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ドン・カルロス メモ(2)場面整理, 第一幕

2021年11月『ドン・カルロス』公演の上演台本製作の準備として、翻訳しながら場面を整理するためにつけていた実際のメモを公開していきます。
市販で手に入れ易い『ドン・カルロス』の訳書は大正から昭和初期にかけて翻訳・刊行されたものなので、読むのに苦労されている方も多いと思います。この場面整理が少しでも助けになれば幸いです。ネタバレなどが気になる方は観劇後、あるいは読了後にご覧ください。
より雑多なメモも沢山あるのですが、資料からの引用が多い上に引用元を明記し忘れている箇所が多々あるため公開は控えることにしました。

第1幕第1場

◆登場人物
カルロス
ドミンゴ

◆いつ
1568年 4月
2幕5場に言及あり

◆どこで
Aranjuez/アランフェス/アランフエスは保養地
アランフェス離宮の庭
マドリードから自転車で三時間以内(時速15km程度/馬車はその半分くらい)
陽が落ちる前にマドリードへつきたいと言っていることから、昼前であるとわかる。

◆その他
カルロス23歳
エリザベート23歳
エーボリ公女28歳
フェリペ2世41歳
ただし上演台本でのイメージはエリザベート20代後半〜30代前半、
エーボリ30代前半、カルロスはギリギリ20歳くらいか?

◆できごと
ドミンゴとカルロスの会話。

◆わかること
8ヶ月前からカルロスは苦しんでいる。
フェリペの睡眠障害。
エリザベートの心の乱れ。
カルロスを産んだ母親はすぐに亡くなった。
カルロスはエリザベートが娘を産んだことでフェリペの自分への愛が減ったと感じている。
ドミンゴはエリザベートは皆に愛されているという。
カルロスはフェリペがドミンゴをカルロスの偵察に送ったと疑っている。
聖ペテロのイスに座る〜〜=ローマ教皇の推薦のこと。
陽が落ちる前にマドリードへ帰りたいフェリペ。マドリードを王宮の定位置にしたのはフェリペ。それ以前はスペインに決められた王宮はなく、王のいる場所が王宮だった。

◆わからないこと
ドミンゴをカルロスに近づけたのはフェリペ?(後半の王のセリフにドミンゴとロドリーゴを比べたセリフがあったはず)


第1幕第2場

◆登場人物
カルロス
ポーサ侯爵

◆いつ
1場に続く

◆どこで
アランフェス離宮の庭

◆できごと
カルロスとポーサ侯爵ロドリーゴの再会

◆わかること
ロドリーゴはブリュッセルから戻ったばかり。
ロドリーゴはすっかり腑抜けた(恋ほか王宮内でのストレス)カルロスに昔の話を聞かせて政治闘争へ導こうとする。
フランドル地方はアルバ公爵が総督に就任している。
おそらく10代前半の頃(水平の服を着ていた)カルロスはロドリーゴを助けた。
(伯母ボヘミア王妃にボールが当たったのを自分のミスだとしてフェリペから罰を受けた)

カルロスはポーサにかつての婚約者、現在の母親である王妃と会う機会を作ってほしいと願う。
ポーサは承諾する。

◆その他

独wikiではロドリーゴはネーデルラントのAbgeordneter(現代語訳では議員、代理人)になっている。


第1幕第3場

◆登場人物
王妃
エーボリ公女
(モンデカル侯爵夫人)
(オリヴァレス公爵夫人)

◆いつ
2場と同じ頃〜2場のあと

◆どこ
アランフェス離宮の王妃の館前。
(アランフェス宮殿は17世紀に入ってから建造)
田舎の風景。

◆できごと
王妃と側仕えたちが最後の散歩をしている。
エーボリ公女は早くマドリードへ帰りたい。
王妃はフランスを思い出せるアランフェスにいたい。
マドリードではアウト・デ・フェ、異端判決宣告式と火炙りの準備が進んでいる。
王妃はそれを悲しむ。オリヴァレス夫人はそれの何が悪いのかという。
エーボリ公女はゴメス伯爵と結婚をしたくない。
断ってから数ヶ月(カルロスがまだアルカラで学んでいた頃)
王妃が口添えをすると約束する。
ポーサ侯爵が王妃の目通りを願っていると小姓が告げる。
ポーサ侯爵はエリザベートの母親(カトリーヌ・ド・メディシス 1519-1589)の手紙を預かっている。

