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【第三回】学振採用は研究費獲得でもあるということ

さて、前回の記事で申請書に記載する「これからの研究」において意識したほうがいいと思うこと三点、

1. 学術・産業界に寄与する研究内容であること
2. 研究費(国税)を投じるに値する(必要性がある)研究内容であること
3. 申請者本人のアイディアによる独創的なものであること

言い換えると…

1. 成就すればN姉妹誌くらいに掲載できそうな研究テーマであり、
2. 研究にお金が必要だと審査員が強く思える研究テーマで、
3. 指導教員の研究課題と被っていない申請者本人が考え出した研究テーマであること。

を紹介しました。今回は上記2つ目、
2. 研究にお金が必要だと審査員が強く思える研究テーマ
についてお話していきたいと思います。

本件は、上述した「これからの研究」の研究テーマを考えていく際に意識すべきポイントの1つ目とも3つ目とも関連する内容です。

学振特別研究員DCは基本的に年間100万円前後の研究費が給付されます。これに伴って、審査員の方々は申請書の内容で研究費を使うであろう、「これからの研究」にお金が必要か、という観点でも審査します。

前回の記事で自分の研究の直接的連続的な研究テーマや重箱の隅をつつく様な研究※1では通りにくい、とコメントしたことはここに通じています。現状のまま、つまり自身で研究予算を獲得しなくても、これまでと同様に"所属研究室の研究予算で研究を遂行できそうな研究テーマ"では、その学生に学振(研究費)をわざわざ与えなくてもいいのではないか…となってしまいます。
そこで、重要になってくるのが科学的に挑戦的な研究テーマ(意識すべきポイント1つ目)と指導教員や自分の関係する研究者の研究課題と被っていない独創的な研究テーマであるかどうか(上記の意識すべきポイント3つ目)と言うところです。

端的に本記事の主題を述べるならば、
「研究にお金が必要である理由が明確に分かるような研究テーマ、申請書の内容である事が重要。」
と言うことです。それには、N姉妹誌に掲載されるような高度かつ先端的な研究テーマであったり、所属研究室(指導教員の持つ研究課題)とは異なる研究テーマである。と言う事がとても重要で説得力のある研究テーマだと私は思っております※2。
私の場合は、独自の測定装置を開発したい、と言うモチベーションがあったのでこの点については改めて意識することなく、申請書を記述できたと記憶しています。

しかし一方で、意識する必要はあるけれども、あからさまに「これにお金がかかります」とは書けないのが申請書の難しいところです。「これからの研究」の記載内容の中で、ちょっとずつ審査員の先生方に、
「この研究が意味があるもので申請者自体が主体的になって進めていきたい研究なんだろうな」
と感じてもらえるように、しっかりと書いていく必要があると思います。そのためには、以前の記事にも書かせていただきましたが、いろんな人に申請書を読んでもらって様々な角度から意見をもらうのがいいと思います。
その時にぜひ、「この研究が必要だと思えたか?」「この研究にお金が必要そうに思えたか?」「この研究に投資しようと思えたか?」など具体的な評価項目を自分から設定し聞いてみると良いと思います。
少なくとも私は読んでくださった方々にそうした視点での感想を求めて、すごく多くの有益なアドバイスをいただきました。ここで私が工夫したのは、「思えた。」と答えてくれた人に「どこらへんの記述がそう思えた根拠か?」ということを聞いてアドバイスをもらいました。皆さんも審査員を経験したことが無い人に申請書を読んでもらうときは、自分なりに評価項目を決めてそれに沿って読んでもらい、感想を聞くのも良いと思います。特に、今回の記事で紹介したような「研究にお金が必要であると直接的な表現はできないけど、審査員の方々にわかって欲しい。」と思うような内容については自分では無い誰かの感想というのはとても参考になると思います。

さて、今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回の記事で、「これからの研究」を書いていくときに意識すべきポイントの具体的な紹介は終了です。今年はその記事を持って学振記事は終了にしたいと思っています。今後、もしかしたら自己評価欄の書き方や現在までの研究の書き方、さらに審査区分の決め方や審査員の先生方が実際どのように審査しているか等も記事にして行こうかなと思っておりますが、ここには色々な人の色々な考え方がありますので、慎重にいきたいと考えております。ご理解をお願いいたします。

今年、ラスト一本頑張って書いて行こうと思います。よろしくお願いします。

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※1:重箱の隅をつつく研究もめちゃくちゃ大事です。私個人としても何よりもまず、大事なことの1つと思っています。重箱隅研究を軽視しているわけでは全くありません。この発言の真意は、学振申請には壮大な研究テーマを。採用後に得られる研究予算と時間を上手く使って重箱隅研究も進めていこう。というものです。私自身も、今年度学振の研究も進めつつ、同時人口で重箱隅研究も3件進めています。D1やD2の春(今の時期)に申請書を書く必要もないので、代わりに論文をかけています。しっかりと学振(研究費)を獲得し、さらに自分のやりたい、気になっていた重箱隅研究もやる。というのが一番スマートなのではないかと思います。

※2:この他にも実は、海外留学したいとか国際学会に積極的に参加したい。海外の研究機関(天文の人などは観測所などが多い印象)に行かないと研究ができない等の理由もよく目にします。もちろん、前者の事由には枕詞がないといけませんが。

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