子の連れ去り違憲訴訟の概要と主張の論理構成

子の連れ去り違憲訴訟は、立法不作為訴訟である。立法不作為訴訟では、立法に不備があり、そのため、憲法の保障する権利が侵害されたときに、その不備を立法の不作為に原因があると主張する。

(1)結論

原告らは,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うこと。

(2)理由

1.憲法の保障する権利の侵害

①原告らは,配偶者に子を連れ去られた(引き離された)結果,リプロダクティブ権,親権,監護権の基本的人権を,それぞれ侵害された。

②一方親が,他方親の同意を得ずに子を連れ去ること(引き離すこと)は,他方親の基本的人権である親権及び監護権を侵害する行為であると同時に,連れ去られる子の人権(両親から共同親権,共同監護を受ける権利)をも侵害する行為である。

2.立法の不備

③日本の国内法には,一方親による他方親の同意を得ない子の連れ去り(引き離し)を防ぐ法律規定が不存在である(法の欠缺1,2及び3)。

 *法の欠缺1:子の連れ去りを防ぐ刑事法の規定の不存在

 *法の欠缺2:子の連れ去りを防ぐ民事上の法律規定の不存在

 *法の欠缺3:子の連れ去りを防ぐ手続規定の不存在

④「法の欠缺1ないし3」が憲法違反である(違憲)。

3.立法の不作為が原因
⑤「法の欠缺1ないし3」を補う法の立法義務が,国会(国会議員)に認められる(立法義務の存在)。

⑥「法の欠缺1ないし3」についての国会(国会議員)の立法不作為が国家賠償法上違法である(国家賠償法1条1項の違法性)。

⑦国会(国会議員)の立法不作為は漫然と行われた違法な行為である(国家賠償法1条1項の違法性)。

*立法不作為が憲法の規定に違反するおそれがあるとしても、そのゆえに国会議員の立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。