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20歳12日目の私

今朝はやく、母親が洗濯機をまわす音で目が覚めた。早朝5時に起き、娘と息子に轟音の目覚ましをセットして1時間程朝の散歩に出るのが最近の日課になっているらしい。微睡みに轟音を聞きながら、次に目を覚ますとカーテンが空いていた。今日は曇り。春が近づいている。窓を空けていても暖かく感じる。顔を洗い、母が朝作って行った弟の苦手ながんもどきと、弟が混ぜた痕跡のあるジャーの中の白米を、4か月前母と粟津町で作ったご飯茶碗によそい口に入れた。
昨晩地震があったという事を中学の時の知り合いのストーリーで知った。ちなみにその子のいる場所は、震源地福島県からおよそ900kmも離れている。東京に住む彼氏におはよう、とメッセージを送ってみた。何か変わった事はあった?と聞く前に、おはよう、昨日地震があった、僕の住む所は震度4だったよ。揺れる時間が長くて目が回った。と返信があった。
高校1年生の10月、震度6弱の鳥取県中部地震に遭った。音楽の授業が始まる5時間目の直前に起きた物凄い横揺れに、教室の後ろにあるギターや賞状は音を立てて暴れた。窓ガラスも割れた。私の膝に捕まってうずくまる彼女は震えていた。避難した学校の校庭で、先輩や友人が泣いている中、震源地が高校の建つ中部だと知った時、恐怖と共に何故か胸が高まった。普段繰り返す日常ではありえない事が起きている。その特別感に私は震えていた。いつもお調子者の彼でさえ涙目になっている隣で。
音楽室で私にしがみついていた彼女は先月から山口県内で一人暮らしを始めたらしい。大学3年生になるにあたり、退寮したのかもしれない。彼女とは高校の3年間同じクラスで、3年間同じ部活で活動してきた。下校も一緒だし学校以外でも暇があれば遊んだ。ずっと一緒だったと思う。そんな彼女が遠く離れた場所で新しい仲間達と、着実に自分の夢に近づいているのを感じると、嫉妬や不安感では無く、私までワクワクしてくるのが楽しくて仕方がない。その子は2ヶ月と12日後、21歳になる。

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