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いい議論をするために点と線を意識する

9月も終わり。気がつけばあんなに賑やかだった蝉の声も聞こえなくなり、すっかり涼しくなりました。

最近、社内外で人と話す機会が増えてきました。そんな折、議論やアイディエーションにおいて「点」と「線」を意識するようにしてみたところ、諸々の整理がしやすくなったと感じたので、その話を書きます。

「点」と「線」

ところで「点」と「線」はいろんなところで出てくるメタファーです。

「点」が「経験」を指すケースでは、Steve JobsのConnecting the dotsの話が有名です。こちらは「線」を最初から描くことはできず、過去を振り返って初めて見えるものだから、一つ一つの「点」を信じて大事にしようという話でした。

今回はその意味ではなく、議論における「点」と「線」話です。「点」は個別の問題や短期的な対策を指し、「線」はその長期的な状況や影響を指しています。

議論においては、個別の「点」の議論に終始してしまうと、早晩話が行き詰まりがちです。

たとえば、プロダクトのリリース方針についての議論をしているとします。その場に「Done is better than perfect」という発想の人と「神は細部に宿る」という発想の人がいた場合、その是非を主張する議論が起きると不幸なことが起きるのは想像に難しくありません。

「点」で見れば、どちらも間違ったことは言っていません。誰に聞いても、それは大事であるというでしょう。しかし利益相反の関係にあるこの二者を同時に満たす方針を立てることは困難を極めます。

このような場合、「線」に注目を向けることが役に立ちます。もし、組織やプロダクトが中長期的に目指していく先が「とにかく市場を広げて市場をリードする存在」ならリリースを重ねての試行錯誤することの比重が高まります。一方「信頼を積み重ねて確固たる地位を築く」であれば品質を高めることの比重が高まります。それぞれの「点」自体の是非ではなく、それぞれの「点」と組織やプロダクトが向かおうとしている「線」との整合性に着目することで、建設的な議論や結論を導き出すことができます。

また、「点」と「線」のどちらに注力するのかということ自体もトレードオフの関係になりがちです。たとえば、短期的なリターンの追求(点)と長期的な価値創造や競争優位性の確保(線)の関係がその典型です。この場合も「線」に注力することが重要であることを「イノベーションのジレンマ」などに見ることができます。

こちらの記事の例も分かりやすくてよかったです。

議論が行き詰まったときは「線」を探す

ということで、最近いろんな場面で「点」と「線」を意識してみています。そうすると、議論をしてて詰まったり悩んだときは、大体「点」の議論をしてしまっているという傾向が見えてきました。

そんな時は、目の前の議論が「点」の話なのか、「線」の話なのか、あるいは「線」はどこへ繋がっているのか、議論の参加者全員が「線」を認識できているのか、と見ていくと、抜け落ちている視点に気づくことができます。議論の中心にある具体的な問題(点)が、より大きな目標や背景(線)とどのように繋がっているのかを考えることで、長期的な影響や目的を再確認する機会が生まれます。そもそも、どこにも「線」が繋がっていないことを議論してしまっている場合もあります。

理想的には、議論に参加している全員が「線」を意識できる状態が望ましいと感じます。「線」の地図があれば、参加者それぞれが持つ「点」に対する認識も揃い、議論における判断のギャップが減ります。

ただ、「線」に関する議論をするには、自ずとその行き先である未来の「点」が必要となります。それがないままで「線」の話をするのは困難です。なので、組織のリーダーが未来を定めて共有する、はなるべく早くしたほうがいいですね。(自戒を込めて)

みんなが「線」を意識できるとスムーズ

ということで今回、最近思っていた「点」と「線」の話をざっと書いてみました。まとめてみると、

  • Howの議論に終始していたら、WhatやWhyとどう繋がるのか見よう

  • 現在の議論に終始していたら、未来や理想とどう繋がるのか見よう

  • 個人の話に終始していたら、組織や文化とどう繋がるのか見よう

といった「一歩下がって俯瞰して考えよう」という話と「みんなが持っている線の認識を揃えよう」という話の組み合わせに着地した気がします。

エンジニアのバックグラウンドを持つ我々、どうしても「点」を見てしまいがち、というかそこの価値が求められる仕事なので難しいところもあるのだけど、長期的には「線」の方が重要になってくるので、呼吸をするかのように両方を見れるようにしていきたいものです。

今回はそんな感じで。今月もお疲れ様でした!

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