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【完走した感想】探偵撲滅_日本一ADVの癖にやる気のある造り(失礼)


 これまでのあらすじ。
 日本一ソフトウェアに対して抱く感情は人それぞれだと思うが、
個人的な印象を言わせてもらうとフルプライスでこんな出来のもん売るな
めちゃくちゃ面白そうなコンセプトをドブに捨てやがって
とか尾籠な言葉がとめどなく出てくる。
 「追放選挙」や「アサツグトリ」など面白そうだが練り込み不足といった出来のものが多く、ガッカリだなぁと思った回数は幾度となく。最悪なのは「夜、灯す」で面白そうな雰囲気だけ出しておいて5時間で終わる同人ゲーみたいなクオリティを7000円で売ってきやがった。しっかり発売直後に店頭で買った身なのでこれぐらい言わせてほしい。

 作品の数は出ているので比較的に自由にゲームを作れる一方、予算と納期は限りがあるのだと思う。結果、市場的にも値崩れが異常に早い作品が多く、自分の中でフルプライスではまず買わないメーカーになっていた。どうせちょっと待てば1000円ちょっとで買えるし。
(一応「 殺人探偵ジャック・ザ・リッパー」みたいな佳作も出してはいる)

 そんな中で出た本作「探偵撲滅」は日本一ソフトなのに値崩れしていないという奇跡の作品。発売から3年経った2024年9月現在でも4000円ほど、同じ年に発売された同メーカーの「アサツグトリ」は1000円台まで落ちている。
(価格の参考はAmazon。一応貼っておく→https://amzn.asia/d/8S2hpKc)

 これはもしかして期待できるのか? と思いつつ購入。ぶっちゃけ値下がりしなかったことでプレイが遅れたがその出来は……。
(※以下ネタバレあり。ミステリー系はネタバレなしだと書けないので)

概要:探偵撲滅

ジャンル:探偵シミュレーションアドベンチャー
発売日:2021/5/27
対応ハード:PS4/Nintendo Switch
価格:7,678円(税込)

この事件は ―― 探偵(ボク)一人では解き明かせない

思想はダンガンロンパに近い。推理部分を別ゲーにしたADV

やってると昔2chにあった「古畑任三郎スパロボ参戦希望スレ」を思い出す

 言ってしまうと、推理パートをSRPGにしたADV。基本的なストーリーはオーソドックスなADVで進行し、事件が発生するとSRPGパートに移行。“謎”を敵に見立て、ユニット(探偵)を移動させMAP内を調査していき、一定ターン以内にすべての謎を撃破すれば推理パートをクリア……という流れになる。

キャラ一覧。年齢感は結構バラバラ

 こうしたゲームの構造上、自己ユニットとしてはすべて探偵となる。登場人物全員探偵というのがそのままシナリオの特徴となっている。
 ポップな絵柄とキャラで牽引しつつ、推理パートに別ジャンルの要素を入れることで推理ADVという敷居の高いジャンルを手に取りやすくした、という意味でダンガンロンパと近い思想がある。というか多分参考タイトル。

感想:日本一の癖に面白い(失礼)。ただしぬぐえないB級感

 まずシナリオ的には面白かった
 何と言っても、キャラに愛着が持てるゲームだった。全体的にキャラ立てが丁寧で好感が持てる造りのため、それだけでゲームを進める動機になる。このゲームにありがちな推しが目立つと死にそうでヒヤヒヤするという経験もできた。
 これはゲームパートとシナリオパートがきちんと意味ある形で接続しているものも大きい。初期14人とキャラクター数が非常に多いが、多キャラを動かすことに向いているSRPGパートを挟むことで、序盤からキャラを覚えやすい。シナリオ上ではそこまで出番がなくとも、ゲームパートで固有コマンドを使ったり、操作不能NPC(いわゆる経験値泥棒的な奴)としてゲーム上の障害になったり、ゲーム体験がシナリオに繋がっているのはかなり好印象だった。

ゲーム上の性能差があるため、この手のキャラ物にありがちな「設定を言ってるだけ」感が薄い

 面白そうなコンセプトをきちんとゲームに落とし込んでいる、という意味でPS4以降の日本一ソフトのゲームとしてはかなり成功作。ボリュームもオーソドックスなADV以上はあったと思う。フルプライス7000円はそれでも高くないかと思わなくもない、この手のキャラ物推理ADVが好きなら買って損はないと思う。今なら4000円ぐらいだし。
 とはいえ別に予算が増えているわけでもないのか、全体的にチープな雰囲気は拭えない。本筋以外のコンテンツ量が少なく、ダンガンロンパを期待してると色々とスカスカなので、過度な期待はしない方が良いかもしれない。気に入ったキャラと仲を深める寄り道とかほしかったなと思う。まぁこれは本筋以外の部分が少ないので逆にシンプルでやりやすいと無理やり好意的に解釈しておく。
 総じてキャラは非常に良かったが、シナリオ的にもあっさりだったのは正直好みでなかった。

