有言実行三姉妹シュシュトリアンを視聴したので総括

 東映特撮Youtubeにて有言実行三姉妹シュシュトリアンを視聴しましたので総括してみました。

はじめに

 東映特撮の一シリーズである不思議コメディシリーズ最終作「有言実行三姉妹シュシュトリアン」。実はリアルタイム視聴時には当時学生で朝起きが苦手で時々しか見ていなかった。しかし2019年に騎士竜戦隊リュウソウジャーが終了し、ファイナルライブツアーがコロナ禍で中止になってしまい、ケボーン欠乏症といういわゆるリュウソウジャーロスに陥ってしまった。
(※ケボーン欠乏症:破天荒なストーリー展開・演出を見ていくうちに病みつきになり、破天荒なストーリー展開・演出のある作品を見たくなる症状をさす。一部のアンチの間では話がつまんないことをケボーンと呼ぶそうだが、その解釈だと話が全然広がらないのでこの解釈は全面的に取らないこととする。ていうかリュウソウジャーつまんないなんて主観かつ偏見だしw)

 一方で、東映特撮Youtubeにて「有言実行三姉妹シュシュトリアン」が配信されることとなった。この作品ではリュウソウジャーの龍井尚久役の吹越満氏がフライドチキン男で出演なさっており、リュウソウジャーでもフライドチキン男がクリスマス回にゲスト出演している。
 そこで「有言実行三姉妹シュシュトリアン」を視聴することで、ケボーン欠乏症を解消してみた。その結果、リュウソウジャーみたいな純粋なケボーンは得られなかったものの、ケボーン欠乏症を回避できるだけのケボーンが摂取できただけでなく、シュシュトリアン独自の魅力も楽しむようにになっていた。
 その結果、気づいたら配信日または翌日にはシュシュトリアンを見て感想をすらすらと書いていたのである。(他の特撮作品については配信終了直前になって慌てて視聴して感想をUPしていたなんてことが結構あった。)
 そこで総括として、シュシュトリアンの魅力を書いてみた。

個性豊かな登場人物

 シュシュトリアンの登場人物を書いてみる。順番は本来だと雪子からなんだけど、ケボーン摂取が目的だからフライドチキン男から先に書くこととする。
 フライドチキン男:お酉様の命令をシュシュトリアンに伝えるエージェント。ゲゲゲの鬼太郎で言うねずみ男みたいなポジションかと思いきや、悪さを働いてその回の悪役になったかと思えば、颯爽とシュシュトリアンのピンチを救うタキシード仮面的存在になったり、はたまたお酉様からの伝言をいいことに雪子のベッドに潜ったり花子のタンスに隠れたりと、キャラの振り幅が徹底的に激しい。シャンゼリオンの涼村暁のプロトタイプなんじゃないかと思えるほど。エンディングで3人のウエディングドレス姿を見送る佇まいがやたらかっこいい。諺解説コーナーでの寸劇はケボーン満載であり、ケボーンを摂取するには絶好の機会だった。

 山吹雪子:シュシュトリアン雪子に変身する高校生。冷静沈着で理知的であり、心技体でいえば技。正義に対する確固たる信念を持っており(第36話)、実は人生3周ぐらいしているんじゃないかと思えるほどである。普通の人にモテて、相思相愛までいくこともあるが、なかなかうまくいかないことが多い。
 雪って名前でリーダーなのにモチーフカラーが青や赤じゃなく黄色ってあたりすごく異色。雪子役の田中さんは後に星獣戦隊ギンガマンのミハル役を演じることとなる。

 山吹月子:シュシュトリアン月子に変身する中学生。優しく聖人君子であり、心技体でいえば心。そのためか同世代の男性に限らず子どもや妖怪、無生物にまでモテる。しかし悪に対しては、イモリ男を散々たぶらかす、睡眠中のC型仮面を蹴飛ばすなど、最も容赦ない
 聖人君子っぷりと悪への容赦なさが同居する、ある意味一番恐ろしいかもしれないキャラ。ウルトラマン回が縁で、月子役の石橋さんはTDG三部作にご出演。

 山吹花子:シュシュトリアン花子に変身する小学生。基本的に熱血脳筋で、心技体でいえば体。学校では篠山加納荒木の班長であり、いつも彼らの尻を叩いている。そのためか恋愛には疎いが、第26話みたく恋愛に疎く熱血だからこそ魅力が光ったこともあった。
 スケジュール調整の都合か、花子が4話連続主役担当ということもあり、その分花子役の広瀬さんの演技力が向上しETおばさん役の柴田さんと掛け合いするレベルにまで達していたことが印象深い。広瀬さんは翌年にはカクレンジャーで戦隊初の女性リーダーの鶴姫役を演じている。花子と鶴姫を比べると鶴姫はややクールって感じもする。

