「赤いマフラー巻いて」再録

はてなブログの「英語教育の明日はどっちだ!」では、画像・動画以外のファイルが貼れないので、こちらに再録し、最後にスピーチの元原稿をpdfで添付します。pdfを見る分にはフリーですが、内容のコピーや印刷にはパスワードが必要ですので、その際にはお尋ね下さい。以下、ブログ再録です。


2019年12月20日(金)に行われた「文科省前抗議」に参加して、スピーチをしてきました。
させていただいた、という方が適切でしょう。主催の田中真美さんには、10分と言われていたのに終わってみれば15分話していましたから。今回はご厚意に甘えさせていただきました。本当にありがとうございます。

文科省前の「抗議行動」で、クリスマスも近いということもあり、普段の私が最も好んで着る「赤」を着てくることを期待されていた(?)方には、申し訳ありませんでしたが、マフラーのみ赤で参加しました。
12月20日は、母の命日。
思い返せば、初任校で2学期の成績会議前日、成績処理に追われていた時に、兄からの訃報で急遽帰省しました。その、訃報を受けた時に着ていたのが、マックジョージの真っ赤なシェトランドのカーディガンでした。それ以来、12月20日には赤い服を避けることが多いのです。
とはいえ、「怒り」も表さねば、ということで、009でも、ライダーでも、ヤマトでもありませんが、マフラーのみ赤、ということで。

その私のスピーチも含む、抗議行動の動画がYouTubeにアップされています。

※YouTubeで開いて、タイムスタンプを確認していただければ、私のスピーチだけを視ることも可能です。

その私のスピーチの最後に共通テストの「試行調査」の問題に触れました。
「リスニング」の試験での、一回読みと二回読みとの混在問題です。

あくまでも「試行調査」の段階ですから、世論の後押し以上に、専門知による軌道修正が、「よりマシ」な試験の実施につながると思っています。

作問チームも「専門家」であるはずなのに、なぜ、そんなことをここにきて言うのか?
と思う人もいるかもしれません。でも、この「共通テスト」の「試行調査」はもろもろの制約に取り囲まれ、雁字搦めの中行われたといってもよいくらい、課題の多いものだったと私は捉えています。

今のところ、前半は短文と短い対話、後半でやや長い話しやレクチャー、長い対話となるようです。

私の疑義、危惧は、既に「スピーチ」の中で述べています。

ここでは私が「試行調査」のリスニングに言及した部分は繰り返さず、その背景を少し述べておきたいと思います。

試行調査の英語の設問を見るだけではわからないのが、試験全体の枠組みからくる時間の問題です。ひょっとすると、試行調査でも、40分とか50分とか、設問を増やした分どの問題を一回読むか、二回読むか、どういう内容・構成・形式が適切か確認する、という発想があったのかもしれません。

しかし、「国語の記述式が入る」という大前提があり、「プラス20分」分、確実に試験全体の時間が長くなるとすれば、英語のリスニングの時間を延ばす余地は、限りなく小さいものだっただろうと「邪推」します。

ところが、今回、あまりにも遅かったけれども、「記述式の見送り」がなされました。
それに先立って、11月1日には「民間試験導入延期」も発表されています。
今回の「試行調査」の目的である「共通テスト」設計の前提となるものが、二つなくなったわけですから、英語の試験問題の内容、構成、時間配分も振り出しからやり直し、仕切り直しするのが当然でしょう。

「試験時間」ということでは、リスニングの発話速度を変えることでも、読み上げの所要時間は調整可能ですから、どのように話すのか?というのも、リスニング試験を評価する際に考える必要があります。

ただ、その吹き込み者の属性で、

・人か音声合成エンジンか
・英語ネイティブか否か
・英語ネイティブなら英米加豪NZ南ア等のどこ出身か
・老若男女

等に応じた正答率や誤答分布など、試行調査や、そのさらに予備段階のパイロットテストで何らかのデータをとって、吹き込み者を決めたり、速度を調整したりしているのでしょうか?

対話(複数話者)にしろ、モノローグ(単独話者)にしろ、「テクスト」とその「音声化」(裏返せば、「音声」とその「スクリプト」)を分析、比較検討しなければ、1回読みで対応可能な難易度の調整ができているのか?2回読みによって、理解を補正する余地を残すのか、ということに適切、的確な判断はできないでしょう。

「つながり」や「まとまり」というのは、何も「読解」や「ライティング」だけで必要な資質、要因ではありません。

対話であっても、単一話者の「繰り返し」や「言い換え・言い直し」、さらには「撤回」や、ターンテイキングにおける情報の「のり代」「踊り場」、言い換え修正の要求、要約やその確認など、単純に「冗長性」と括れない、「話し言葉」に多く見られる様々な要因が、「つながり」「まとまり」を整備し、または「整備し損ね」た結果、「テクスト」の難易度が規定されます。

私がこの段階でも、「専門知」の結集、反映を求めるのは、「テスト」を見て(聞いて、解いて)みて、私にもわからないこと、首をかしげることが多いからです。

「専門家」からの考察としては、大東文化大学の靜哲人先生のブログで、私のスピーチの「一回読み or 二回読み?」に関連した記事が公開されています。是非お読み下さい。

Kyle's Kingdom
リスニングテストで音源を1回流すか、2回流すか、に関する考察
リスニングテストの音源再生回数の影響とは

こういった「専門知」も踏まえた上で、

「どのような試験内容、構成、読み上げ回数、時間配分と配点がより適切なのか」
を練るための「試行調査」を行い、その分析に基づき、少なくとも、

「これがどの観点からも、デメリット、マイナスが一番少ない妥協点ですよ」
という「予告品としてのテスト」を示してから、実際の「新テスト」の実施につなげて欲しいと切に願います。

より良い英語で、より良い授業
より良いテストで、より良い教育

よろしくお願いします。

本日のBGM: 冬のバラ (かしぶち哲郎)


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