キャラが良い。終始楽しい。しかし衝撃は薄い

あらすじ

100人以上の死者を出し、国中を混乱に陥れた連続殺人鬼『八ツ裂き公』。その凶行を止めるため、優秀な探偵のみで構成された組織『探偵同盟』は、選りすぐりのメンバーによる合同捜査を決断した。
謎の男『老師探偵』に導かれ、何故か捜査に参加することになった平凡な青年『北條和都』は、憧れの探偵たちと行動を共にする中で、重大な事実を知ってしまう。
自分たち14人の探偵の中に――『八ツ裂き公』が潜んでいるという事実を。
(引用元:https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000037661/)

探偵だけのクローズドサークル。徐々に殺されていく探偵たち

清涼院流水大先生のイズムを感じる

  犯罪が増え探偵ブームが巻き起こり、特定分野に強い探偵(文学探偵や科学探偵といった形で形容される)による結社が生まれ、探偵たちは稀代の連続殺人鬼『八ツ裂き公』に立ち向かっていた。その調査の最中、絶海の孤島にて集まった探偵たちの中に連続殺人鬼がいることがわかり――
 という外連味たっぷりの設定。人によって思い出すものは様々だと思うが、個人的には清涼院流水先生の「コズミック」「ジョーカー」あたりを思い出した。全員が何かしら尖った分野を持つ探偵たちであり、彼らの中に潜む連続殺人鬼を見つけることがゲームの最終目的となる。プレイヤーも助手も犯人も全員が探偵である。
 リアル調の推理ADVではなくアニメチックな雰囲気で進行。推理トリックとしては良くも悪くも古典(物理トリック多め)といったところ。

キャラ物としては白眉。推しキャラを見つけやすい丁寧さ

圧倒的推し

 上述したシステム面での長所があるため、キャラに愛着を持ちやすく、シナリオもキャラクター周りは丁寧に展開されている。
 個人的推しは華族探偵。ちょっと年上で主人公に塩対応というめちゃくちゃ死にそうなキャラだったが、ヒロインっぽい立ち位置のキャラがどんどん消えていき、気づいたら一番ヒロインみたいになっていたというとても味のあるキャラだった。
 最初は目立つたびに死ぬんじゃないかとドキドキしていたが、主人公と共に多くの事件を乗り越えたことで信頼関係を結び、後半の強敵との決戦も何故か華族探偵と二人で挑むことになるなど、もしかして……お前、ヒロインなのか? と後半は別の意味でドキドキしていた。文学ちゃんはわかりやすくヒロインだったけど、対となるのは本当にお前でいいのか!? 最終決戦でのキメなど、もうお前がパッケージを飾れ。

 他にも社畜探偵&外道探偵の男コンビの因縁など、キャラが膨らんできた中盤~後半はイベント目白押しで楽しかった。

ただし結末だけがあっさりなのだけいただけない

 最後にして最大の問題点。それはオチ。
 一言で伝えるなら普通
 順当に犯人がいて、それをフェアな状況で推理する。そして犯人との闘いで物語は完結する。うん、何もおかしくない。それが寂しい。
 ここは正直好みだと思う。
 だがメフィスト賞で育ってきた身としてはもっと意味不明な超展開が欲しい。先に挙げた「コズミック」はオチがしょうもなさすぎて逆に衝撃的だったし、「ダンガンロンパ」は毎回結末でとんでもないちゃぶ台返しが待っている(もっとも荒れたV3のオチが最高に好きである)。それに比べると本作のオチで怒る人はいないだろうが、だからこそ言いたい。もっと意味不明なオチを見せてくれ
 ミステリーとはとにかく驚かせてナンボだと思っているし、その点でいうと本作の結末はかなりあっさりしている。キャラ物ミステリについては整合性以上に瞬間最大風速的な驚きを求めているので、もう一味欲しかった。

意図的に触れていなかったがメインヒロインの理想探偵。いいキャラではある

 そうした驚きの部分はメインヒロインだろう理想探偵のネタに振ってるのはわかる。わかるが、しかしちょっと驚きが弱かった。蘇る記憶と別離の物語としては少しパンチに欠けていたので、もう一オチあると良かった。

まとめ 傑作は言い過ぎだが、良い作品だったと気分良くクリアできる

 日本一ソフトのADVの最大値を見せてくれた作品。おそらく他と比べて予算が増えているとかではなく、単純にシステムとシナリオがきっちりと嚙み合っており、無駄なくリソースを使った印象だった。
 もう少し派手な展開があった方が好みではあったが、逆に言うとこれで不快な思いをする人もいないだろうと断言できる丁寧な作品だった。このゲームに100点上げる人は少ないだろうが、70-80点は取れるだろう。
 個人的にはとにかく華族探偵が刺さったのでそれでお釣りがくる。売り上げがどれくらいは把握していないが、できれば何かしら追加で展開してほしいと思える。それぐらいにはキャラが気に入った作品だった。

探偵撲滅 完。

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