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たかや日記57 「覚悟」

【8月3日(土)~8月8日(木)】

ぴゃおっつ。



【8月9日(金)】

母からのLINE

朝。母から「おばあちゃんがもう永くないかも」と連絡が届く。

祖母は去年からほぼ寝たきりの状態が続いている。
いまは僕の実家で父母が祖母の介護をしている。


バスの車窓

そんなわけで急きょ、帰省。
新宿から地元まで、バスで片道4時間。

去年、老猫の様子を見るために何度も帰省した。
そのときにも思ったけど、
もし、この4時間の間で亡くなられたら…と考えたらすごくやるせない。

自分はまだ身内を亡くした経験が無いから、そういったことに慣れてないのもあるけど……。


祖父(右)と祖母(左)。数年前に撮影したとき


祖母は、自分の記事にも何度か登場してくれた。

もちろんそれ以外にも、祖母との思い出は数え切れないほどある。

母から電話で、祖母との意思疎通はもうかなり困難なことも聞いてる。

それでも、まだ頑張ってくれている内に、顔を見たいし、挨拶がしたいし…。孫としてできることはしてあげたい。


実家に到着すると、母が「ジャジャーン。買っちゃいま〜した〜」と言いながら出迎えてくれた。
数か月前に販売した、僕がヴィレッジヴァンガードとコラボさせてもらったときのTシャツを着ている。


おい。

シリアスパートじゃないんか。いま。


「一着も売れなかったら可哀想だと思って」で、僕に内緒で買ってくれてたらしく、僕が次に帰省したときに教えたくてずっとウズウズしていたそうだ。

買ってくれたのはありがとう。
だとしても今じゃないだろ。


そりゃまぁ、ちょうど僕が帰ってきたタイミングで祖母は昼寝に入ったみたいだし、わざわざ起こすのもアレだけどさ……。


ただまぁ、これも、慌てて帰ってきた僕に対しての、母なりの気遣いなんだと思う。


祖母の介護を続けてきたのは父と母だ。
僕なんかよりも祖母の容体はよっぽど分かっている。


その母がこんなテンションなのは、遠回しに「まぁ、そんな深刻になるもんじゃない」と僕に伝えているのだろう。

両親はとっくに覚悟を決めている。


ありがとう、母さん。おかげで俺もちょっと落ち着いたよ。

さっきはあんなこと言ったけど、Tシャツも買ってくれてありがとう!

コラボグッズ、引くほど売れなくてヴィレヴァンの担当者にも苦笑されたけど、それでも買ってくれた人がいたのは嬉しいよ!


え? いや、いいよ…。

そもそも販売期間、もう終わってるし…。


テメーがやりたいだけかい。


言われるがまま、庭でモデル撮影会。


母「Tシャツに『熱い』って書いてあるから、“今日は暑い(=扇子)”で表現してみた」


????????????????????????

なんだこのババア。

さっき「両親はとっくに覚悟を決めている。」って書いたけど、母は違う意味でキマッてるのかもしれない。




夕方、祖母が目を覚ました。

と言っても、目が開いているだけで、ベッドに寝たままの状態。

腕も足も、もう骨と皮しかない。人間の体ってここまで細くなるものなのか…。

それでも、手を握ると弱弱しくも握り返してくれた。
自分が声をかけると、「あぁ…」と反応してくれた。

祖母が再び眠りにつくまで、手を握ったり、声をかけたりした。

おばあちゃん、頑張ってるんだなぁ…。ありがとうねぇ…。



【8月10日(土)】

朝6時。

いつもと比べて祖母の息が荒く、熱も高かったため(脱水症状も起こしてたらしい)、
救急車を呼んだ。



実家の庭に救急車が来るのを初めて見た。

救急車の車内に祖母が運ばれていく様子は、ドラマの1シーンのようで、正直、どこか現実味が無かった。


父も母も、だいぶ前から救急車を呼ぶ段階になったときのことを考えていたようで、とくに慌てることもなくテキパキと進めていった。
それに比べて、僕はかなり動揺していたと思う。情けない。




父は祖母に連れ添う形で、救急車に同乗。僕と母は自宅の車であとから病院に向かった。


病院の検査室で、祖母が容体を検査してもらってる間に、祖父や親戚の方々と合流。


祖母の検査終了後、病院の先生の話をみんなで聞いた。

「点滴を施したので、しばらくは大丈夫だと思います」
「それでも、もう年齢的に、いつそうなってもおかしくないです。覚悟はしておいてください」

とのこと。


それを聞いて、父も母も、親戚の人たちも、そして祖父も、「まぁ、そうですよね」と、悲観にくれるわけでもなく、落ち着いた様子で受け止めていた。


病院の待合室

先生の話を聞いた後、祖母は病棟に運ばれていった。
祖母はここからしばらくの間、入院することになる。

父と母、親戚の人たちは、入院の手続きのために、一緒に病棟へ行った。

僕と祖父は待合室で待機。


ここ最近は祖父と祖母はいつも一緒にいたので、祖父と2人きりになるのはかなり久しぶりだ。

祖父は

「まぁ、とりあえずこれで一安心だなぁ」
「でも、ばあさんももうすぐ90歳だもんでなぁ」

とポツリポツリと言っていた。



やはり、この段階に来たら、みんなある程度の覚悟は決まっている。

そんな様子を見ていたら、いい加減、僕も覚悟を決めねば…と思わされた。


自宅

自宅に帰ったら、母に「数年前に買った礼服、まだ着れるか、一応試しといてなぁ」と言われた。


祖母はまだ亡くなってない段階だから、傍から見ればこういうのは失礼なことなのかもしれない。

それでも、我が家はもう覚悟をしなければいけない段階に来ている。


ならば、近い未来、その場面が訪れた時、毅然とした態度で迎えてあげたい。

いまのうちに、礼服がまだ着れるか試しておくのも必要なことだ。



つっても、数年前に買った礼服だ。
いくらなんでも、まだ余裕で着れるっしょ。

………………。


この数年で、僕もすっかり太ってしまった。


数年前に買った礼服が、ちょっとパツパツで苦しく感じてしまうほどには。


ヤバいかも…。

このままじゃ、葬儀のとき、うっかり屈んだ瞬間に、お尻がビリっと破けてしまうかもしれない。

お尻がビリっと破けて、パンティーが「こんにちは」してしまうかもしれない。

このままじゃ、セクシー葬儀になってしまう。
 

………。


なので、僕はこのあと、炎天下を歩いた。何時間も。

そう、痩せるために。

痩せて、礼服を余裕で着れるために。



いつか訪れるその瞬間までに、あと3~5キロは落としておきたい。
いや、落とさねば。


これが……僕の…覚悟だ。



【888月888日(裏裏裏)】

「すみません、今週とくに書くことがないので、モデルになった母の写真を数枚載せるだけで許してください」

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