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過去のレコ評(2016-3)

(2016年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)

「DANCE TO YOU」サニーデイ・サービス
ROSE RECORDS
ROSE-198

テンションノートに16分の刻み。2コードや循環コードを繰り返すグルーブ。ひとつ膜を隔てた向こう側で描かれるセンチメンタルな歌詞。既存ファンに喜ばれそうな変わらぬ世界観がここにある。変わったところといえば、以前より喉へのひっかかりが少ないスムーズな歌声。そして「シティポップと呼んでいいからね」と言わんばかりのジャケット。それらを含めて、どうすればファンが喜ぶのかをよく知っている人だ。そして夏真っ盛りの時期にリリースするというのも、彼にとってはもはや作品の一部なのだろう。音楽的に一番遊んでいるのは6曲目。ドタバタしたリズムボックス、ファンキーな要素、ダークな歌詞。90年代がここにある。

「君の名は。」RADWIMPS
UNIVERSAL MUSIC EMI RECORDS
UPCH-20423

いつからだろう、歌詞について語ることが、曲を評論する際の中心になってしまったのは。ラッドもそういう風潮の中で高評価を得て現在の名声を得たバンドのひとつだろう。だが今回のアルバムは歌詞の無いインストがメインのサントラだ。彼らの作る音が、新海誠監督の世界観とどう呼応するだろうか。監督の画風は、実在しそうな風景を実際には有りえないほどの光と輪郭で描き出す。これに応えるのは、アコースティック楽器を基本としつつも綿密にエディットされた音だった。隙間のある音で空気感を演出し、アルペジオで光の輝きを支えている。ドラムスの出番は少なくストリングスが多いのも、サントラならではだ。数少ないボーカル楽曲では、J-POPの定型から自由になっている。これらがどう使われるのか、是非映画を観たい。

「Hallelujah」THE NOVENBERS
MAGNIPH/Hostess
HSE-8000

気がつけばアルバムを一気に聴き終えてしまっていた。最初から3曲は、その音の「画面の大きさ」に圧倒されていた。これは明らかに今の技術に支えられたロックだ。4曲目からはどこかしら懐かしさもあるポップなコードとリズムが続き、ボーカルに聞き入っていた。エモーショナルなのに音が明確な8曲目。迫力があるのに耳に痛くなく心地よい。スネアの低域とリバーブが気持ちいい9曲目。それ以降は轟音の中にメロウなメロディが漂う。これまでの作品に比べMy Bloody Valentine的とでも言うべき要素が増えている。親しみやすさと狂気の絶妙なバランス。今の時代にこんな作品が作られていたことに驚く。素晴らしい。

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