雀荘業界はクリーンな産業となれるのか

先日、カジノ研究家の木曽崇さんが以下のようなツイートをされていた。

麻雀店、いわゆる雀荘において違法行為が横行しているにも関わらず、政治的にアンタッチャブルになっているというご指摘だ。本件については、筆者も同様の問題意識を持っている。
本稿では雀荘業界に具体的にどのような問題があり、どうして政治的にタブー化しているのか、清浄化は可能なのかという点について考察する。
なお、筆者は大学生の時分に麻雀にドハマリし、客やアルバイトとして雀荘に入り浸り、以降20年近く趣味として雀荘通いを続けてきたおっさんである。業界についてそこそこ詳しいつもりではいるが、本職ではないので、知識が不足するところもあるかもしれない。この点はお含みおきいただきたい。
また、本稿は雀荘の業務に対する予備知識が十分でない方も念頭においた記事であるため、詳しい方から見れば説明過多な部分もあると思うが、この点はご容赦願いたい。

本題に入る前に、まずは雀荘がどのような産業なのかという点からおさらいしよう。詳しい方は読み飛ばしていただいて構わない。
雀荘は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法)上で、パチンコ店などと並んで「設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として俗に4号営業と呼ばれる風俗営業の一類型として取り扱われており、遊戯料金、営業時間などが事細かに規制されている。
一般的な雀荘は営業形態として、フリー雀荘とセット雀荘の2種類に区分でき、実際には2種類を兼ねている店が多い。
セット雀荘のサービスは比較的単純である。利用者は麻雀を遊ぶ仲間と連れ立って雀荘に行き、施設内の雀卓を借りて遊ぶことになる。雀荘側は卓の貸し出しやドリンク、おしぼりなどの提供のサービスの対価として一時間あたりいくらの形で利用料を徴収する。ここで提供されている主要なサービスは雀卓の貸出しやドリンク、おしぼりの提供などによるプレイ環境の提供である(以下、雀卓の貸出と総称)。
一方で、フリー雀荘のサービスはもう少し複雑だ。フリー雀荘の利用者は雀荘に行くと、同じく雀荘を訪れた利用者同士で、施設内の雀卓を用いて麻雀を楽しむことになる。ここで雀荘側は雀卓の貸出等の対価として、一ゲームあたりいくらの形でゲーム代を徴収する。
これがフリー雀荘の基本サービスだ。ここでは雀卓の貸出に加えて利用者間のマッチングサービスが提供されている。
また、麻雀は一般的に4人で遊ぶゲームなので、施設内の客数が4の倍数とならない場合、あぶれる客が出てきてしまう。このとき雀荘側は従業員を穴埋め要員として遊戯に参加させ、ゲームを成立させることになる。この穴埋め要員の提供もフリー雀荘の提供する重要なサービスの一つである。
加えて、麻雀はルールが多様であり、将棋や囲碁のようにルールがかっちり固まっていない。雀荘の利用者は店舗ごとのハウスルールに従って麻雀をプレイし、雀荘側はこのルールを利用者に守らせ、ときにトラブルの裁定などを行うことになる。なお、このハウスルールは雀荘の重要な差別化要素となっており、各店は様々な工夫を凝らしている。また、ハウスルールにはレートも含まれており、大抵の雀荘はオンレート、すなわち麻雀賭博が行われている。
まとめると、フリー雀荘で提供されている主だったサービスは以下の4つといえるだろう。
① 雀卓の貸出
② 麻雀を遊びたい利用者同士のマッチング
③ ゲームを成立させるための穴埋め要員の提供
④ ハウスルールの設定と遵守の担保
以降の議論は特に断りのない限り、オンレートのフリー雀荘を念頭においたものとなる点、お含みおきいただきたい。

それでは雀荘において横行する様々な違法行為とはどのようなものか、筆者が思いついたものは主に以下の6つだ。
① 賭博
② 深夜営業
③ 遊戯料金
④ 接待行為
⑤ 従業員の処遇
⑥    無許可営業
以下、それぞれについて概説する。

