RODE Wireless PROを、新機能「タイムコード」を中心に使い勝手を確認してみた
今回試してみたのは、ワイヤレスマイク「RODE Wireless PRO」です。
前世代の「RODE Wireless GO Ⅱ」は大人気の製品で、ライブ配信で見かけることもあります。このコミュニティでも、お持ちの方はおいのではないでしょうか。
今回はその最新世代となる「RODE Wireless PRO」を試してみました。新機能のタイムコードに注目しながら使い勝手を確認したので、その学びを共有します。
RODE Wireless PROとは
近年コンパクトなワイヤレスマイクが人気を博しており、各社から様々な製品が販売されています。その代表的な製品が「RODE Wireless GO Ⅱ」でした。
ワイヤレスマイクの機能はもちろん、本体の32bit float録音機能、USBのマイク出力機能など、コンパクトな筐体に便利な機能が詰まっています。このコミュニティでもお持ちの方は多いのではないでしょうか。
今回試したのは、その次世代機種となる「RODE Wireless PRO」です。
Wireless PROは使い勝手や便利な機能はそのままに、新たな機能追加や同梱品の追加で魅力的な商品になっています。
特に大きな機能追加はタイムコード機能の追加です。これは動画撮影・編集に携わる方にとっては、撮影・編集の効率向上に繋がる可能性がある機能だと思います。
私自身、今はこの手の製品を持っておらず、Wireless GO Ⅱも使った経験は数回程度です。またタイムコード機能が気になることもありレンタルしてみたので、その使い勝手や第一印象を紹介します。
同梱品が強化されている
届いてまず最初に気づいたのは専用ケースの存在でした。Wireless PROには送信機と受信機を収納できるケースが同梱しています。
Wireless GO Ⅱにも専用ケースはありますが、別売で充電機能のみです。Wireless PROのケースはデータ転送にも対応しており、専用ソフトはもちろん外部ボリューム扱いとしても操作が可能です。
ただ、他製品に比べてケースは少し不便です。USB端子に挿す必要があり、最近多い磁石でカチッと引っ張られるタイプでないのは面倒でした。とは言え、Wireless GO Ⅱに比べて大きく便利になったポイントだと思いました。
他にもWireless GO Ⅱでは別売りだった物の多くが標準同梱されています。ラベリアピンマイク、磁石クリップといった、他製品だと当たり前になった物があるのは嬉しいところです。
Wireless GO ⅡとWireless PROの価格差は大体22,000円ほど。追加の同梱品だけで差額は超えているので、そう思うとWireless PROはお買い得なようにも感じました。
ヘッドセット音声が録音できるように
細かいのですが、Wireless PROで新たに加わった機能として、ヘッドセットのマイク入力にも対応しました。
受信機にはヘッドフォン端子がありますが、これがヘッドセットのマイク入力もできるTRRS端子に強化されています。
ただ、ヘッドセットのマイク音声は本体だけで録音ができません。録音するにはUSB端子で出力して、PCなどで録音する必要があります。
正直なところ、自分はこの機能が活躍するシーンが思いついていません。むしろ他の機能にも影響して、設定が複雑になっている印象でした。(詳しくは後述)
ヘッドセットマイク入力の活用シーンが思い付く方は、ぜひコメントいただければ嬉しいです!
