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【第四回】学振審査に研究室の有利不利はあるのか?!

前回の第三回の記事中で、学振の申請書に我々申請者の経済状況等を記載するところがない。学振は経済状況を加味せずに審査されており、私はそれで良いと思っている、ということを書かせていただきました。今回は、その件に関する私の個人的な考え方をまず述べさせていただきます。
その後、昔から噂されている所属する研究室での優劣があるのか、という点についても私見を記載してみましたので、ご興味のある方は読んでいただけたらと思います。

まず、経済状況を加味しないという審査方針についてですが、私はそれで良いと思っています。一部には、経済的に厳しい人材にこそ資金を、という声も耳にします。しかし、学振の審査に経済状況を加味した瞬間に、キャリア形成における学振の価値がなくなってしまいます。ポスドクやテニュア助教などの博士号取得後のキャリア形成(就職活動)において学振がある一定の価値を持つことは最早、周知の事実です。私は、経済的な状況をあえて除いた、研究という一点において公平である審査、というものがこれに必要だと考えています。


一方で、研究室に学振採用のノウハウが備わっているところや、ビッグネームのラボとうが有利であるということは実しやかにささやかれています。

私なりの結論を申しますと、

確かに、所属している研究室、大学、周りの環境等による有利・不利はあると思います。これは審査においての優劣、ではなく、
(1) 良い(採用された)申請書をたくさん見ることができる。
(2) 採用者の話を直に聞ける機会が多くある。
(3) 説明会等の情報を得る機会に恵まれている。
と言った理由があるからです。正直、この三点はすごく大きいと思います。

私の所属している筑波大学でも毎年全学を対象とした学振採用に向けた説明会が開催されています。学振に申請する際の注意点や審査員を務めた先生による審査におけるポイント等を知ることができます。加えて、大学院の研究科でも個別に説明会(というよりも採用を目指すための指南)などが催されています。また、研究科の事務室には大事に過去の採用者の申請書が保管されており申請予定者はそれを特別に閲覧することができます(もちろん持ち出しコピーは厳禁です)。
今年は新型コロナウイルスの影響で説明会は中止になりましたが、大学側は予定されていた講演を収録し学内専用ネットで公開してくれているくらいの熱の入れ様です。その他にも、私が聞いたことがあるところだと、東大や京大等もこの様な取り組みに力を入れていると聞きました。

以上の様な大学側の努力やそれによって採用された多くの先輩の経験と言った、圧倒的な情報格差が学振採用の有利・不利を生んでいる様に思います。

ただ、ただです。これら三つはただの情報格差に過ぎないのです。
学歴バイアスがかかっているわけでも、男女、年齢、国籍の差別があるわけではないのです※1!!(ここは声を大にして言いたい。)
情報格差は埋められます。そのために、私はこのnoteを書くことを決めました。おそらく、ネット上に学振に関する情報を掲載している方々の多くもこの様なモチベーションに基づいているのではないかと、私は考えています。

実は今年度、ある地方大の学生から連絡を受けました。
「自分の周りには学振採用はおろか、博士課程進学者、さらには科研費等を獲っている教授も少なく、大学側も特別何かを提供していくれることもない状況で、どうしようもない。何か知っていることがあれば教えて欲しい。」と、

そこで、私は私の知り得る事を全てその学生(今ではとても仲の良い友人)に伝えました。加えて、私の同期と一緒に多くの時間を使って「これからの研究」の研究課題を議論しました。その友人にとっては私がこれまで人伝に集めてきた学振に関する情報や学振採用を目指す上での研究テーマに対する議論のスタンスなどは、驚くほど新鮮で強烈なものであった様です。(後に友人はそれを、我が人生の文明開化、と表現していた様に思います。)その友人は最終的に面接でDC2に採用されました。

そこで私は確信しました。本当に研究好きで研究がしたくて、博士号が欲しくて博士に進学する意識の高い学生は、情報格差さえ是正されれば学振に採用されるのだ!…と。なので、この様な記事をつらつらと不定期で書いているわけであります。

ただ、一点。皆様に申し上げたいことがあります。それは、情報は自ら歩いてやってくるわけではないということです。情報が足りないと感じるのであれば自ら行動を起こさねばなりません。

私も、自身が申請書を書く際に採用不採用合わせて15件近い申請書を先輩方からいただきました。しかし、ここに研究室の直接の先輩は1件しか含まれていません。その他は、学内の育成事業(筑波大学にある先導的研究者体験プログラム等)で知り合った方や、学会で出会った尊敬できる素敵な方、産総研の人材育成事業で知り合った方などそういう方々に、丁寧なメールを送り、いただいたものです。
もちろん、いきなり唐突にお願いしたわけではありません。出会った時からこの人の申請書見てみたいと思い、当初から「自分が申請書を書く際にはぜひ参考にさせてください!!」とお願いをしていたからこそ、というのはあるかもしれません。

なんか、自分の努力と成功体験を雄弁に語っているだけのつまらない文章になってきたので、ここら辺で終わりにしたいと思います。(段々恥ずかしくなってきました。)

大事なことは、情報格差は確かにあります。でも、情報格差さえ埋める手立てがあれば、有名大学、有名研究室に所属している学生とも互角に戦えます。

情報が足りない。と思ったら、自ら行動を起こして情報を集めにいきましょう。
それくらいのコミュ力ないと博士は厳しいと思います。

という事です。さらに言えば、次回の記事かそれ以降に言及しますが、来年度からは有名研究室の学生の方が難しい戦いになる可能性が出てきました。以前からその問題点が指摘され、対策の必要性について積極的に意見がされてきた事案です。

ぜひ参考にしてください。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。今後も執筆に精進いたします。

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※1:現に私は、地方国立大学から学振に採用された方をたくさん知っています。彼らは周りに採用者なんていない、大学も学振なんてさっぱりわからない、そんな状況から採用に至った人たちです。それに、日本語も覚束ない外国人留学生の方が採用されたのも知っています。また、30代の出戻りの博士学生が採用されたことも知っています。なので、採用に学歴・性別・年齢・国籍は関係ないと思っています。

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