◆わかること
アウト・デ・フェ異端判決宣告式と火炙りを王妃は恐ろしいと考えている。
オリヴァレスは娯楽として受け入れているように見える。
王妃がクララ王女と会う時間は規則で決められている。
ポーサ侯爵はカスティーリヤ(レコンキスタの中核を担った元王国)の貴族。


第1幕第4場

◆登場人物
王妃
エーボリ公女
(モンデカル侯爵夫人)
ポーサ侯爵

◆いつ
3場のあと

◆どこで
アランフェスの王妃の館

◆できごと
ポーサ侯爵が王妃に謁見する。
ポーサ侯爵が王妃に旅の土産話をするという名目で、「フェルナンドとマチルダ」の悲劇を物語る。フェリペ、カルロス、王妃の関係を想起させる。


◆わかること
ポーサ侯爵と王妃は知らぬ中ではない。
ポーサ侯爵はエリザベートとフェリペの結婚式の槍試合で三度勝利した。
その相手にはエリザベートの父アンリ2世も。
ポーサ侯爵は旅の途中でフランスにも立ち寄った。
王妃の母カトリーヌは病床にある。(史実では既に死亡している, 1589)

◆その他
ポーサ侯爵はネーデルラント→ブリュッセル→フランス→イタリア→スペインと旅した?


第1幕第5場

◆登場人物
王妃
カルロス

◆いつ
4場のあと

◆どこで
アランフェスの王妃の館

◆できごと
ポーサ侯爵の手引きでカルロスが王妃の元にやってくる。
王妃に会いたかったと訴えるカルロス。
王妃はその気持ちを受け入れない。王妃はカルロスにスペインを愛するように促す。
カルロスは王妃の姿勢に感銘を受け、王妃のいうことならばなんでも聞くという。
王妃がカルロスに手紙を渡す。カルロスはその手紙を受け取る。
王妃はフランドルを救うように促す。
ポーサ侯爵が入ってきてカルロスと共に退場。

◆わかること
王妃はカルロスを家族の一人として愛そうと努めている。
王を敬愛し王国を愛すると決めている。
カルロスにとって父王は恋敵。

◆その他
王妃がカルロスに渡した手紙の内容は?誰が誰にいつ書いたもの?
おそらくネーデルラントに関わるもの。
王妃がカルロスに会うということは王にとって不快。


第1幕第6場

◆登場人物

王妃
(アルバ公爵)
(レルマ伯爵)
ドミンゴ

◆いつ
5場の続き

◆どこで
アランフェスの王妃の館

◆できごと
王が側近を連れて王妃に会いに来た。
王は王妃が一人でいることに怒る。
女官長モンデカルに暇を出す。

◆わかること
王妃は王に監視される、過剰に束縛をされることは望んでいない。
この時点で王はカルロスに不安を覚えている。
王にとってカルロスはまだ「第一の者」

◆その他
王はマドリードへ行くため王妃を迎えに来た?


第1幕第7場

◆登場人物
カルロス
ポーサ侯爵

◆いつ
5場のあと

◆どこで
アランフェス離宮の廊下?

◆できごと
カルロスが王妃の手紙を読み、フランドルを救う決意をする。
ポーサ侯爵によって、アルバ侯爵が総督に任命されたことが知らされる。

◆わかること
カルロスはこの時まだ父親と仲直りすることに希望を持っている。
ポーサ侯爵はカルロスにポジティブでいてほしい。野望のためにも、友人としても?


第1幕第8場

◆登場人物
カルロス
ポーサ侯爵
(レルマ伯爵)

◆いつ
7場に続く

◆どこで
アランフェス離宮の廊下?

◆できごと
レルマ伯爵が王のマドリード出立を告げに来る。

◆わかること
カルロスとポーサ侯爵は第三者がいる前では王子と臣下を演じる。
マドリードへは王宮の者たちが揃って向かう。


第1幕第9場

◆登場人物
カルロス
ポーサ侯爵

◆いつ
8場に続く

◆どこで
アランフェス離宮の廊下?

◆できごと
カルロスとポーサが永遠の友情を誓う。

◆わかること
これ以後、カルロスとポーサは二人でいる時の会話がより親密になる。


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