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そして愛だけが残った

noteに書き始める前の話。
夏休みも終盤。
我が家の三兄弟には、夏休み中、給食がないので積極的に牛乳を飲むことを勧めている。
その日も、朝から色違いのドラえもんのグラスを使って牛乳を飲む準備をしていた。

すると、大きな音を立ててグラスが割れた。三男が手を滑らせ、3つ重ねたグラスを床に落としたのだ。私は出勤前、三兄弟は実家に行くこともあり、普段なら叱責からの愚痴を子どもたちにぶちまけてしまうところだったが、とにかく時間がないので、黙々と片付けた。

さて、このグラス。約2年前、京都で行われていた「ドラえもん展」で購入したものだった。ピンク、グリーン、ブルーの3色展開だったので、3人の子どもたちと話し合って購入を決めた。

この「ドラえもん展」を薦めてくれたのは私の大好きな先生である。子どもたちも絶対楽しめると思うので是非、と教えてくれた。
ちょうどコロナ禍で、制限された中ではあったが、夏休み、子どもたちにとって何か思い出になる場所を探していた。夫は相変わらず、家にいたい、どこにも行きたくない、という状態だったので、いつものように子どもたちと私の4人で出かけていった。

その日はあいにくの雨天だったが、人も少なく、子どもたちは大好きなキャラクターを通して様々な芸術家の皆さんの作品に出会えた。近くの神社や動物園にも足を運び、とても充実した一日だった。

そんな思い出のあるグラスである。割れたことが少なからずショックだったが、まあ仕方がない。
3つあるうちの1つだけが奇跡的に無傷だったのだが、兄弟の1人だけが使うことはないだろうし、私が使うか、と残念な気持ちでいっぱいだった。

それから約半月、先生が既婚者だということがわかった。私の離婚が成立したら、責任取りますよ、と私に囁いた相手に落胆した。そんな人だったんだ、と諦めの気持ちも生まれた。そして、いいじゃないか、先生の人柄や才能に対して好意を持ったわけで、既婚未婚は関係ないことだ、とこれまでの自分を振り返ることもできた。そんなふうに、心が右往左往する日々の中、思い出した。

あのグラス、3つにはそれぞれ英単語が書いてあった。PEACE、FUTURE、LOVE。割れたのはPEACEとFUTURE。まさに私の今の心の内と同じではないか。心の平穏や、ちょっとした未来への期待は粉々に砕け散った。

そして、LOVE、愛だけが残った。
こじつけかもしれないが、いつか先生に話してみたい、と心から思った。

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