おじさんに金融リテラシー教育を
2019年6月、のちに「老後2000万円問題」で話題となる金融庁の報告書が発表された。金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)だ。
このニュースが報じられると、 ”いまさら、老後のためには2000万円も必要だ、などと言われて貯めて既に老後を迎えている自分はどうすればいいんだ”、とか”公的年金で暮らせるのではなかったのか? 百年安心とはどういう意味だったのか」等といった国民の不満が爆発した。
こうした声に忖度した財務大臣は「報告書の受け取り拒否」という前代未聞の対応をするに至ったため、火に油を注ぐ形で大きなニュースとなった。
今日お話ししたいのは、言いつくされたこの報告書の正当性のことではなく、報告書に記載されていた次の一文についてである。
「退職金を受け取った後に関するアンケート調査によれば、4人に1人が
投資に振り向けており、また、投資に振り向けた人の半数弱は退職金の1
~3割を投資に回している。
他方で、退職金の給付額を把握した時期について、約3割が「退職金を
受け取るまで知らなかった」、約2割が「定年退職半年以内」と回答して
いる。」
つまり、自分が退職金をいくらもらえるか、半数の人がいざ至急される時、良くて半年前まで知らなかったという衝撃的な内容である。
報告書が用いた数値は、「フィデリティ退職・投資教育研究所、高齢者の金融リテラシー調査(2018年12月実施)」なので、5年程前の数値ではあるが、現状も大して変わりはないと思われる。
人生の中で、1000万円以上ものお金を一時に受け取れることなどまずないだろう。
にも関わらず、どれぐらい支給されるかを退職まで知らないとすれば、老後の資産形成や資金計画を、等と呼び掛けても画餅でしかない。
岸田政権は、「金融資産倍増計画」を策定し、学校教育の中でも投資教育を行っていくと言っているようであるが、まず必要なのは、まもなく老後を迎える世代への教育である。
働き世代を終えようとしている人たちは、自分の退職金の額も、もしかしたら公的年金の手取り額もよく把握していない人たちが過半を占めているのではないかと危惧される。
ちなみに最近定年を迎えた小筆がどうであったかというと、金融機関に勤めながら、退職金の額を知ったのは55歳であり、年金の手取り額はつい最近し、こんなに少ないのか、と愕然としたばかりである。
だから実感として言おう、「おじさんに金融リテラシー教育を!!」
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