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インファント

インファント
(Lyrics:tmrr/Music:Miyuki)

とんでけ、とんでけ
イタいのとんでゆけ
大きく手を伸ばしても、ここには何もない

指をぱちんと鳴らしても部屋は片付いてくれない
ありもしないクラゲの骨いつまでも探してる

隅々まで見渡しても二番煎じなこの心
一辺倒な感情が世界の総意みたいだ

喉の奥のほう小骨が刺さったまんまで
オレンジジュース飲んでも治らない

とんでけ、とんでけ
イタいのとんでゆけ
とっくに気がついてる、ここには何もない

とんでけ、とんでけ
場外までとんでゆけ
ふわりと浮いてみれば何てことはない

何度もカラーリングして傷みきってる髪の毛を
切ってしまうのも惜しくて指先でなだめてる

洗いざらいぶちまけたら伏字だらけのこの心
愛されたいも愛したいもほとんど同じことだ

青空に咲く桜のコントラスト
これ見よがしで気後れしちゃうわ

とんでけ、とんでけ
コワいのとんでゆけ
どこにも見当たらない、正義の味方なんて

とんでけ、とんでけ
渚までとんでゆけ
ビート板捨ててみれば何てことはない

ノイズキャンセリング良好のヘッドフォン
外したら、さあ

とんでけ、とんでけ
イタいのとんでゆけ
とっくに気がついてる、ここには何もない

とんでけ、とんでけ
スタートまでとんでゆけ
ふわりと浮いてみれば何てことはない

3月にアルカフェ店長権を使うことになったので、深雪さんにお声がけしたら、「(前略)30分ぐらいのライブを2人でやるのは可能だろうかと思って。(中略)あと、曲作れますが作りますか?」と返信があった。チームみゆきの曲は名曲が多いし、深雪さんが気分の乗ることがもうないかもしれないとも思って、それはいいですね、と返信した。

そのような会話をしたものの、その後アクションがなかったので、「曲先の認識です!」とジャブうちすると、しばらくしてぽろぽろとメロディが来た。音源をきくと、やっぱり深雪さんならではのパッセージ。いい。
曰く「tmrrさんがいやだったら考えるのですが、べたなポップスです」ときたので、「いや、ベタなポップスやりましょう」と戻した。誤解されているようですが、私はベタなポップスも好きですよ!

さて、この取組に当たり、実はひとつ構想(やりたいこと)があった。KinKi Kids様の名曲「ふらいんぐ・ぴーぷる'99」の曲をオマージュした「ふらいんぐ・ぴーぷる'23」というタイトルを思いついていたのだ。といっても、本家とは違って、どちらかというと「所在なく宙ぶらりんで浮いている」状態を表したかった。
サビメロだけがきた段階で、深雪さんが「曲のイメージが『なんだか未来に希望を持てないけどとにかく動こう』です」とメッセージをくれていて、ますますやりたかったことと合致しているように思えた。

……が。歌詞を書き進めてみてみて思ったこと。「どう考えても、この(歌詞の中の)人、まだ『ふらいんぐ』すらしていない」。どちらかというと、ベッドのうえでずっと構想をめぐらせているだけで、寝っ転がりながらぼんやりと窓を見ているような。所在はたしかにないけれど、身体は地上に接している感じがして、うーん、別のタイトルが必要だなあと感じた。

本番前日に大サビがきた(今までとまったく違うメロがきてたまげた。行きの中央線でよく歌詞を思いついたもんだ、褒めてほしい)ので、そもそも当日の朝まで歌詞が完成しておらず、とりあえずタイトル未定で世に送り出すことになった。
ライブ後、いろんなアイディアをいただいたが、その中で「飛行機関連のワード」がいくつもあり、よいと感じた。調べていくと、「インファント」という言葉にたどり着いた。インファント-infant-は、「乳児」みたいな意味で、飛行機用語としてみると、座席を必要としないパッセンジャーのこと、だそうだ。
青臭いというか、うだうだした内容が、「まだ座席すらもらえてない客」の意味に合いそうだなあ、と思って、このタイトルに決めた。あとは、音の雰囲気がふわふわしているし。

歌詞をながめてみると、こちらも昔からドッグイヤーしていたものがたくさんある。
例えば「クラゲの骨」。これは、

(クラゲには骨がないところから) あるはずのないもの。また、非常に珍しいことのたとえ。

コトバンク「水母の骨(くらげのほね)とは?」

という意味で、どこかで使いたかったワード。それから、「一辺倒な感情が世界の総意みたいだ」という言葉は、高校生の私が「TEENAGER」で使用した歌詞に合わせて書いていたもので、これもどこかで使おうとあたためていた。「愛されたいも愛したいもほとんど同じこと」というのは、「ふらいんぐぴーぷる」の構想を少し残した部分……云々。
ベタなポップスに合わせて、歌詞も割とベタベタに仕上げたつもりなのだけど、ダサすぎやしないかとひやひやしていた(しんぺいさんに歌詞だけお見せして、ダサくないか確認さえした)。この手のものを作るときは、そのせめぎ合いが難しい。

ってなわけで、曲自体もインファントなかんじでございますが、こちらもぜひご贔屓に。

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