親による子の連れ去りは刑法上の犯罪か否か

現在、親による子の連れ去りに関して刑法上の犯罪である、刑法上の犯罪ではない、と2つの解釈があります。少し整理してみます。国内における連れ去り及び海外への連れ去りは、①婚姻中同居時、②婚姻中別居時、③離婚後別居時に分類される。現在、判例上、犯罪とされているのは、②婚姻中別居時、③離婚後別居時である。①婚姻中同居時は、知る限りにおいて判例上、犯罪とされたことはない。つまり、どういうことかと言うと、①婚姻中同居時は、ⓐそもそも刑法224条と226条の構成要件に該当していない(保護法益は略取・誘拐された者の自由及びその安全)、ⓑ刑法224条と226条の構成要件(保護法益は略取・誘拐された者の自由と保護監督者の監護権)に該当しているが、違法性阻却で違法性がないとされている、©刑法224条と226条の構成要件(保護法益は略取・誘拐された者の自由と保護監督者の監護権)に該当しており、違法性阻却されないが、警察の恣意的な運用で検挙・逮捕しない、という解釈があります。外務省は「日本にも未成年者略取・誘拐罪という犯罪が規定されていますが、連れ去られた未成年者の行動の自由と安全が侵害されたかどうかが重視され、夫婦間の協議が調わないまま、一方の親が他方に無断で子供を連れ去る行為は、通常は犯罪とされません。」としており、ⓐという解釈をしています。また、関西学院大学の井上教授は「日本でも同意のない子の連れ去りを抑止するためには、刑法改正により犯罪とすることもやむを得ないのではないでしょうか」としているので、ⓐという解釈だと思います。刑法224条と226条を厳密に解釈すると①婚姻中同居時はⓑかⓒとなるが、実際の運用の観点から解釈するとⓐになる。ⓐⓑⓒのどの解釈が妥当か、又は、正しいかは、今後提起する連れ去りの違憲訴訟で争点になり判決で明らかになると思う。