 ETおばさん:出稼ぎのため地球へ単身赴任している宇宙人。できるだけ金稼ごうと欲を出した結果、悪さに手を染めてシュシュトリアンに懲らしめられること多数。だがそれだけ家族への思いが相当強く、山吹夫妻も見習ったらどうだって思えるレベル。悪さはあかんけど。
 不思議コメディ常連の柴田さんが演じているだけあって、ひょうきん族のさんまさん演じる悪役キャラと肩を並べるぐらいキャラが安定。その憎めなさは後年のビーロボカブタックにおけるコブランダーたちへ継承されてるとも思える。

 山吹英三郎:刑事であり山吹三姉妹の父親。妻である恵と夫婦喧嘩を繰り返しており、夫婦喧嘩をやめさせるという条件で三姉妹がシュシュトリアンになったことを考えるとすべての元凶の片割れでもある。刑事なのに情報漏洩するわシュシュトリアンに手柄取られるわでどこか頼りない。
 妖怪・ザ・お正月より怖い魔王・ザ・倦怠期の片割れ。いざというとき頼れるフライドチキン男に対し、山吹父は常時頼りない感がある。あと願いと引き換えに変身ヒロインになってよって図式が後年のまどマギと同じで今考えるとトラウマものかもしれない。

 山吹恵:山吹三姉妹の母親。お酉様の力により英三郎との夫婦喧嘩を強制停止させられるが、その後も事あるごとに夫婦喧嘩している。しかし仮面夫婦への道を進むことにより夫婦喧嘩を回避できるようになる(第36話)。仲間の主婦二人を引き連れてシュシュトリアンのコスプレをしたこともある。
 妖怪・ザ・お正月より怖い魔王・ザ・倦怠期の片割れ。総集編では邪神・ザ・離婚になってしまうかと思いきや芝居の練習だったとは。山吹三姉妹の戦闘民族としての遺伝子はだいたいこの人から来てるんじゃないかともw

 篠山・加納・荒木:花子のクラスメイト。テストの成績が悪い。不思議コメディによくある三バカトリオ。だいたい三人セットで扱われることが多く、主役話があったとしても「母親へのカーネーション代を別のことに使った荒木」とか「スイカを一回も割ったことのない加納」とか「クッキーの缶でストレス解消する篠山」とか、非常にロクでもない扱いwだが主役回ちゃんと一巡しているあたり抜け目ない。

 お酉様:酉年の平和を守る神様的存在。しかしカラオケのやりすぎで平和を守れなくなったため山吹三姉妹に酉年の平和を託す。妖怪よりも怖い山吹夫妻の夫婦喧嘩を中断させたり、シュシュトリアンとの合体技で猫姫を月まで吹き飛ばしたりするなど超能力がすさまじい反面、パチンコやってるときに猫姫に捕らえられるというどこか抜けてる面も。
 すごいんだかすごくないんだかよくわからないお酉様。とはいえ猫姫を月まで吹き飛ばす有言実行紅つむじ風1993スペシャルの威力は不思議コメディシリーズの中でも最恐クラスなんじゃないかと思えるほどで、東映特撮全体を見ても仮面ライダーウィザードのオールドラゴンがフェニックスを太陽まで蹴り飛ばすぐらいである。出番が少ないが故にフライドチキン男という立ち位置のキャラが生まれたということを考えると、出番が少ない事も悪くはないとも思える。

 怪猫・猫姫:シリーズ中盤から現れた強敵にしてラスボス。自分が十二支に加われなかった怨みから、新十二支を結成し十二支の乗っ取りを企む。
 もう少し出番が多いはずだったが、話数短縮の煽りを受けて5回しか出演せず。とはいえシュシュトリアンを初戦で完膚なきまでに叩きのめし、特訓させた実力はさすがというべきか。ただ新十二支にコアラやパンダやエリマキトカゲを加えようとするあたり人選間違ってるんじゃないのかともw。

 こんな感じで非常に濃いキャラばかりで楽しめた。

個性豊かな脚本陣

 本作は主に3名、追加話を加えると4名の脚本家によって作られている。脚本家によってエピソードの作風がまるで違っていることも本作の魅力だった。ここでは脚本家4名の特色について解説する。

浦沢義雄先生:不思議コメディシリーズの顔であり、ポワトリンやトトメスなどでは総集編を除き全話脚本執筆なさっている。無生物がしゃべったり変人が普通に街を歩いていたりするというシュールな作風が特色であり、無意味にヒロインに阿波踊りを躍らせたり登場人物に変なことを言わせたりと、とにかく面白いネタを輩出する。心技体でいえば技。
 本作でも安定の浦沢脚本だが、ややもするとずっと浦沢脚本だと世界観に慣れてしまい感覚が麻痺してギャグも日常茶飯事と思えるようになってしまうことがあるのだが、本作では大原脚本や武上脚本があるおかげで免疫がつかず浦沢脚本をずっと楽しむことができたという感触がある。
 また浦沢先生もシュールと面白さを優先してばかりと見せかけて、話の屋台骨をしっかり組んだりキャラ描写を丁寧に行ったりと、土台がしっかりしているからこそできるシュールさと面白さが非常に魅力的である。