雀荘における法令違反の筆頭はもちろん、賭博だ。
賭博とは偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為を指し、言うまでもなく本邦において賭博は違法行為である。
なお、競馬などの公営ギャンブルや宝くじなどは、賭博ではあるが法律により違法性が阻却されており、合法である。また、争う財物が「一時の娯楽に供する」範囲にとどまっていれば、賭博罪の適用除外となるが、金銭はどんなに少額であっても「一時の娯楽に供する」範囲には含まれないとされる。従って、どのような低レートであっても、雀荘内部で行われている麻雀賭博は明確な違法行為である。
余談だが、同じ風営法上の4号営業でもパチンコ店などは、雀荘と法的な取り扱いが決定的に異なる点がある。パチンコ店などは遊技の結果に対して景品を提供することが許されているのに対して、雀荘は許されていないという点だ。この遊戯の結果に対する景品提供という賭博行為への法的な容認がパチンコ店等が有する既得権の本質であり、三店方式のおかげでパチンコ店は賭博罪の適用を免れているといった類の言説はだいたいにおいてデタラメである。
それでは、オンレートの麻雀はどんなに低レートでも違法という点はよいとして、実際の摘発の状況がどうなっているかというと、これがまたややこしい。
一般的には、特殊な事情がない限り、雀荘における麻雀賭博は1000点100円、俗にピンと呼ばれるレート以下であれば、警察による摘発の対象とはなっていない。冒頭の木曽さんのツイートにも書かれているが、違法かつ悪質性が高いとみなされ摘発の対象となる営業形態の雀荘と、違法だけど謎の力によってお目溢しとなる雀荘が混在しているのだ。
実際問題、巷のフリー雀荘のマジョリティ的なルールで1000点100円のレートで遊んだ場合、1ゲームあたり40分程度に対して、動くお金は±1万円にも満たない。公営ギャンブルやパチンコ店などと比較すると、時間あたりの金銭の動きはかなり少額だ。この程度であれば、賭博の弊害とされる「怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」リスクも限定的ということで、お目溢しされてきたのだと考えられる。
しかし、ここで一つ疑問が出てくる。麻雀に詳しい人なら気が付いたかもしれないが、麻雀のルール設定は多様であり、ピンのレートで動く金銭などたかが知れているというのは、あらゆるルールに適用できる議論ではない。
その気になれば1000点100円の枠内でも、1ゲームで動くお金をどこまでも増やしていくことは可能である。例えば、ゲーム終了時点で自分よりも着順が上の人全員に対して1万点の懸賞(ウマ)を支払う(すなわち1着+30000点、2着+10000点、3着-10000点、4着-30000点となる)ルールが巷の麻雀では広く採用されているが、このウマを大きくすれば、実質のレートは跳ね上がる。
多くの雀荘においては、ウマの大きさ、1ゲームのスパンを短縮する、特定のあがりに対してご祝儀をつけるなどあの手この手で実質的なレート引き上げが行われているのが実態である。昨今の歌舞伎町などでは相当にルールが過激化しており、1ゲーム15分程度で優に±2万円以上動くようなレートのお店も現れた。
さらにこれらの議論は一般的な4人麻雀を前提としたものだが、3人麻雀や特殊ルールの麻雀なども射程に含めると1000点100円などという言葉だけではもはや情報量がないに等しいだろう。
それでも今のところ警察は1000点100円以内のレートを謳っていれば摘発の対象とはしていないように見える。しかし、昨今の一部雀荘におけるルールの過激化を見るに、このような状況がいつまで続くのかという点について筆者は危ういものを感じざるを得ない。

次は深夜営業の問題だ。
風営法では規制下にある様々な業種の営業時間に対する定めがあり、同じく風営法規制下のゲームセンター、パチンコ店などは大半の店で営業時間の規制は厳格に守られている。
しかし、雀荘においては、風営法上は禁止されている深夜営業が、かなり多くの店舗で常態化している。
毎日営業している店、お客さんがいる限りは開け続ける店、休日前日のみ深夜営業など、一口に深夜営業といっても形態は様々だが、いずれにせよ他の業種でやったら即座に警察の指導は免れない。
一応、雀荘側も深夜になると看板のライトを消したり、カーテンを閉めるなどの対応はしているが、もちろん、警察がそんな子供だましに気が付かないはずもない。実態を理解した上でお目溢しされているというのが実情だ。
負けた客が腹いせに深夜営業でチクリを入れて、雀荘が営業停止になったなどという話も聞く。警察もタレコミがあれば対応しないわけにもいかないのだ。
実際問題として、雀荘の深夜営業に対する顧客のニーズは強く、雀荘側としても深夜帯の売上も込みで経営を成り立たせているのが実情だ。
深夜営業をしていない雀荘も健全営業志向というよりは、立地などの関係で深夜に店を開けても客が来ないから閉めているに過ぎないことが多い。

