抜歯した話

抜歯をした。6月5日のことである。
虫歯でもなく、事故でもない。
下顎の親知らず。
上顎に親知らずは生き残っていない。

そもそも論なのだが、私は親知らずを2年ほど放置していた。これには訳がある。私が通っていた大学には有難いことに歯学部があった。
それを知っていて、かかりつけの歯科医には紹介状を書いてもらった。しかし、その時は既に四年生。授業も入っていないこと、いい加減な性格が災いし、卒業までに行かなかった。そうなると、大学に行く理由がなくなり、親知らずを放置したのだ。

軽い気持ちで放置していた親知らずが前の歯を押し、歯並びが悪くなったことに怯え、新たに紹介状を書いてもらった。悲しいことに、私の下の親知らず2本は※水平埋伏智歯で口腔外科でなければ無理だった。

※水平埋伏智歯とは
完全に横向きで生えてくる親知らずのこと。
許されざる存在のこと。

ちなみに親知らずは智歯であり、英語でwisdom toothというが納得がいかない。何がwisdom(智恵)である。ちゃんと理由があるので、読んで少し落ち着いた。昔と違い、親知らずは親が知っているので、なんだか不思議な呼び名だと思う。VHSが主流でない今、巻き戻しとは言わないのと似ていて非なるやつ。

話は戻るが、とにかく親知らずを抜くのが嫌だった。下の親知らずは顎の骨が影響しやすいし、そもそも歯茎を切開するだけで情緒がバグりそうだった。さらに「骨を削ります」という口腔外科医の言葉で完全に感情がめちゃくちゃになった。「ウワーーッ」以外の感情を失ったのである。なぜ横向きに親知らずが生えるのか、アマゾンへ飛ぶわけにもいかず、諦めて6月5日を迎えた。

前日からTwitterのフォロワーから応援され、体験談を聞き、呟き続け、何とか正気を保って処置室に入った。※抜歯応援上映をしてもらえて幸せだと思えた。

※抜歯応援上映とは
抜歯に怯えるフォロワーのためにキンブレを用意して応援してくれること。キンブレとはペンライトの一種。

実は伝達麻酔をする前に表面麻酔があるかと思ったら、なかった。はっきり言ってこの麻酔が1番痛かった。骨に刺さってるのか?という疑問と暴れる脚を何とか抑えて頑張った。どうして表面麻酔してくれなかったんや。伝えれば良かった。後悔先に立たず、抜歯が始まった。

上を抜いたことがあるので抜歯経験はあったが、歯茎を切られたのは初である。顎の骨が削れる音と、工具がやばい音を立てている時、私の口の中は工場だった。家の近所が工場なので聞き覚えがある。間違いない。
あとは歯を破壊される音と、ピンセットで顎の骨から引き抜かれる感覚。根っこが全然抜けずに5分くらい削られたり、ピンセットを口に突っ込まれた。素直に抜けてくれず、はよしてくれという感情でいっぱいだった。無事抜けたあとは縫合されて終わり、ガーゼを噛み続けた。

とにかく抜歯前も抜歯後もフォロワーの応援に助けられ、1人なら情緒が終わっていたかもしれんなという感情で溢れた。
抜歯から1日経ったけど顎が腫れてるし、痛み止めと抗生剤で正気を保っている。辛いものと濃い味付けが好きな私は、早く辛いものが食べたくて仕方ない。口が開かないのも更につらい。

ここまで日記を読んでくれてありがとう。
親知らずが真っ直ぐに生えてなかったら、悪さをしないうちに抜くべきだよ。横向きで痛くなくても、歯並びとか歯周病とか虫歯になるから気をつけよう。

下の画像は歯が入ってるケース。
母親からめちゃくちゃ可愛いねと言われた。

アボカド食べたら口開かなくておかしくなるかと思った。読んでくれてありがとうございました。

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