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Great investorになるために必要な7つの特性

2007年に、ヘッジファンドのひとつであるSellers CapitalのMark Sellersがハーバード大学でMBAを学ぶ学生へスピーチを行いました。タイトルは「So You Want To Be The Next Warren Buffett? How's Your Writing?」で、他の投資家よりも優れた成果を生み出すGreat investorたらしめるのかという内容です。

Richard Chuさんが共有していたもので、本文はこちらから読めます。以下、自分の備忘録として要旨を残しておきます。
So You Want To Be The Next Warren Buffett? How's Your Writing?

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今日ここにいる人たちは、みな高いIQを持ち、勤勉であり、米国でもトップのビジネススクールでMBAを取得しようとしている。しかし、このうち今後Great investorになりうる人はたかだか2%程度であろう。

どんなに高いIQを持とうと、どんなに多くの本や雑誌、新聞を読もうと、どんな経験を積もうとほとんど関係しない。多くの人はキャリアの中で20%や25%の複利※を成し遂げることができない。つまり、あなたにはGreat investorになれる可能性はほとんどないということだ。

10歳やそこらで、それがあなたの脳に組み込まれていないと、生涯20%福利は達成できないだろう。先天性のものか、後天性のものかわからないが、10代までにそれを得られていない限りは得ることはできない。ハーバード大学へ行くことでも、投資に関する本を読むことでも、長年の経験でもそれを変えることはできない。これらのことはGreat investorになるために必要なことだろうが、すべて誰にでも真似できるものであり、それだけでは不十分である。

例えば、企業における競合戦略を考えてみよう。バフェットの言う”economic moat”は、どのような時にあると言えるのだろう。まずテクノロジーはいずれ真似されるものであるから、短命であり、それ単体ではモートを生み出さない。強いマネジメントチームや目を引く広告キャンペーン、流行などもあるが、時間が経てば変わるものであり、競合に真似されることもあり、一時的な強みでしかないだろう。

”economic moat”は構造的なものである。1990年代の Southwest Airlinesのようなものだ。それは企業文化や全社員に浸透しており、みなSouthwestがどのように行っているか分かっているにも関わらず、誰も真似することができなかったのだ。

私の見立てでは、複製できず長期にわたる”economic moat”は4つの点から生まれる。一つはウォルマートやホームデポなどに見られる"economies of scale and scope(集約・規模拡大によるスケールメリットを活かした企業活動)”、2つ目にマスターカードやビザなどが持つ”network effect”、3つ目にDisneyやNikeなどが保有する特許や商標などの”intellectual property rights(知的財産権)”、最後にMicrosoftに代表される”high customer swiching costs(高いスイッチングコスト)”である。

これらの競合関係における4つの強みは簡単には毀損されず、簡単に真似をされない。Great investorもまた、同じようにその他大勢の投資家に負けないモートを構築しなくてはならないのだ。そうでなければ、月並みで終わるだろう。

投資家のモートは本や雑誌、新聞をいくら読もうが生まれない。もちろん読書は非常に重要ではあるが、誰でもできることだ。ある程度の知識が身につけば、それ以上読んだところで得られるものは減っていく。実際にニュースを読みすぎてしまっては、新聞を売りたいがために書かれたバカバカしい情報を信じ始めるようになり、パフォーマンスの低下につながるだろう。

また、トップの大学のMBAやCFA(証券アナリスト資格)、博士、CPA(公認会計士)、その他多くの学位もGreat investorになるためには役に立たない。MBAを取得することは、市場を正確に分析し、ミスを減らす点では役立つだろうが、Great investorのなり方は教えてくれない。

経験もまた、過剰評価されている。もちろん非常に大事なものであるが、競合関係における強みではない。優れた投資マネージャーみなが、60〜80代で最も良い成果を生み出しているかというと、そうではないことを私たちは知っている。ある程度の経験は投資を行うに当たって必要だろうが、投資家のモートを生み出すものははない。