次に遊戯料金の規制について論じる。
風営法上、雀荘の遊戯料金は、1卓あたり一時間につき2400円+消費税が上限とされている。
それでは実態がどうかというと、半荘と呼ばれる1ゲームあたり税込みで2500円(1人600円に加えてトップ者から+100円)くらいが多くの店で設定される遊戯料金だ。1半荘は平均で40分程度なので、実際の1卓辺りの売上は、1時間あたり4000円近くになる。常識的に考えれば風営法違反だ。
しかし、実際にこのような料金体系の雀荘に対して、摘発や指導がなされることは皆無と言ってよい。一方で、私の知る限り、1ゲームあたり2600円を超えるゲーム代を徴収する雀荘は存在しない。見る限り、1半荘=1時間の読み替えを前提に規制が運用されているようだ。
また、半荘の半分のスパンで1ゲームが終了となる東風戦の店舗は、ほぼ例外なく、条件付き東南戦などと謳い、実質的には東風戦であるにも関わらず、極稀に半荘フルで戦うルールを設定している。形だけでも半荘勝負の体を取り、1半荘=1時間の読み替えを適用することで、遊戯料金の規制はクリアしていると主張したいのだろう。
1000点100円と言っておけば実質のレートが高くても摘発を免れるのに近い状況がここにある。
全自動卓の普及以前、手積みで麻雀をしていた時代は恐らく1半荘あたり1時間程度かかっていたのだろう。その時代の1半荘=1時間という読み替えが全自動卓の普及によりゲーム時間が短縮した現代まで生き残った結果として、このような歪な規制の運用に繋がったと筆者は推測している。
本件については、雀荘側にも言い分はある。はっきり言えば普通の雀荘は1卓辺り1時間2400円でやっていけるわけがないのだ。
雀卓のサイズは枠も含めて約1m四方、これを椅子に座った4人が囲んで座ることになる。店舗内での移動の空間なども加味すれば、1卓あたり2.5m四方、約2坪くらいのスペースは必要だ。
繁華街に店舗を構え、約2坪のスペースで1時間2400円が売上の上限、しかもフル稼働など見込むべくもないという状況で商売として成立するわけがない。
パチンコ店の1玉あたり4円上限等とは異なり、麻雀店の遊戯料金と遊戯の射幸性には、本質的には何の関係もない。
規制の意義自体が不明確であり、雀荘の遊戯料金については、市場原理に任せればよいのではないかというのが筆者の見解である。

次に接待の問題について論じる。
風営法上の「接待」とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」を指す。
お酒や食事の提供を超える会話などを通じたサービスをイメージしていただければ良い。
実は風営法上、雀荘において「接待」は禁止とされている。しかし、従業員が穴埋め要因として卓につく(業界用語で「本走」という)際に、接待をしないというのはサービスの実態としてはちょっと考えにくい。何せお客さんと一緒に麻雀で遊んでいるのだ。むしろ、質の高い接待ができる従業員をいかに揃えるかが雀荘の競争力の源泉であったりする。
しかし、後述するとおり、従業員の本走には、接待以前の大問題があるため、接待の問題まで議論か進むのをほとんど見たことがないというのが実情である。

