孔が認められた患者において、修復術やステント留置が行われた患者では生存成績が良好な傾向がみられた。

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