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葛藤

私は彼女にその話を続けるか、別の話に切り替えるか迷っていた。

実はこういうことだ

内定者、いわゆる「勝ち組」の飲み会で知り合った2人。
彼女から声をかけられて抜け出してきた。

正直、胸が高鳴っている
今まで飲み会を女性と抜け出すなんて経験、したことないからだ。
ましてや月夜に照らされる彼女はどこから見ても美しい。


しかし、僕は先程受けた衝撃を隠せない。
夫がいるとは、どういうことか。
戸惑いが滲む。


彼女には終電がある。恥ずかしくてケータイで時間を確認できないが、もしかしたらもう、10分も居られないかもしれない。

話を聞けば彼女の真意が分かるかもしれない。
なぜ僕に声をかけたのか。
なぜ夫がいるのに、男を誘っているのか。事情を知りたい。もしかしたらまた会えるのかもしれない。
彼女がいない僕にはまたとないチャンスだ。

別の話に切り替えるとどうだろう。
その場の話は盛り上がるかもしれないが、ただのその場繋ぎの会話で再会は見込めない。



また、会いたい。
そんなことあるのか。



近くの高架線で電車が通り過ぎる。


彼女が腕時計を見た


決断の時だ。



「なんで僕だったの?」


「夫と顔が似てたから。」



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