次に従業員の処遇について論じる。
最大の問題は本走だ。なんと本走時に従業員はゲーム代を取られる上にお客様と全く同じレートでギャンブルに参加するのだ。これは知らない人間から見れば驚愕の光景だろう。
多くの店では、従業員の本走に対して、ゲーム代の一部を返還する、いわゆる「バック」の仕組みはあるが、その金額はまちまちであり、全額返還されるフルバックの店はめったにない。
雀荘の常勤従業員ともなれば、月あたり300ゲームはザラであり、ゲーム代の半分が返還されるハーフバックでも月あたり数万円の自己負担になる。1ゲームが通常の半荘の半分で終わる東風戦の店に至ってはハーフバックでも常勤従業員は月あたり10万円以上の自己負担だ。多くの雀荘にとって従業員は単なる労働力ではなく、上客でもあるのだ。
また、ギャンブルをすれば当然、勝つ日もあれば負ける日もある。負けが込めばそもそも給料自体が残らない。店のレートによっては一晩で10万円負けることもあるのだ。給料が足りずに店に借金をして、その借金を抱えたまま従業員が音信不通になるなどという話は業界では日常茶飯事だ。
いうまでもないが、従業員にサービスや製品を強制的に買い取らせるのは給与の現物支給とみなされ、労働基準法違反である。従業員に業務として自腹で賭博をさせる行為に至っては、あまりにブッ飛び過ぎていて、もはや何の法令に違反しているのかすら筆者にはわからないが、違法行為であることは間違いないだろう。
また、これは雀荘に限らぬ小規模事業者あるあるかもしれないが、従業員の夜勤や1日あたり8時間を超えるシフトに対して労働基準法で定められる割増賃金をきちんと払っている雀荘はかなり少ない。
それでは、雀荘の従業員は搾取をされているのかというと、元アルバイトの目線で見ても、これはなかなか難しい問題だ。
そもそも従業員は他に働き口などいくらでもあるのに敢えて雀荘で働くことを選んでいる。当然、処遇についても納得ずくだ。
むしろ、本走がしたくて雀荘で働いている者が主流に近い。何せ麻雀で遊んでいれば時給が出るのだ。こんなに楽で、楽しい仕事はなかなかない。
私自身も客として店に通って麻雀を打つくらいなら、時給とバックをもらいながら麻雀をした方が良いというのがアルバイトを始めたときの主要なモチベーションだった。
もちろん、仕事として麻雀をすれば客打ちにはない、それなりの苦労はあるのだが、それでも普通の仕事よりはよほどこちらの方が良いという者は少なくない。
本走などけしからんと言って一律禁止にされても当の従業員も幸せにはならないだろう。ゲームバックおよび夜勤や超過勤務の割増賃金は何とかして欲しい、本走は望むところくらいが従業員のマジョリティだろうか。
更に言えば、本走はフリー雀荘という業を支えるコアサービスそのものなのだ。都合よく客数が4の倍数になどそうそうならないので、本走要員なしでは、せっかくお客様に来ていただいても、いつまでたっても麻雀が打てないという事態が続発する。
店内に数卓しかない小規模店においては客の出入りが少ないのでなおさらだ。これではお客様もバカバカしいので雀荘に足を運ばなくなってしまう。相当な客数を集められる大規模店を除けば、本走なしの雀荘は成立し得ないと言っても過言ではない。
それでは店側が従業員の勝ち負けを負担すれば問題が解決するかというと、これも難しい。従業員が客と結託してわざと負ける恐れがあるし、そこまでしなくても、無責任な打ち方で負けを嵩ませる従業員が出てくることは避けられない。これでは経営が成り立たない。

最後は無許可営業の議論になる。
これは本稿の内容からすれば、やや番外的な位置づけであり、主として麻雀教室を謳うノーレートの雀荘で起きている問題だ。
表通りに看板を出して営業しているオンレートの店で無許可営業というケースは昨今だと皆無に近いだろう。
典型的なのは、主にお爺ちゃんお婆ちゃんを相手に麻雀教室を開講し、お客さんは施設に設置された雀卓で遊び、教室で習ったことを実践する。お店はお客さんからゲーム代を徴収するといった営業形態だ(基本的にノーレート)。これを雀荘としての営業許可を取らずに行えば風営法違反である。こんな業でさして儲かるはずもなく、運営者の大半は麻雀の普及やお年寄りの福祉に対する熱意から営んでいるのだろう。その意識は素晴らしいと思うので、もうひと頑張りして、しかるべき営業許可を取ってやっていただきたいところだ。

