その日、長女が一時保護された。その2

110番をしたあと

わたしと次女は、警察のひとがくるのをマンションの前で待っていた。ねーね。暴れてないといいね。そうだね。パトカー何色かな?自転車かな?そんな話をした。次女は空気を読む。私の顔色を見て、そんな話をしてくれたんだと思う。

そしてチャリンコでお巡りさんが2人きた

家に入るのが怖い
長女の様子を一緒に見てほしい

わたしはおまわりさんに言った。お巡りさんはとても親切だった。これまでの経緯、すでに児相の担当者がいること、夕方も暴れて児相の人が来ていることを伝えた。

満を辞して家に入ると、お風呂に入った長女がいた。特に家は荒れておらず、むしろ片付いていた。寝る準備をして、私のことを待っていた。おそらく謝ろうと思っていたのでは、と後になって気づいた。

しかし私は、長女を信用できなかった。
警察を連れて、家に帰ってしまった。

そのあとは私と長女は別々に聴取が始まり、わたしは家の中を片付けながらお巡りさんと話をしていた。

おかあさん、署まできてくれるかな
お子さんも連れていくから

しばらくしておまわりさんはそう言った。おや。これまでの通報と様子が違う。前は生活安全課の人がうちに来てくれたのに。わたしは慌てて次女にでかけるからシャワーしてきな!と言った。ただならぬ様子を感じた聡い次女は、すぐにシャワーをしてきた。しかしわたしは、現実感なくぼーっとしていた。引き摺り回されて、全身なんか痛かったのもある。

そうしてパトカーが2台来て、1台には長女、もう1台には次女と私を乗せて、最寄りの警察署へと向かった。家の前でパトカーに乗り込む長女の顔を見たのが、保護前に彼女を見た最後だった。どんな顔をしていたのか、いまも思い出せない。

そして署についた

パトカーに初めて乗った次女はとんでもなくテンションが高かった。たいほされたの?たいほされなくてもパトカーのれるの?すごくない?そうだねえ、と生返事を返した。お巡りさんもそうだったかもしれない。

警察署に通され、身辺調査のあと、刑事さんがやってきた。
事情をもう一度説明する。
わたしはうつ病である
長女はASD
トラブルになり暴力を振るわれた
原因は宿題をやるかやらないか
詳しい話をうんうん、と聞いた後、刑事さんは言った

おかあさん、お姉ちゃん(長女)ね、帰れないよ。児相に送るからね。一時保護。

は?
え?

この時まで、わたしは長女も多少のお説教をくらって家に帰れるものだと、思っていた。

お母さん、死んじゃうよ

そんなつもりで110番したんじゃないです
一緒に帰ります、娘に会わせてください

そう言ったと思う。泣いていたと思う。ショックだった。お風呂に入っていた。寝る準備をしていた。謝るつもりだった。彼女の話をひとつも聞かず、ただ保身のために110番したばかりに、長女は一時保護されるのか。納得いかなかった。

お母さん。娘さんは暴力の頻度も上がってるし
内容も悪化してるし、このまま家に返すわけにいかない。
このままだと、娘さんまたやるよ。酷くなる。
そしたらどうなると思う?
お母さんが殺されるか、うつが悪化して、死んじゃうよ。
14歳なら、今日のお母さんの怪我で逮捕だよ
これ以上ひどくなる前に、私たちはやらなければいけないことをやる
それが児童相談所への通告、一時保護だよ

泣きながら話を聞いた
会えないのか。もう。
通報しなかったら良かった。
私が耐えれば良かった

そのあとのことは、よく覚えてない。

長女はまだ、一時保護されたままです。


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