エッセイ漫画を描いてる時思い出すこと
数年前、祖母が認知症になった。
祖母がどんな人か一言で言うと、デリカシーのない人だ。マジで。
週末の遠足が雨だと知り落ち込む幼稚園児の母に「週末雨だって、残念だね行けないね。」となんども追い討ちをかけたり
(普通は小さい子供に対して前向きな言葉で慰めるでしょ)
お気に入りの服を「こっちの方が可愛い」と勝手に切ってアレンジしてしまうような感じで、
相手の気持ちを一つも考えてないような言動をする人だった。
そんな祖母のことが私は結構好きだった。
デリカシーのカケラもなく、失礼なことを平気で言う。話も全然通じなくて困ることもある。
だけど人を故意に傷つけて言ってる人じゃないとわかっていたし、想像しない言動が自分に襲いかかるのがスリル満点なジェットコースターに乗っているみたいで好きだった。
そんな風に祖母とのコミュニケーションを楽しんでた私だけれど、唯一腹が立ったことがある。
それは私が高校生の夏休み、祖母と楽しく話していた時だった。なんの話をしていたかはあまり覚えていないのだけど、
祖母がふと一言。
「あんたはいいよね、幸せで。悩みなんてなさそう。」
悪意のないまっさらな一言だけに、やけに自分の心に刺さった。
エッ???
待って、おばあちゃん、そんなこと言っちゃう?
おいおい、十数年しか生きてない高校生の私でもわかったぜ。
確かに私はヘラヘラしてっけどさ!そう思うかもしれないけどさ!
それは勝手な偏見だ。悩みのない人間なんてこの世に存在しないじゃないか。
孫を理解しない祖母の一言に結構腹たった。
だけど当時の私は何も言い返せない。
上手く怒れなかったし、何より言葉にできなかった。
とりあえず笑顔で乗り切った。笑顔の下にはちゃめちゃに悔しい顔を秘めて。
エッセイ漫画を描いてる時、あの時の作り笑いを思い出す。
祖母に「私だってこんな悩み抱えてるんじゃコラ」ってちょっと伝えたかったのだ。ドヤ顔したかったのだ。
だけどエッセイ漫画がバズったタイミングは、もう既に遅かった。
祖母は認知症になり、私のことも忘れてしまったようだ。
ちょっと寂しい。
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