ここまで論じてきた問題については、いずれも外部から見ればどうしてこんなことがまかり通るのか理解不能だろうし、何なら関係者も本当のところはよくわかっていないのかもしれない。
風営法などの法律が成立するより以前から存在する雀荘業とそこに携わる人々の既得権が尊重された結果、違法行為をお目溢しせざるを得なくなったというのが現状と思われる。ソープランドなどの業界でも見られる現象である。
また、業者の既得権を尊重するにあたって、同じ4号営業のパチンコ店などは法律で景品の提供を合法化したのに対して、雀荘は法律の裏付けなく、行政サイドで違法行為を見て見ぬふりをするという対応を取ったことが問題をさらに拗れさせた。
例えば、前述の雀荘従業員の労働者保護の問題を論じようにも、そもそも賭博や深夜営業は違法でしょというところで話が止まってしまい、公の場で議論できなくなってしまうのだ。
政治や行政も、業界に対する国民的関心がない上に、過去の不作為に対する負い目があるからなのか、雀荘業界に対しては意図して無関心を貫いているように見える。
更に、雀荘は簡単に開業できる参入障壁の低い業なので、ギリギリの収益で食いつなぐ、個人レベルの小規模事業者が多いのも問題の解決を難しくしている。現状では、規制の運用を厳しくすれば、路頭に迷う人が多数出るのは避けられない。
これが雀荘業界の政治的タブー化の実態と筆者は考える。

それでは、以上の議論を踏まえ、オンレートのフリー雀荘が法令違反を犯さずに済むようロビー活動を通じて法改正し、清浄化する道があるか考えてみよう。
以下は私の妄想である。
まず、麻雀賭博の違法性を阻却しなければならない。例えば、公営競馬は馬の改良増殖、その他畜産の振興に寄与、地方財政の改善を名目に違法性が阻却されている。これにならい、地方財政の改善を名目として、ゲーム代の一部を自治体に納めることで違法性を阻却することとする。
通常では許されない賭博の開帳が業として容認されるためには、それなりに厳しい規制に服する必要があるだろう。
射幸性を抑制する観点から、レートは勝ち負けが1時間あたり±10000円以内くらいが上限に設定される。東南戦でピンの1-3くらいのイメージだ。東風戦ならレートは1000点50円までだ。
他の風俗営業との公平性の観点からも深夜営業は厳禁。
ゲーム代は上記の違法性阻却のために一部を地方自治体に上納する必要性を考えると、現状よりもいくらか値上がりすることになるか。一時間2400円の規制は廃止した上で、東南戦の場合、現状の相場感より1人あたり200円ほど高い、1ゲーム3500円を想定値とする。
接待の回避および労働者保護の観点から、従業員による本走は禁止となり、客が4の倍数人いない場合は基本的に麻雀は打てなくなる。

私が妄想する、清浄化されたオンレートのフリー雀荘とはこんな感じだ。
実現すれば政治的な偉業と言っても過言ではない。
しかし、現状のフリー雀荘と比較して、あまりにも魅力に乏しい。
このような前提だとフリー雀荘という業態はほとんど絶滅することだろう。雀荘といえばほぼセット雀荘のみとなり、フリー雀荘は繁華街の大型店だけが辛うじて生き残る程度だろうか。
雀荘の大半が登録する、ポータルサイト麻雀王国の登録店舗が約6000店であることを踏まえると、雀荘産業に従事する人間は恐らく数万人規模であり、そのかなりの割合はフリー雀荘で働いている。
多大な政治的なエネルギーを行使して法改正した結果、数万人が路頭に迷うというのではあまりに救いがなさすぎる。
このようなリスクが容易に想像できることから、当面は業界の清浄化について筆者はかなり悲観的である。少なくとも事業者、行政などの業界関係者にとっては現状維持が最も居心地が良いのは間違いないだろう。

個人的には、公営ギャンブルや富くじ、高レバレッジの先物投資など、賭博やそれに類する射幸性を有した取引が青天井のレートで、広く、合法的に行われているのを見ると、本当のところ国民の皆様は、賭博が「怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」ことを大して心配などしていないのではないか、それらと比較すれば、雀荘で行われる賭博など児戯も同然ではないかなどと少々皮肉な思いにとらわれることがある。
当面は状況を変えるのが難しいとしても、いつの日にか賭博や麻雀に対する社会の潮目が変わり、業界関係者およびユーザーにとって納得感のある形で、雀荘の清浄化が行われることを、麻雀および雀荘という空間を愛する者の一人として心より祈念するものである。

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