では何が投資家のモートを生み出すのだろう。投資家のモートもまた、企業におけるモートと同じく構造的なものである。それはあなたの脳に組み込まれている心理であり、あなたの一部である。これに関して本を読んだとしても変えることができないものである。

私の見立てでは、Great investorが共通して持つ、大人になってしまえば学ぶことのできない本当の強みには、少なくとも7つの特性がある。

1つ目は人々がパニックに陥っているときに買い、人々が大喜びしているときに売れる能力である。誰もがこれを自分でもできると考えているが、1987年10月19日に大暴落が来たときには、ほとんど誰も買い向かえなかった。連日のように上昇する1999年の相場では、多くの人は売ることができなかった。バフェットが言う”institutional imperative(横並びの強制力)”により、みな過剰に買われていることを理解していながら売ることができなかったのだ。

2つ目は競争や勝つことに貪欲であることだ。Great investorは投資を楽しむのではなく、それに熱中している。寝ても覚めても、調べている銘柄や売ることを考えている銘柄のことを、あるいはポートフォリオのリスクとそれを緩和させる方法を考えている。

3つ目は積極的に過去の間違いから学ぶことだ。これは簡単なことではないが、Great investorは自らのミスから学ぶという強い願望を持っており、再び同じミスを繰り返すことがない。

4つ目は常識にもとづく生まれ持ったリスク感覚だ。私は最善のリスク管理は常識であると考えるが、多くの人はコンピューターがそう言うからと手放してしまうのだ。

5つ目は確固たる信念だ。Great investorは批判されようとも、自分の信念を譲らない。バフェットはテクノロジー銘柄を無視していると批判されようともドットコムバブルには決して手を出さなかった。

6つ目は左脳だけではなく右脳も使うことだ。ビジネススクールでは信じられないほど賢い人たちと多く出会った。しかし、金融を専攻している彼らは優れたものを書くことも、問題の独創的な見方を思いつくことも苦労していた。私は後に彼らが脳の片方だけを使っていることに気がついた。この世界で上手く生きていくためには十分であるが、大勢とは異なる考え方をする起業家的な投資家になるためには不十分である。一方で、右脳が支配的であれば、おそらく数学が嫌いだろうし、金融の世界で見かけることも少ない。私は、計算し論理的な投資論文を作成するという左脳の働きと、特定の状況を分析するのではなく一歩下がって全体像を描けるという右脳の働きのどちらも必要と考える。ユーモアと謙虚さと常識も。そして、私が最も重要だと信じるのは、良き物書きであるということだ。バフェットはビジネスの世界で最も優れた物書きの一人である。

最後に最も重要で、多くの人が持ち合わせていないも特性は、投資の思考プロセスを変えることなく、ボラティリティを生き抜く能力だ。多くの人は市場が下落している時に、損切りをせずに苦しい時間を過ごしたり、平均取得単価を下げたり資金を投入したりすることに苦労をしているのだ。長期的なより良いリターンにつながるとしても短期的な痛みを嫌がるのだ。わずかな投資家だけが高いリターンに必要なボラティリティを扱うことができる。人々は短期的なボラティリティをリスクと見なすが、これは合理的な見方ではない。短期的に株価が上下することは、パニックに陥り損失を確定しない限り、損失でもリスクでもない。しかし、多くの人はそのような見方を出来ず、パニックの本能的な反応が正常な脳の判断を止めてしまうのだ。

私はこれらの特性は、大人になってしまうと学べないと考える。そのときまでに、生涯を通じてGreat investorになれるかどうかの可能性はすでに決まっているのである。磨くことはできるが、脳神経の結合や子どもの頃の経験と関係しているため、一から発達させることは難しい。これら7つの特性は他の人に真似されないのだ。

※ウォーレン・バフェットは過去50年以上にわたり、年率20.5%というリターンを生み出している。ここで言う、Great investorは生涯にわたって20%の複利でリターンを生み出せる投資家である。

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