大原清秀先生:不思議コメディ第1作であるロボット8ちゃん第1話の脚本家であり、本作はちゅうかないぱねま以来の参加となる。本作に限って言えば、おっかなさに特化した話が多く、バースデーケーキから手が飛び出す、聖人君子なはずの月子が妖怪をたぶらかすなど、とにかく描写がおっかない。ちなみに「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」でも脚本を担当なさっており、個人的にはおっかなさの頂点だと思っている。「白昼夢 殺人金魚」ではウエディングケーキからここには書けないようなものが飛び出すという非常におっかない仕上がりになっている。
 大原先生担当のラスト2話でおっかなさのバーゲンセールを行った後、ラスト1話で最もおっかないものを人間の本性とし、それを和らげるための夢という名の嘘が必要という綺麗な纏め方をなさっており、不思議コメディシリーズの有終の美を飾った。心技体でいえば体。

武上純希先生:第13話から途中参加なさった方であり、作風は変幻自在。1988年作のサイバーコップではお洒落なセリフ回しが特徴的だった一方、2008年作のゴーオンジャーではウルトラマンタロウみたいなおとぎ話的ギャグが特徴的であり、その都度で作風が変わる。シュシュトリアンではその変幻自在な作風を生かし、社会風刺色の強い第13話に始まり、異色の感動ラブコメだった第26話を担当。ラスボス猫姫の関わる話、フライドチキン男の母親判明回など、話の主軸に関わる話も担当なさっており、浦沢先生のサポート役に回ってる感もある。追加脚本分ではそのご褒美としてか、ウルトラマンとの共演回を担当することになる。心技体でいえば心。

鹿島ともこ先生:「愛しのナルシス仮面」1話のみ担当。心技体でいえばニンジャマン。作風としては社会風刺色とラブロマンスを描いているという点で武上先生に作風が似ている感がある。というかアクの強い浦沢脚本や大原脚本と比べるとどの脚本家が参入しても武上脚本寄りになりそうだがwとはいえ、ナルシス仮面がシュシュトリアンの心担当である月子を惚れさせてシュシュトリアンを弱体化させたり、影の実力者であるフライドチキン男をキーパーソンとして扱ったりするあたり、ナルシス仮面のシリーズ終盤における強敵感が出ており、1話限りだけの参加ながら上手いという感触がある。

不運による終焉

 この他にも大野剣友会さんによる肉弾戦アクションは10年後のプリキュアを先取りしたような内容になっており、非常に見ごたえあった。個性豊かな脚本を彩る演出もすごかった。
 しかし、本作は3クールと追加分の3話をもって終了することとなる。視聴率は悪くなかったが、同期の桜である美少女戦士セーラームーンRと玩具のラインが競合したため、セーラームーンに集約するという意図で残念ながら番組だけでなく不思議コメディシリーズも終焉を迎えることとなる。
 シュシュトリアンとセーラームーンという図式は、仮面ライダーBLACK RXと仮面ノリダーに似ているような気がする。仮面ライダーBLACK RXやシュシュトリアンは、今までのシリーズの良いところを取り入れてさらにブラッシュアップしようとする意図が感じられ、変化球描写とか多いように思えた。それに対してセーラームーンや仮面ノリダーは、新規にシリーズを立ち上げてヒーローまたはヒロインの王道的な魅力を描写することにより視聴者の心を掴んでいき人気コンテンツになった感があった。
 巷で放映されているアニメ総集編番組では、セーラームーンのことを魔法少女+バトルものの融合が斬新とされ、プリキュアのことを肉弾戦のある魔法少女ものという点が斬新とされていた。しかしこれはアニメという土俵の中での話であって、実写では魔法少女+バトルものの融合がポワトリンですでに実現されており、肉弾戦のある魔法少女ものについてもシュシュトリアン(またはそれ以前)で実現されていた。
 このような話は年寄りのマウンティングと捉えられかねないところがあるが、こうした不思議コメディシリーズの遺産が後世へ伝わらないのはもったいない気がしてならない。

おわりに

 そんなわけで小難しい感想を書いてきたわけだが、配信のあった約5ヶ月間、ケボーン摂取やウルトラマン回が当初の目的だったにも関わらず、他の回も十分見応えあり、毎週月曜の夜が楽しかった。とにかくシュシュトリアンという作品を作ってくださったスタッフ&キャストの皆様、および配信なさった東映特撮Youtubeチャンネルの運営の皆様に、感謝の意を表して感想を締めたい。

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