タイムコード機能
ここから一番興味のあったタイムコードのお話です。前モデルのWireless GO Ⅱと比べて、Wireless PRO最大の魅力はタイムコード機能の搭載だと思います。
タイムコードは録画映像・音声に加える時間情報です。タイムコード情報が各素材ファイルにあると、編集の時に正確なタイミングの同期ができます。
動画編集ソフトには音声で同期する機能もあり、よく手を叩いて同期タイミングを作ったりもします。あれだとカメラやマイクが増えると上手くいかないこともありますが、タイムコードはより確実に同期ができます。
とは言え、今度は各素材にタイムコードを加える手間も出てきます。Wireless PROを使うと、どのような運用になるかが気になり試してみました。
タイムコード機能の設定
Wireless PROはタイムコードを生成する側として動作します。そのタイムコードを他の録画・録音機材が受け取り、後で同期ができるようになります。
残念ながら、他の機材からタイムコードを受け取る機能は現状無いようです。
Wireless PROのマイク録音データについては、自動でタイムコード情報が追加されるので気にする必要はありません。
ポイントになるのは他機材への送り方です。受信機のミニジャック端子・USB端子の両方から出力ができます。
どのように出力するかは、5種類のパターンから切り替えが可能です。
5種類もあるのは、先に紹介したヘッドセット入力への対応です。④と⑤はそのためのパターンになります。
①はタイムコード対応の機材用です。追加情報としてタイムコードが録画・録音ファイルに保存されます。
②はタイムコード未対応の機材用です。ステレオ音声の片方にマイク音声、もう片方にタイムコードの音声を録ることで、後編集で両方を使うことができます。
③はUSBだけ②と同じで、ミニジャックにはタイムコード含まずマイク音声だけが出力されます。USBで後編集用に録音しつつ、ミニジャックで確認や配信用に使うことになると思います。
実際に撮影してみた(タイムコード対応機材の場合)
タイムコード同期に対応した機材として「SONY FX3」を持っています。
FX3はUSBのアダプター経由で入力することで、タイムコード情報が音声とは別に付加することができます。
Wireless PROを対応機材用のモードにして接続してみると、バッチリ同期がされました。
この時、Wireless PROを外してもタイムコードの同期が取れているように見えます。そのため、他のカメラにも順番に接続すれば、複数のカメラで同期を取ることが可能です。
この方法をジャムシンク方式と言うそうですが、デメリットは、時間が経つに連れて同期のズレが起き始めます。マニュアルでは4時間ごと、またはカメラの電源を入れるたびにジャムシンクを行うことが推奨されていました。
では、Wireless PROを使い複数カメラのタイムコードを同期し続けるにはどうすれば良いのか、これは残念ながらまだ分かりませんでした。引き続き勉強してみたいと思います。
実際に撮影してみた(タイムコード未対応機材の場合)
タイムコードに対応していない機材の場合はどうでしょうか。今回はiPhoneのカメラ映像とタイムコードで同期してみました。
Wireless ProはUSB接続すると外部マイクとして認識されます。これはスマホにも対応していて、iPhoneの標準カメラだと自動的に切り替わりました。
Wireless PROをタイムコード未対応のモードにすれば、ステレオのLはマイク音声、Rはタイムコードの音声となり、iPhoneでも録画することができました。
あとはどちらの場合も、映像データ・Wireless PROの録音データを動画編集ソフトに入れれば、タイムコード同期をすることができます。
実は当初、タイムコードに対応したカメラでないと同期ができないと勘違いしていました。ですが、ステレオ音声の片方だけを使うことで、うまく同期ができることを知れたのは学びでした。
機能が多いが、複雑になっている
色々書いてきましたが、今回実際に使っての率直な感想は「あれ、結構難しいぞ」というものでした。
この手のワイヤレスマイク製品は色々ありますが、あまり複雑ではない印象がありました。しかし、Wireless PROはしっかりと理解して使う必要がありそうです。
やはりヘッドセット音声とタイムコードが加わり、設定が複雑になっています。タイムコードを使わない場合も、ヘッドセットで音声系統の種類が増えているので注意が必要です。
また設定にはPC・スマホの専用アプリを開く機会も多く、事前の準備が大事だと思いました。本体は小さくてもやはりプロの名が付いた機材です。
複雑な部分は使わなければ良いとも言えるのですが、それならば同じ32bit floatで録音ができる他機材でも良い気もします。
例えば「DJI Mic」の方が価格も安く、ケースにも磁石で収納できて使い勝手も良いと思います。以前にも試したことはありますが、また最新のファームフェアで触ってみたいと思いました。
あとは、最近RODEは自社製品間の連携を強化しています。
例えばWireless PROは「RODECaster Pro II」というミキサー製品と連動し、ワイヤレスのまま直接音声を送ることが可能です。
先日メンバーの方にご協力いただいて試す機会もありましたが、気軽に連携して使えるのはとても便利でした。こういったRODEエコシステムと関わりの深い方は、Wireless PROが便利そうですね。
私自身はと言えば、試してみたものの私の撮影程度だと、タイムコードの運用は逆に手間がかかる印象でした。
タイムコード機能がいらないのであれば、先にも挙げたDJI Micは再び気になっているところです。新機種の話もあるため、注目してみたいなと思いました。
また、今回は音質には敢えて触れていません。単体で聞いた限りは普通な音には感じつつ、また比較もしてみたいです。
また、この記事を書くに当たり、機材レンタルをパンダスタジオさんに支援いただいております。
1日5,390円でレンタルできますので、イベントでお使いなどの際は利用されてみてはいかがでしょうか。
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