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推しと卒業

ファンと推しって微妙にニュアンスが違うような気がするんですが、どうなんでしょうか。
なんか戦争が起きそうなので触れないことにしておきます。

はじめまして僕です。
大まかに括るとダメ人間です。

のっけからタイトル詐欺で恐縮ですが、僕の推しさん(便宜上)が卒業するわけではありません。今のところ。

昨年後半は、人生初めてアイドルを推すという偉業を達成しまして。
同居人ともども初めての経験なので、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと様々な会場に足を運んでおりました。

対バン形式というのもさっぱり知らず、お目当ての点染テンセイ少女。を観に行くと、他のアイドルグループも観ることが出来るお得仕様。
数十回通った結論として出てきたのは、
「やっぱりアイドルグループに興味が無い(失礼)が、所属事務所はどうやら面白い」
でした。

特に、点染テンセイ少女(テンテン)。と同じレベルで楽しめたのが、同事務所の戦国アニマル極楽浄土(戦極)。
和POPが大好物なのと、ビブラート至上主義なので、リーダーの窮鼠百合ちゃんの歌声が非常に心地よい。
youtubeでの企画配信なんかも過去にやっており、メンバー脱退ドッキリで、号泣するリーダーを「いい子だなぁ」なんて見ていたりしたわけです。

「戦極をフックにすれば、同居人をライブに連れ出しやすくなるかなぁ」なんて下衆な気持ちではめ込もうとするもイマイチな反応。



ちょっと話は逸れて僕の苦労話。
テンテンにハマって、ライブに行きたい僕にとって、同居人をハメるのは必須業務だった。
極力慣れていない場所に一人では行きたくない上に、飽きっぽい同居人が行きたがらなくなり、週末他のヲタ活をしたがっても困る。
押し付けられるとイヤがる性格なので、自主的に行きたいと言わせなければならない。
タイミングを見計らって話題を出し、
「貴女が行きたいならチケット取っておく?」
ぐらいの、若干の仕方ない感を出してゆっくりゆっくりとはめ込む。
実際、錦糸町のリリイベは失敗して観に行けなかった。
現在は安定期に入って、僕も(ある程度は)自分で行きたいと言えるし、お互い納得してヲタ活を続けてはおりますが。


話は戻って、いまいちハマってもらえなかった戦極だが、いまいちなりに、フライヤーもらって黄色い子にフラフラしたり、同郷だからと赤い子にフラフラする同居人。
基本ちょろ子なので、だんだんとボルテージが上がってくる。
どうやら、複数の推しグループを作ることに「倫理的に問題があるのではないか」と悩んでいた模様。
同じことは僕も考えてはいたが、僕よりブレーキが存在しない分心配は強かった様子。

2か月ほどフラフラした後、クリスマス公演の特典の囲みチェキと写メ券を目当てに、後ろ髪引かれながら浮気するおっさんのように戦極の百合ちゃんの前に向かう同居人。ついでに僕も初めての浮気。
受付で「お目当ては?」に対して「戦国アニマル極楽浄土です」と小さな声。心の中で言い訳をいっぱいしながらの鑑賞。
罪滅ぼし半分、特典に興味なし半分(まだ言い訳してる)で、入場特典の写メ券を同居人に譲る。
そして同居人は、中身おっさん同士だったためかはわからないが、一発で百合ちゃんの虜になったようだ。

しばらく正妻とお妾さんの間を行ったり来たりするおっさんのようなしぐさを続ける同居人。
堂々としていていいのか、こそこそしなければいいのかわからないバカ二人。
誰に聞いても「好きにしなよ」としか言われ無さそうだし、推しさんたちに聞くわけにもいかないし、聞いても「いいんだよ」と言われる未来しか見えないし、いいんだよなんて言わせるわけにはいかない。

そんな中、ツイッターで流れた、戦極からの大切なお知らせ。

同居人はワクワクしていたが、新曲や大きいホールでの公演の発表とも思えず、新メンバーという匂いも感じずイヤな予感のする僕。

後日流れてきたお知らせは、戦国アニマル極楽浄土の窮鼠百合と鴻森 月紫の卒業。

声も上げずポロポロと涙を流し続ける同居人。
頭によぎるのは後悔ばかり。
「もっと早く自覚して推せばよかった」
「もっといっぱい通えばよかった」
「もっといっぱい特典会に参加すればよかった」

ヒマがあればベソベソメソメソ。朝起きて泣いて、ご飯食べながら泣いて、あっちで泣いてこっちで泣いて。黙って泣いてたかと思えば「ふぐぅ」なんて情けない声上げて泣いて。チェキチャ行って泣いて、今まで撮った数少ないチェキ眺めて泣いて。

泣き続けて3日後、卒業発表されてから初めて行けるライブ。
入場特典は私物サイン券。
1冊のチェキ用アルバムを抱いて長い列に並ぶ二人。
列に並んでいる同居人を指さし、
「同居人のアルバムです。1枚づつ表裏に書いてもらっていいですか?」
と、白いアルバムを渡す。

これがやっていいことなのか、失礼ではないのか僕にはわからないが、快く引き受けてくれ、陽気に話しながらペンを走らせる。
「同居人が3日間ずっと泣いてます。ずっと泣いてるから僕が泣くヒマがないっす」
「ごめんね。いっぱい慰めて…違うな、優しくしてあげてね」
と、ステージ上では観たことのない、ちょっと困ったような笑顔で答えてくれる百合ちゃん。

結局、二人で1面が埋まったアルバム。
裏面は、もう1枚私物サイン券を手に入れておいでってことらしい。
チャンスあるんかな?なかったらまぁ次のチャンスまで数年寝かせればいいやね。
その後、同居人は納得できるお話が出来たらしく、泣き笑いしながら帰路につくことが出来た。

あれから半月が過ぎたが、まだふとした時に同居人は泣いている。
無理やりなのか、短い期間の思い出が楽しいのか、ニコニコしながら変な顔しながら泣いている。
推し方の気持ちの整理はついたようで、泣きながらも楽しそうに生活をしている。
僕も、変な駆け引きはせず見守っていこうと思う。


推しの卒業。
アイドル業界以外ではなかなか体験できない気がする。
僕の興味のある界隈。物書きだったりアーティストだったりは、引退ではなくフェイドアウトが多い気がするし、息が長い人も多い。
なんとなく最近見ないなと思っているうちに記憶ごと消えて行ったり、思い出したように新作を出したりと、ショックに陥るようなことは少ない。
スポーツ選手の引退が近いようにも思うが、なんとなく納得できるケースが多いので、やっぱり違う。
長いこといたら納得できるようになるのかな?

同居人には申し訳ないが、推しの卒業というものを、近しい人が体験することによって、心情が若干でも見ることが出来て幸いだった。
これで推しさんが卒業ってなっても冷静でいることが出来る。


と思うじゃん?
無理だよね普通に。
想像しただけで号泣しそうになるもん。
むりー!やだー!って同居人より大騒ぎするわ。
なんならお祝い事だって心が激しく揺れ動くので遠くで薄目で見てたいくらいなのに。
みんなこんな恐怖と戦って推してるのすげぇなって思うし、こんなネガティブな推し方してんの自分だけなんかなとも思う。

推しさんに毎日毎日楽しいことをもらってばっかりでなんにも返すことが出来てないからこんな気持ちになるんかな。
でも返し方もわからんし、大きな声援でって言われても困っちゃうし、どうしたらいいんだろうね。

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