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音が打ち消し合って消える!?誤った繋ぎ方で音が入らない原因とは 〜なぜあの時、Zoom L-8に音は入らなかったのか?〜

今回は、音が打ち消し合う現象について。

誤った音声ケーブルの配線をすると、音が変になることがあります。例えば、BGMは聞こえても人の声だけ消えていたり…。

実はそれ、音が打ち消し合っているのかもしれません。先日もそんな状況がありました。

音が打ち消し合うとはどういうことなのか、実際に試した様子を交えてご紹介します。


先日の構成

ことの発端は、先日お手伝いをしたライブ配信のこと。貸出ホールを使った講演会で、講師の講演やパネルディスカッションの内容でした。

会場の様子

本番はつつがなく終わりましたが、準備段階ではミキサーにうまく音が入らないトラブルがありました。

音声の流れとしては、登壇者は会場のワイヤレスマイクを使い、その音声を会場の音響設備から受け取る構成でした。

この時、ZOOM L-8に音が入らなかったのです。

簡単な音声の流れ

会場の音響機材から出ていたケーブルは、3.5mmのミニステレオケーブル。

そのままではZoom L-8には繋がらないため、6.3mmのフォン端子に変換してZOOM L-8のコンボジャックに入力をしていました。

変換したケーブルのイメージ

これはなぜ起きたのか?原因を端的に言うと、音声がZoom L-8に「バランス接続」扱いで入っていたからです。

バランス接続になることで、「音が打ち消されて入らない現象」が起きいたと思われます。

このトラブル、初心者あるあるな気がしています。なぜそんなことが起きるのか順番に紹介をしていきますしょう。

バランス接続

まずバランス接続を簡単に言えば、"ノイズの影響を受けにくい音声の入れ方"です。

ポイントは、1つのケーブルに2つの音声信号が流れていること。どちらも同じ音ですが、片方は「位相」が反転した音になっています。

位相が逆の同じ音声をミックスすると、その音は打ち消し合います。そのため、ミキサーでは片方の音の反転した位相を戻してからミックスします。

では、外部から入ったノイズがどうかと言うと、位相はどちらも同じままミキサーに届きます。ですが、ミキサーは片方の音の位相を反転するため、最後はノイズ音だけ位相が反転の関係になるんですね。

位相が逆の同じノイズ音声は打ち消し合う…これがバランス接続がノイズに強い仕組みです。

できるだけ専門的な言葉は使わず、シンプルな説明をしてみましたが、結構難しい話ですよね。

正直なところ私も理解しきれてはおらず、「位相」が何かは説明ができません。更に詳しい原理が気になった方はぜひ調べてみてください😂

<参考>
バランス接続がノイズに強いわけ
https://www.soundhouse.co.jp/contents/staff-blog/index?post=2768

バランス接続(伝送)・平衡接続について
https://ameblo.jp/holycater/entry-12467333622.html

今回音が消えた理由

難しいことはさておき、大事なのは、「位相が逆の同じ音をミックスすると打ち消し合う」ということです。

これはノイズだけでなく、通常の音声でも同じことが起きます。今回Zoom L-8に音が入らなかったのは、まさにこれが原因でした。

通常、マイクからバランス接続で入った音は、自然と片方の位相が反転した状態で送られます。しかし今回、会場の音響機材から送られた音声は、普通のステレオ音声なので位相は反転していません。

ここで大事なことは、ZOOM L-8のコンボジャックは3極のプラグを挿すとバランス接続として扱います。そして、会場機材から届くケーブルは3極のプラグでした。

つまり、会場機材から同じ位相の音声信号が届きますが、その片方はミキサーで位相が反転され、結果的に反転した位相の同じ音をミックスするため、音が打ち消し合あってしまう…ということなんですね。

実際に打ち消される様子

ここまでイメージばかり話してきましたが、「打ち消すってなんやねん!?」と思う方も多いかと思います。

と言うことで、実際に検証してみました。

最初は構成の紹介ですが、02:31から綺麗さっぱり打ち消し合う様子をご覧いただけます。

いかがでしょうか。モノラル音源のテストでは、見事に音が消えていますね。

モノラル音源のテストでは、左右に同じ音が流れるモノラルステレオの音源を使っています。会場の音響機材も同じモノラルステレオの音を出していたはずです。

そもそもハンドマイクはモノラルです。それを左右同じ音で流しただけなので、モノラルステレオ自体は普通なことです。

問題は、その同じ音がバランス接続扱いでミキサーに入り、片方だけ位相を反転されることで、ピッタリ打ち消し合う関係になってしまったことなんですね。

ステレオ音源はボーカルだけ消える?

さて、テストでもう一つ不思議なことがありました。それは04:18からのステレオ音源です。

BGMは残っているのに、ボーカルの声だけが消えたように感じます。なぜこんなことが起きるのでしょうか?

ステレオ音源は、左右に異なる音声を流すことで立体的な音響を作っています。そのため、左右全く同じなモノラルステレオとは違い、ピッタリ打消し合う関係ではないのですね。

ただし、ボーカルの音声だけは、ステレオ音源でもモノラル的に入ることが多いそうです。

中央のど真ん中に音があり、左右に同じ音が入るのですね。ボーカルの音声だけ綺麗に消えていたのはそれが理由です。

とは言えBGM部分も左右で重なる部分はあるので、よく聞くと消えている音もあります。また片方だけ位相が反転しているので、音の雰囲気が変わっている部分もあると思われます。

どうすれば良かったのか

さて、ここまではひたすら「音が打ち消し合う」について説明をしてきました。最後に対策についても触れたいと思います。

まず今回のZOOM L-8だけで言えば、2股のケーブルに分岐させて、アンバランス接続で入れることが正解です。

テストの動画でもお見せしましたが、これならミキサーが位相を反転せずにそのまま扱ってくれます。今回も最後は、そうなるように変換をして解決できました。

ただし、これはあくまでZOOM L-8の場合の正解です。ミキサーによって動作は異なるため、それぞれに合った接続をすることが重要になります。

ミキサーによっては、フォン端子は全てアンバランスとして扱うものもあったりします。また、内部で信号を検知して、いい感じに動作してくれるものもあります。

そのため、ぜひご自身のミキサーがどういった機材なのか、マニュアルやサポートに聞きながら確認をされてみてください。(それがまた簡単ではないと思うのですが…😭

まとめ

いかがだったでしょうか。結構テクニカルな内容なので、付いていけなかった方もいらっしゃると思います。

それはそれで大丈夫で、まずはこういうことが起きるのだと、知ってもらうことが大事だと思います。そうすれば、トラブルが起きた時のヒントにはなれるはずです。

細かい原理は、実際に遭遇して自分で試す中で、少しずつ理解が深まっていくはずです。

ぜひこの記事を読んで「こんなことがあるのか!」と思ってもらえたなら嬉しく思います。

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