事は密なるを以って成り、語は泄るるを以って敗る
『韓非子』説難
●「計画は秘密のうちに運ぶから成功するのであり、外に漏れれば失敗する」
訳せば、こんな意味になるかもしれない。
●たしかに計画段階で話が外に漏れれば、障害ばかり多くなって、まとまる話もまとまらなくなるであろう。少なくともある段階までは、胸中深く秘めておいたほうがよいのかもしれない。
●たとえば、太平洋戦争末期、終戦の大任を帯びて組閣した鈴木貫太郎総理のやり方がこれだった。この人は、終戦などということはオクビにも出さず、もっぱら「聖戦完遂」を叫びながら、それでいて首尾よく終戦にこぎつけたという。
●一種の腹芸のようなものだが、鈴木が初めから本心をさらけ出していたら、それこそ収拾のつかぬ混乱を引き起こしたに違いない。
●このような秘密主義がもっとも要求されるのが、情報活動の分野である。『孫子』は、わざわざ情報活動に一章を割き、そのなかで次のように指摘している。
●「情報員には全軍のなかでもっとも信頼のおける人物を選び、最高の待遇を与えなければならない。しかも、その活動は極秘にしておく必要がある」
●つまり情報活動の効果をあげるためには、
1、優秀な人材を投入すること
1、待遇を厚くすること
1、絶対に秘密を守ること
この三点に留意しなければならないというのだ。
●『李衛公問対』という兵法書も、この点について、
「およそ諜報・謀略活動はすべて秘密主義に徹し、そのための資金を惜しんではならない。そうあってこそ効果があがるのである」
●と、同じ趣旨のことを語っている。現代の企業の情報活動についても、同じことが言えるかもしれない。
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