見出し画像

#わたしたちの人生会議 優秀賞~特賞

では、引き続き「優秀賞」そして「特賞」を発表していきます!
力作ぞろいだった約100作品の中から選ばれた、4作品をぜひご覧ください。

※佳作はこちら


優秀賞①

「若いころ、死のうと思って放浪したことがある」
という、「えっ、それでどうなったの?」と思わせる書き出しで始まるこの作品。
一度は流してしまったその「告白」に、もう一度踏み込んでみた、その結果は……。
僕は筆者のお父様の「結局どう走っても道はつながっている」という感覚に、最後「そうだよなあ」と共感するところが深かった。生きるっていうのも人によって色々で、僕らはついうっかり「一生懸命生きようよ」と言ってしまったり、他人へもそれを強要したりしがちだけど、それが全てではないってこと。最近は書店もSNSも、そういう暑苦しさであふれているけれど。
筆者は「決心に近しい感情が自分の中で確かに芽生えたことを、私は晴れやかな気持ちとともに感じていた」と稿を締めていますが、読者側も同じような気持ちで読み終えられるところが心地よいです。

審査員コメント
「文章全体に走るライブ感と、最終的なオチが清々しい作品です」

優秀賞②

「祖父は隙あらばすぐに電話を切る人だった」
先ほどに続き「どゆこと?」から始まる作品。
しかし、そこから始まる「おじいちゃん」の物語は怒涛だ。文章のリズム、その構成の軽妙さも加わって、最終的にはホロリと泣ける話なのにゲラゲラ笑わされた感覚が残る。
「愛されるって何だろう」
この作品を読み終わって、そんなことを思う。他人によって「わかってもらう」こと、その大切さ、その難しさ。僕も最後に、大切な人に電話をしたくなった。

審査員コメント
「題名と内容がリンクし、電話がつながるうちにたくさん話をしようが胸に響いた」
「電話をいきなり切るおじいちゃんの生き生きとした描写が素晴らしい」

優秀賞③

布団を引っ張って餃子の作り方を教えるおばあちゃんと、教わる筆者の手がありありと浮かんできて切なくなる作品。
実は最終選考で最後まで特賞を争い、審査員としても思わず「特賞2つにしようか」と言いたくなるほどでした。
おばあちゃんの時には踏み込めなかった一歩、そしてこれから踏み出そうとする一歩。いまは確かにおばあちゃんはいないのだけど、家族の歴史の中に、間違いなくつながっているのだということを感じさせる作品でした。

審査員コメント
「ACPの入り口の葛藤が垣間見え引きこまれた」
「一編の映画を見せられているような精緻な文章と描写」
「話さなかった後悔と、話そうと動き出した第一歩。餃子がつなぐ、ストーリーの面白さ」

特賞

この作品はひとつの映画です。
僕が一番驚いたのは、筆者が「わたしが死んだら……」とお母様に話しかけるシーン。普通、そんなことを子供が言い出したら全力で否定するんじゃないかと思うのですよね。「そんなバカなこと考えるんじゃない!」って。でも、このお母様は違うのですよね。ずっと、子供のことを一人の人間として信じている。
でも、後半で「そうか、この場合は、わたしには決定権などないのか」から「水、減らさないでください……」までに至る心理が、前半の穏やかで温かなやり取りと対比されて、読んでいるこちらの胸も痛むのです。
そして最後の「偶然」。筆者の苦痛に共感して、ささくれ立ったこちらの心も、さくらのメロディがゆっくりと流してくれる。クライマックスと、そのメッセージまで文句が付けようがない素晴らしい作品でした。
本当に、このような物語を読ませていただいて感謝しかありません。
特賞の受賞、おめでとうございます!

審査員コメント
「純粋に自分と重なって涙が出た」
「温かい部屋と二人の中に流れる音楽にこちらまで温められるような文章」
「家族のことを思って決めることの苦悩とそれを支える家族の時間の積み重ね。最後に噛み合う物語としての完成度」

20時からは岸田奈美さんとのトークイベント

「わたしたちの人生会議」に応募いただいた皆様、本当にありがとうございました!
審査員も全員で全ての作品に目を通しました。たくさん笑ってたくさん泣かせてもらいました。

最初に言ったように、全ての作品に本当は優劣なんてありません。物語を聞かせてもらった時点で、全ての作品が素晴らしい。今回、「ぶんしょう舎」の皆さんにも応募いただき、それについては「添削して、結果を受講生に返してください」と提案されたのですが、実際に作品を前にして「赤ペンを入れること」など不可能でした。全ての文章、全ての言葉にその方が大切にされている方への思いが詰まっていると僕は感じたからです。
でもあえて、その中から「代表」として書籍に載せる作品を選ばせてもらいました。選考された皆さん、本当におめでとうございます!

さて、この「わたしたちの人生会議」企画、受賞作品の発表がゴールではありません。
3/20 20時から、作家・岸田奈美さんとのトークイベントがこの後待っています。

図3

ぜひ、こちらチャンネル登録もよろしくお願いいたします!

そして、「わたしたちの人生会議」は今回だけで終わるものではありません。皆さんの日常にある、大切な人との会話。そこにあるのが「みなさんの人生会議」です。今回ご応募いただいた作品たちをぜひご覧いただき、皆さんもこれから「あなたたちだけの人生会議」をしていってください。それがきっと、大切な人の人生の岐路で役に立つことを願っています。

画像2


スキやフォローをしてくれた方には、僕の好きなおスシで返します。 漢字のネタが出たらアタリです。きっといいことあります。 また、いただいたサポートは全て暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営資金となります。 よろしくお願いします。