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コロナ啓発ポスターでプロパガンダアートが大活躍

この原稿を書いている6月1日現在、ベトナムは46日間連続で市中感染は報告されていない。ベトナムはコロナを制圧した、世界でもまれにみる国のひとつとなった。

4月号で紹介した「コロナ感染予防の歌」に続き、新型肺炎の感染予防に貢献したベトナムのアートをご紹介しよう。

3月10日ベトナム文化スポーツ観光省はコロナ感染予防啓発ポスターの公募を行った。締切まではたったの5日間、しかし23名の画家が応募し、103作品が集まった。そのうち14作品がポスターとなってベトナム全国の街角に掲示された。

応募し採用された画家の一人、ルー・イエン・テーは73歳のベテラン。50年にわたり宣伝ポスターや看板を描き続けた。今年の南部ベトナム解放記念日45周年記念ポスターの公募で自らの作品が二等に選ばれた。

「敵と闘うように感染症と闘おう」との文字の下にマスクを手にした白衣の看護師をあしらい、「マスクを正しくかけてコロナ感染を予防しよう」とのスローガン。ベトナム女性らしい風貌の看護師がベトナムの伝統的なプロパガンダアートの手法で描かれているのがかえって新鮮だ。

もう一つ紹介するのは若干三四歳の若手アーティスト、レー・ドゥック・ヒェップが手がけたものだ。彼は住んでいたホーチミンの集合住宅で感染者が発見されたために住宅ごと隔離され、家に閉じ込められた。人々がまだそれほどコロナの感染を恐れていなかった頃で、街のカフェやレストランには人々があふれていた。危機感をいだいた彼は"Ở Nhà là Yêu Nước"(在宅は愛国)と題してポスターを描き、SNSで公開、これが瞬く間に拡散された。
「在宅は愛国」はベトナムの人々の合言葉になった。絵はまるでプロパガンダアートのようだったので、英紙ガーディアンが記事にして話題となった。

ヒェップは近年のヒット映画のポスターを手がけ、レトロ調を基調とした作風で知られる。若い画家がプロパガンダアート風な絵を描く流れが生まれている。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2020年6月号掲載

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