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【第三回】これからの研究テーマとしての狙い所

さて、前々回の記事で申請書に記載する「これからの研究」について少しだけお話ししました。今回からの記事では、実際に「これからの研究」の研究課題(研究テーマ)を定めていく、書き進めていく上で私が意識したほうがいいと思うことをご紹介いたします。

前回の記事【第三回】指導教員と学振の話をしよう、において以下の様なポイントをあげました。

1. 学術・産業界に寄与する研究内容であること
2. 研究費(国税)を投じるに値する(必要性がある)研究内容であること
3. 申請者本人のアイディアによる独創的なものであること

これを言い換えると…

1. 成就すればN姉妹誌くらいに掲載できそうな研究テーマであり、
2. 研究にお金が必要だと審査員が強く思える研究テーマで、
3. 指導教員の研究課題と被っていない申請者本人が考え出した研究テーマであること。

だと、私は思っています。この3つ、どれもとても大事だと個人的には思っていまして。(言い換えるなら最初からそういえや、というツッコミを自らしておりますが…)

さて、今回は上記1つ目の
1. 成就すればN姉妹誌※1くらいに掲載できそうな研究テーマ
について話していきたいと思います。
最初にはっきり申し上げます。いや、はっきり文字にするのはすごく難しい内容なので、多少抽象的かもしれません。勘弁してください。はっきり目に抽象的に申し話げますと、今自分のやっている研究(申請書中ではこれまでの研究)の直接的、連続的な研究課題は通りにくい※2です。
学振はM2の5月に提出して、採用されるのがD1の4月からです。つまり、10ヶ月以上のタイムラグがあります。
なので、今すぐに手がつけられそう、言い換えればM2でやるような研究課題ではD1からの採用の前に終わらせられるでしょう?と思われてしまいます。
もちろん、これまでに築き上げてきた研究成果や知識や技術はとても大事です。そこで、私が意識したことはM2で全力尽くしたらD1の時にはこのくらいに到達しているだろう、そしてその先はなんだ?と言うことです。
なので、これから申請される皆様がまず意識すべきは、これまでにやってきた研究が必ず役に立つ様な研究テーマでありながら、これまでの研究からちょっとだけ非連続にステップアップしたくらいの研究テーマを「これからの研究」として設定する、ということです。
俗に言う重箱の隅を突くような研究はすごく審査員受けが良くない印象です。

まとめると、今やっている研究(これまでの研究)の2ステップ先※3、より高次の別次元にあるような研究テーマを考えてみるといいと思います。その狙いどころとしては、繰り返しになりますが、M2で全力を尽くしたらD1の時に到達しているであろう所のさらに先。そして、N姉妹誌に乗っていてもおかしくなさそうな研究テーマです。自分が読んでいるN姉妹誌にこんなタイトルあったら絶対読んじゃう、と思えるような研究テーマが、審査員の目にも同様に読んでみたい申請書として写ると思います※4。

では、具体的にどうやって研究テーマを考えていけば良いのか?
この問いに対して私的な対策は以下の2つです。

1. N姉妹誌に論文を出したことがある・科研費を獲ったことがある教員の先生に自分のアイディア(研究テーマ)を聞いて感想をもらう※5。
2. ひたすらに有名ジャーナルだけを読む時間を作ってみる※6。

わからないことは先人に学びましょう。ワクワクする様な研究テーマが提案できれば採用はグンと近づくと思います。

それでは、今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。今後も執筆に精進いたします。

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※1:文系の方には馴染みがない単語かもしれません。N姉妹誌というのは、有名科学ジャーナルNatureの姉妹誌ということです。1つ若手研究者の憧れ的なジャーナルであり、インパクトファクター(IF)は20や30を超え、一本でも若手の内に論文を掲載できればすごく名誉なこと、と言ったところです。

※2:もし、修士で本当に面白い独創的な研究テーマに取り組んでいて、面白い成果が上がっているのであればこの限りではありません。必ず、修士の研究テーマの直接的連続的研究ではないことをしないといけないわけではないことをご承知ください。

※3:ここでのステップとは論文化と捉えていただければ幸いです。M2の間の1年間で論文を2報執筆してからD1になることがあれば、それは相当優秀な学生だと思います。審査員にはそれが伝わる様な研究テーマを提示できると良いのかなと思います。

※4:この点について、私がよく聞かれるのが、これまでの研究からどのくらいぶっ飛んでしまっていいのか?ということです。正直、博士課程から研究室を変更する学生も多くいるわけですから、どこまで研究テーマが離れようとも説得力と、その研究テーマを申請者が遂行すべき確固たる理由があれば問題ないと思います。この点については次回以降の独創性等の記事でお話しできればと思っています。

※5:言わずもがな、N姉妹誌に論文を通したことのある先生いうのはそのノウハウを知っています。そして、科研費を獲ったことがある先生というのはどの様な研究テーマを申請することが求められているかも知っています。学振に学生だからという様なバイアスはないと思った方が良いと思っています。私の周りで学振をとった人の申請課題というのはどれも非常に面白いものでした。申請者のなかに面白い研究テーマを書いている人が20%いれば、その人たちが採用されるわけですから、「自分はこれで良いや」と妥協した瞬間に採用が遠のく実感を持った方がいいと思います。(とはいえ、この3,4年で学振に採用されることがすごく容易になった印象があります。その申請書、その研究テーマで通るの?!と思う様なことが増えました…売り手市場と言われている就活現場が反映されて、学生が博士課程に進学せずに流出しているのか、それとも全体的にストイックな人が減ったのか…理由は定かではありませんが、これから申請する人にはチャンスだと思います。)

※6:あえて有名ジャーナルだけを読む時間を作るというのも大事なことだと私は思っています。有名ジャーナルの論文のタイトルってすごく興味を引く様な書き方をしていることが多い様に思いませんか?
インパクトファクターが高いということはそれだけ多くの人に影響を与える様な研究成果を掲載しているということでもあるわけでして、学振の「これからの研究」についても多くの人(複数の分野の審査員)が面白い、研究成果を見てみたいと思うものである必要があると思っています。
そこで、あえて有名ジャーナルの論文だけを50本、100本くらい読んでいくと段々考え方の様なものがわかってくると思います。特にイントロを読んでいると、何がこれまで課題だったのか、それがどう解決されて、どの様なベネフィットを学術界に提供しているのかが明示されています。そのロジカルな筆の運びを一日中体感していると自然と自分の思考を適応させていくことも叶うと思います。
その感覚を養うために私はfeedlyというものを使っています。簡単に説明すると、feedlyは記事が新しく発表されるとその記事をピックアップしてfeedly上に表示してくれるものです。私はNature,Scienceをはじめとしたジャーナルをfeedlyに登録し、日々チェックしています。これによって、常に有名ジャーナルの最新の記事をいちいち各webサイトに赴く手間なく一気にチェックすることができます。


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