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新興企業がハノイにオペラハウスと交響楽団を新設

 ベトナム国立交響楽団の音楽監督を務める日本人指揮者、本名徹次氏を応援する「筵(えん)の会」がこの3月、ハノイのロッテホテルで開催された。70名を超える参加で盛大に催された。
 その会で話題になったのが、不動産開発で急速に発展したベトナムのサングループ社が昨年10月に発表した、ハノイ西湖に新設されるオペラハウスと新しいサン交響楽団のことであった。
 サングループは2007年に創立された新興企業で、ダナンやハロン湾、フーコック島にアミューズメント施設を開発し、同時にJWマリオットなどのリゾートホテル経営にも乗り出している企業だ。その企業がメセナの一環として民間の交響楽団を設立、同時にオペラハウスの建設も行うと発表したのだ。設計にはイタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏を起用する。同氏は関西国際空港や銀座エルメス本社ビルなどの設計で日本でも知られている。報道ではシドニー・オペラハウスのような特異な形状の建造物を参考にするとされている。
 サン交響楽団の音楽監督には、2015年アンタル・ドラティ指揮者コンクール(ハンガリー)で優勝したオリヴィエ・オチャニン(仏)氏を迎える。同氏はフィリピン交響楽団の音楽監督でもあった。
 すでに楽団員の募集もはじまっており、月1200米ドルの給与を保証すると楽団のウェブサイトにはうたわれている。ベトナムのクラシックの音楽家は薄給で収入も不安定なことが多く、アルバイトをしながら生計をたてているケースが多い。優秀な音楽家たちの一部が同交響楽団に入団を希望するひとがでてもおかしくはない。
 音楽家にとって魅力的なオファーだから、ベトナム国立交響楽団にとっては驚異となるだろうとの声もあったが、伝統と名誉あるベトナム国立交響楽団はそう簡単には揺るがないだろうと私は信じている。
 ベトナム国立交響楽団は日越外交関係樹立45周年を記念して今年、東京と大阪での公演を予定している。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2018年4月号掲載

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