ニューヨーク州司法試験の受験記⑤ 【MPT対策】

1 はじめに

本記事は以下の記事の一部という位置づけです。まずは以下の記事を読むことをお勧めします。
ニューヨーク州司法試験の受験記①【目次】

2 MPT対策

どんな試験か

  • MPTは法律の知識が一切不要な、事務処理能力を図る論述式試験です。全体の中での配点の比率は20%です。合計で2問あり、試験時間は180分です(1問当たり90分)。15~20頁の問題文を読んだ上で解答を作成します。

  • 問題文は、①上司からの指示文書、②事実パート(File)、③法律パート(Library)に分かれています。①には、解答として作成すべき文書の形式と内容が書かれています(例:会社のGeneral Counsel用に、Aという争点での裁判の勝ち目を検討したMemorandumを作成せよ。)。②には、当事者の陳述書など、解答に必要な事実を散りばめた文書がいくつか含まれています(不要な事実も混じっています。)。③には、架空の国の架空の法令や判例が含まれています。ざっくりと言えば、③から関係する規範を抽出し、②から関係する事実を拾って規範に当てはめて評価を加え、①で指示された形式の文書を作成する試験です。

  • MPTは知識では差がつかないためか、MEE・MBEと比べて時間配分が非常にシビアに設定されています。英語を読み書きするスピードが大きく影響するため、日本人と米国人との差が最も大きく出てしまう試験でもあります。このような試験の傾向から、MPTは対策をしても結果に結びつきにくいという印象があり、全体に占める配点が20%と比較的小さいことも相まって、ほとんど対策をしない日本人受験者もいるようです。

  • 確かにMBEとMEEに比べて優先度が低いことは間違いないです。しかし、筆者は、以下で述べるとおりアウトプットの練習をしておくことが得点に結びつくと考えます。

何が得点に結びつくか

  • MPTでは解答に必要な法令・判例と事実は全て問題文に記載されており、知識では差が付きません。以下の点で差がつくと考えます。

    1. 上司から指示された形式と内容を守っているか

    2. IRACを守っているか

    3. 法律パートから関係する規範を抽出できているか

    4. 事実パートから関係する事実をなるべくたくさん拾えているか

    5. 事実の当てはめの際に評価を加えているか

    6. 想定される反論も検討しているか(加点要素)

  • 上記1で指示される文書の形式には一定のパターンがあります(基本はLetter形式かMemorandum形式。その他のイレギュラーな形式もあり)。文書の形式を守るだけで点に結びつきますので、最低3~4問は過去問と解答例を見て、形式のパターンを頭に叩き込んでおきましょう。

  • 指定された形式やIRACを守ることは当然として、MPTで得点を稼ぐためには、上記4~6をなるべく厚く書くことが望ましいと考えます。その時間を確保するためには、最低3通は実際に答案を書く練習をし、問題文を読む順序など自分なりの問題への取り組み方を確立しておくことが重要と考えます。

筆者の問題への取り組み方

  • 何回かの問題演習を経て、筆者は以下の方法に落ち着きました。問題への取り組み方は人それぞれだと思いますので、あくまで参考としてお伝えします。

    1. まずは上司からの指示を読む。この時点で、解答文書の冒頭部分(題名、宛名、日付など)と目次を作ってしまう。 

    2. その他の資料(LibraryとFile)を読み込む。
      ※ 王道は法律パート(Library)から読むスタイルです。理由は、規範が先に分かった方が、その後の事実パートを読むときにどの事実がどの要件に当てはまるかを意識しながら読めるためです。ただし、事実パートから読んだ方が全体の雰囲気が掴めるなと感じたこともありました。問題にもよりますし、好みもあるかと思います。

    3. 資料を読みながら同時並行で、1で作った目次の該当する個所に、関係しそうな規範と事実を要約または引用にて抜き出していく。その際、後で問題文に戻る手間を減らすため出典も記載しておく(略記でOK)。 
      ※ 
      筆者はリモート受験であったため問題文もPC画面上に表示されていましたが、問題文から答案へのコピペはできない仕様でした。したがって、面倒ですが規範や事実を自分で再度打ち込む必要があります。なお、自分の答案内の記述のコピペはできます。
       初めて資料を読むときには、問題文に出てくる規範や事実が、上記1で作成した目次のどこに当てはまるのかがわからないときがあると思います。そうだとしても解答に使えそうだなと思ったら、どこでもいいのでとりあえず抜き出しておくか、ハイライトしておくべきです。後で問題文に戻る時間を減らすことができます。

    4. 資料を読み終えたら(30分が目標)、書きやすそうな項目から答案を書いていく(3で抜き出した部分の行間を埋めていくような作業)。
      ※ Barbriでは問題の読み込みと答案構成に45分、解答作成に45分が目安と教えられますが、個人的には答案構成をあれこれと考えるより、書きながら考える方が分量が書け、考えもまとまる印象です。 事実をどこで使うかは最初読んだときは分からないことが多いのですが、考えても結局結論が出ないことが多かったです。とりあえず書けそうなところから答案を書いてしまい、余った時間で使わなかった事実をどこで使うかを検討する方が無駄が少ないと思います。

    5. 答案構成の時間を削って余った時間を、追加の事実を拾う、よくわからない論点の検討、事実の評価、想定される反論の検討に費やす。

    6. 解答では常にIRACを意識する。
      ※ ConclusionはApplicationと多少重複気味でもよいと思います。重複する部分はコピペ機能を活用しましょう(前記のとおり自分の答案内でのコピペは可能)。

いつ勉強を開始すべきか

  • MPT対策は軽視されているため、本試験の1週間前に対策を始める受験者もいるようですが、筆者は遅くとも7月上旬には対策を始めるべきと考えます。理由は早めに答案を書く練習をしておいた方がよいからです。

筆者がとったインプット

  • 知識は問われないので基本的にインプットは不要です。

  • 筆者は、導入として巷の噂で比較的評判のよかったBarbriのビデオ講義を視聴しました。講義時間は約4時間ですが、苦痛であったため1.5倍速で見ました。問題文を読む順序など参考になった点もありました。 導入としては悪くないという程度の印象です。

筆者がとったアウトプット

  • Barbriの過去問集(Multistate Performance Test Workbook)から3問を選んで実際に答案を書きました。また、解答の形式のパターンに慣れるため、追加で2~3問を頭の中で答案構成しました。

  • 7月12日に初めて問題を解きました。word countが882 wordsでBarbriの採点によると80点満点中35点(somewhat below passingの評価)でした。その後本試験までに追加で2問を実際に書きました。Word countはいずれも1000 words弱であったと記憶しています。追加の2問は採点対象ではありませんでした。 

受験後の感想・得点

  • 本試験では筆がのり2問とも1100~1200 wordsほど書けた記憶です。問題文のこの事実を解答のここで使えばいいのだなということも概ね見えた感じがあり、手応えも比較的良かったです。問題との相性もあるため、運の要素もあるかと思います。

  • 開示された得点は、MEE・MPTの合計で170.5点(Scaled Score)でした。予想よりも高得点でした。合格者にはMEEとMPTの得点の内訳が開示されませんので、MPTの点がどこまでよかったのかは分かりません。もっとも手応えはよかったので、MPTは比較的よくできたのではないかと考えています。 

  • 実際に3問ほど答案を書く練習をして、自分なりの問題への取り組み方を確立しておいたことが字数と得点に繋がったように思います。おそらく700~800 wordsでも筋を外していなければ必要最低限の点はとれますが、事実の評価などでも点を稼ぎたければ1000 words以上は書けるようになっておくことが望ましいと感じます。

3 おわりに

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